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転生したら絶滅寸前の希少種族でした。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
第七章 〜十五歳のわたし〜

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十五歳のわたし第8話



 カレーのレシピをメモし終えたら、ちょうどナコナがお風呂から上がってきた。

 わたしのオリジナルレシピ本も二冊目に突入。

 ……ま、まあ、研究用のメモ帳は五十冊を超えているけれど……。

 ここにあるのは特別な、わたしだけのレシピ本。

 料理の本と、薬の本だ。


「ふぃ〜、やっぱ熱石で入る湯船はサイコーだねー」

「もう、ナコナったらまたそんな格好で……。リスさんが突然訪ねてきたらどうするの?」

「はあ? リス? 来ないんじゃない?」


 ナコナったら、タンクトップとショートパンツで頭をガシガシ拭きながら出てきたのよ。

 相変わらず変なところに無頓着というか……。

 というか改めて見ると小顔で可愛いわよね、ナコナって。

 濡れたピンクの髪は鮮やかさが増して、頰も赤みが差していつもより色っぽいのだけれど……。

 なんか、残念。


「それで? なにか相談したいことがあるから『一緒に寝よう』って言ってきたんじゃないの?」

「う、うん……」


 本を閉じて、紐を巻いて結ぶ。

 鍵付きの引き出しに入れてから、ベッドに移動してナコナが横たわった隣に座る。


「……そうなんだけど、なんか……ちょっとよくわからなくて……」

「なにそれ」

「よく、わかんないのー」


 えーい。

 と、横たわったナコナの上にダイブする。

 ナコナはわたしのことなんて平気で避けるし、むしろ簡単にマウントを取ってくる。

 座り込んで頭をタオルで拭きながら「えーなにー。恋バナ?」と的確に当ててきた。

 さすがだわ。


「例えばだけど……」

「うん」

「人を好きになったら世界が戦争時代になる、みたいな感じになったら……ナコナは誰かを好きになる?」

「な、なにそれ壮大だね……」

「い、いやぁまあ、極端な例えだとは思うけど……」


 あながち極端とも言い切れないというか。


「うーん、とはいえあたしも誰かを好きだなーと思ったことないからなー」

「…………」


 哀れなり三色騎士トリオ……。


「でも多分好きになっちゃったら、世界がどうとか気にしてらんないんじゃないの?」

「そ、そういうものかな?」

「わかんないけど」

「…………」


 参考にならない。

 けど、ジリルさんやミラージェさんには面白ネタ提供みたいな感じで、相談したくないしな〜。

 そうだ、リコさん!

 ……リコさん……リコさん、は、ナコナより恋愛相談するのに不安を感じるのはなぜかしら?


「ねぇ、ティナが好きになった相手ってもしかしてレンゲ?」

「ぶっ!」


 なっ!?


「ははぁん、やっぱりねぇ」

「っ、な、っ……!」


 髪を拭いていたタオルを肩にかけて、ニヤリと笑うナコナ。

 な、なぜ!?

 恋愛についてお父さん並みに疎そうなナコナにバレたの!?

 そんなにわかりやすくないと思うんだけど、わたし!


「なんで……」

「なんとなく? なんかティナがあたしと父さん以外で信頼してるなー、って感じの人って限られてるじゃん? その中でもレンゲって、ティナの種族のこととか、知ってるんでしょ?」

「う、うん」


 というか、わたしが珠霊人だと最初に気づいたのはレンゲくんだ。

 そして真っ先に、珠霊人だとバレないようペンダントをサークレットに変えて額の珠霊石を隠してくれた。

 このサークレットはある意味で、わたしの大切な宝物であり命綱。

 わたしの種族がバレたら、なにが起きるかわからない。


「ティナってあんまりわがまま言わないけど、あたしや父さんには平然と無茶言うし」

「え? そ、そうかなぁ?」

「今日のカリルーのスープとか。あれは初見で『大丈夫、食べろ』って無茶ぶりでしょ」

「……ソ、ソウカナー……」


 目を逸らす。

 た、確かに初めて作った見た目ヤバげな料理の味見に付き合わせるのは、無茶ぶり、かなぁー?

 ナコナ、顔が真顔だよ……ゴメン。

 ジリルさんやミラージェさんはドン引きして食べてくれなかったしねー。

 色がアレだったのよ、色が。

 木の実なら許されるのに、スープになると許せないとはこれいかに。

 もしかしたらカレーがこの世界に受け入れられるための、最初の課題かもしれないわ。


「ま、レンゲならティナはもう胃袋掴んでるし、いけるんじゃない?」

「え、えぇ〜」

「あんた色々悩みすぎなのよ。深刻になりすぎだし、深く受け取りすぎたり。ある程度テキトーでいいんだって。あたしはあんたが無理せず楽しく笑っててくれれば、それでいいと思ってるよ」

「…………。うん、ありがとう」


 テキトーかぁ、それが意外と難しかったりするんだよね。

 でも、ナコナにそう言ってもらえるのは嬉しい。

 純粋に、ありがとうって思うよ。


「ちなみにナコナはなんかないの? そういうの」

「恋バナ? ないなぁ」

「ど、どんな人が理想とかは?」

「父さんをもっと恋愛方面にも敏感にして、積極的にしたような人?」

「ああ、なるほど……うん、それは……うん、間違いない……」

「どういう感想、それ」


 でもなんだろうな。

 ガウェインさんもベクターさんもリスさんも、そういうタイプのように思うんだけど……?

 この場合なにが足りないのかしら?

 更なる積極性?

 それとも、ダイレクトでストレートな表現?

 リスさんかなりそのタイプじゃない?

 あれでダメとなると……もうわたしにはどうしたらいいのかわからないわ……。


「あ! み、見た目の好みは?」

「え? そうだなぁ……リコさんの鎧みたいな感じはかっこいいよね!」

「…………。そっか、じゃあそろそろ寝ようか。おやすみー」

「え? なんで突然打ち切るの?」


 お三方よ、これはわたしにもどうしようもないです。








 ********




 翌朝、クリアレウス様へのお見舞いに、わたしはとりあえず例の『上級治療薬プラス5』を持っていくことにした。

 そういえばこれの効果を確認したところ、ギャガさんが捌いた分は残念なことに「あれから連絡が取れないんだもんな」らしい。

 魔物が闊歩する今の時代、次に会うのは魔物の腹の中……なんて怖い話もある。

 この『上級治療薬プラス5』が、危険を顧みない冒険者さんたちの命を守っていればいいんだけど……。

 朝ご飯を食べ終えて外へ出ると、表の畑ではギャガさんとナコナ、リスさんが収穫のお手伝いをしている。

 ああ、そういえばギャガさんたちは収穫した野菜や香辛料の材料を買い取っていくと言っていたっけ。


「どうですか?」

「うん、悪くないんだもんな。品質『良』。材料だからとりあえずこのくらいで買い取るもんね」

「わあ、ありがとうございます。……本当ならいろんな商人さんに立ち寄ってもらいたいけど難しいから、困ってたんです」


 せっかく作った野菜や香辛料も、売ることができなければ宝の持ち腐れ。

 デイシュメール内でも、野菜は食べきれなくなってきている。

 まあ、元奴隷だった皆さん的には「こんなに毎日お腹いっぱいたべられるなんて、奇跡みたい」と目を輝かせていたけれど。


「それなら、少し離れたところに野菜や香辛料の売店を作ればいいんだもんな」

「売店?」

「ああ、まあ、確かにそれならデイシュメールに来なくても野菜や香辛料を買えるけどね。どのみち、旅商人が迂闊に旅できない現状じゃあ、無理じゃない?」

「しゃん……」


 けろっとリスさんに否定されてしまった。

 あ、あわあわ。


「それに転移魔法で品物を送ってもらおうにも、料金の支払いはどうするって感じだしね」

「そ、そうか〜」


 ナコナの追い討ち!

 そうね、転移魔法は便利だけど、それじゃあ支払いができない、かぁ。

 なにかこう、自動販売機的なものがあればいいんだけどなぁ〜!

 錬金術では難しそうだから、やれるとしたら魔法かしら?


「おはよう〜。ティナ、準備できてる?」

「あ、おはようレンゲくん!」

「? え? どうしたの?」


 ちょうどいいところに!


「自動販売魔法的な魔法はない!?」

「は、はあ?」


 やって来たレンゲくんに事情を説明する。

 後ろからレヴィ様もやって来て、怪訝な顔のままわたしの話を聞いてくれた。


「というわけで自動販売的な魔法がね、あればいいなって!」

「なるほど……それならいくつかの魔法を合わせて複合魔法にしたらいいんじゃないかな。でも、複合魔法は総じて上位魔法になる。ティナの知識では大変だと思うよ」

「う、うん、そう思ったから相談したんだけど……」

「そ、そう……。た、頼られるのは悪い気しないんだけど、僕ら幻獣の魔法は攻撃や防御とかの戦闘系に特化してるんだ。生活に役立つものはあんまりないから……相談するなら当代がいいんじゃないかな」

「シィダさんか〜」


 やだなぁ、シィダさんに頼むのっていろんな意味で大変なんだもの。

 セクハラとかセクハラとかセクハラとかで。

 でも、確かに魔法に関してはシィダさん以外に相談できる人はいない、かなぁ。

 いや、シリウスさん……うぅん、シリウスさんも魔法は「戦闘用が多いんですよ」って言ってた。


「呼んだか!」

「「「うわあああぁ!?」」」

「!?」


 う、後ろの三人が悲鳴を!?

 その悲鳴に驚いて振り返る。

 え、えぇ!?


「シィダさん!」

「やあ、当代」

「おう。様子を見にきてやったぞ、ありがたく思うがいい未熟聖女」

「うっ、うう……」


 いきなりの未熟者扱い!

 い、いや、まあ、その通りだけど!

 あ、城壁の門からはレドさんとスエアロさん、クウラくんまで!

 まだ人間大陸を旅していたのね。

 お父さんがシィダさんに亜人大陸との交渉を、手伝ってもらうって言ってたから、人間大陸にはいないと思ってたわ。


「どうするティナ、今日はその自動販売魔法? の相談する?」

「う、ううん、会える時に会っておきたいから……」

「そう。じゃあちょっと出掛けてくるね。あとはよろしく、レヴィ」

「おう! 任せろレンゲ様!」


 本当は今すぐ相談したい気もするけれど、クリアレウス様にもアリシスさんにも会いたい。

 数時間くらいなら、レヴィ様の結界にやってきた魔物を閉じ込めておける。

 夜にわたしが寝ている間は、そうやって魔物の動きを止めておくのだ。


「なんだ、出かけるところだったのか?」

「あ、はい。幻獣王様と、錬金薬師としてお世話になった方のお見舞いに行くんです。あの、でも魔法のことでシィダさんに相談したいことかあったんです!」

「ああ、自動販売がどうとか言っていたな。また奇妙なことを思いつくものだ! はははははぁ! いいだろう、待っていてやる! というわけでオレは美女のナンパへ行く! 止めるなよレド、スエアロ」

「いってらっしゃーい」

「さっさとフラれてこい」


 誰も止めないの!?


「どーするギャガさん、なんか面白い話になってるけど」

「そうだもんなぁ! 自動販売魔法……すぐにできるのならあやかりたいんだもん!」

「すぐできるの? ティナ」


 リスさんは多分、ナコナと一緒にいたいんだな。

 ギャガさんは商売人根性。

 レンゲくんを見上げてみると肩を竦められる。

 やはり簡単ではないのだろう。


「当代次第かな」

「相談してみないことにはなんとも……?」


 その当代様は高笑いしながらナンパに行ってしまった。

 これは早く帰ってきてアレをなんとかしないとダメな感じ?

 でもそこは商売人の鑑、ギャガさんは「早速相談するんだもんなぁー」と野菜の収穫を仲間に任せて、シィダさんを追いかけて行く。

 あ、うん、その方が早いかもしれない。


「これは今日もデイシュメールに泊まりかなぁ〜。ねえねえ、お嬢はいつまでデイシュメールにいるの? せっかくだしお茶でも一緒に……」

「うーん、どうしよっかな。レネとモネも心配だし、ティナが作っといてくれた香辛料や調味料や薬も持って帰って補充しなきゃだから……野菜の収穫の手伝いが終わったら帰るわ」

「…………そ、そうなんだー……」


 ナ、ナコナ〜。

 リスさんあんなに頑張ってるのになんで気づかないかなぁ!

 それとも気づいてて素っ気なくしてるの?

 小悪魔なの?

 ナコナって小悪魔タイプなの?


「ティナ、そろそろ行く?」

「そ、そうだね。じゃあナコナ、レネとモネによろしくね」

「うん、いってらっしゃい」


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