シロとクロの間でダイブ
沖に投げたパンダが動物園にいた。
クロールで岸にたどり着き、履歴書持参で採用されたらしい。
檻の必要性を感じているみたいだ。彼曰く、「これがあるから僕はパンダになれるんだ。」
特に何かしらのエピソードが僕とパンダの間にあった訳ではない。同じ街に暮らしていただけだ。ふとした会話から沖で釣りをしようという事になった。その時に何かしらの諍いがあったのだがお互い特に理由は覚えていない。大した事ではなかったはずだ。
底辺の仕事でもそれはそれで楽しそうだ。パンダらしさを求めている人々の期待に応えるのが楽しいらしい。「所詮パンダだ」そう呼ばれる事が一番嬉しいと彼は言う。同情が一番堪える、とも彼は言う。
「体は洗ってるのか。少し臭うぞ。」と僕が言う。「嬉しいね。」と彼が笑った。
数ヶ月後、彼は死んだ。園長から彼が書いた手紙を貰った。
「既読スルーしてごめん。」
あぁ、そうだった。
夏はすぐそこ