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転生したら絶滅寸前の希少種族でした。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
第七章 〜十五歳のわたし〜

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十五歳のわたし第6話



「クリアレウス様に?」

「うん。お会いしておきたいんだけど、無理かな?」

「いや、無理ではないけど突然どうしたの?」


 魔物を浄化し終わって、歩いてデイシュメールへ戻る途中、レンゲくんに話してみた。

 んん、今日はちょっと風が強い。


「アリシスさんもこの間倒れたって言われたの。それで、会えるうちに会っておきたいなって」

「なるほど。そうだね、クリアレウス様はだいぶ弱っておられるから……ティナがお見舞いに行けば少しは元気になるかも」

「あ、あとね……聞きたいこともあるし」

「聞きたいこと?」

「…………」


 少し俯いて考える。

 いや、レンゲくんなら、きっと大丈夫……!


「あの、ね……『暁の輝石』って、知ってる?」

「え?」


 あ、この反応は……いつもと違う。

 目を見開いて、そして眉が寄った。

 ……知ってるんだ。

 レンゲくんは『暁の輝石』のこと、知ってるんだ!


「……ど、うして、その石のことを……」

「そ、その、アカリ様に『原始星(ステラ)』をいただいた時に、なんでも願いが叶う不思議な石だって言われて、気になってて……」

「どうしてその石のことを知りたいの? なにか叶えたい願いでもあるの?」

「それは……」


 どこまで話していいのかな。

 赤ちゃんの頃の記憶があると言って信じてもらえる?

 もう十五年も前の記憶だけど、『暁の輝石』に関しては割とはっきり覚えているの。

 だって、なんか怖かった。


『暁の輝石』の血よ。

 どうか永遠に目覚めずに——。


 目覚めてはいけない。

 祈るように言われた言葉。

 知らなければ、危険な目に遭うのでは?

 そう思ってしまう。

 だから、もし危険なものなら、目覚めさせないように気をつけたいし……。

 それができればの話だけど、知らなければその危険性もわからないままだし。


「ええと、その石の力があれば『原喰星(スグラ)』を倒せるんじゃない?」

「あの石はそういう類のものではないよ」

「そ、そうなの?」


 一生懸命考えた提案はあっさり否定。

 なんでも願いが叶う石なのに、『原喰星(スグラ)』をやっつけるのには使えない?

 んんん? ますますわけがわからない。


「でも……そうか、アカリさんが……」

「…………」


 レンゲくんが眉を寄せたまま、マフラー越しに指先を顎にあてがう。

 アカリ様とレンゲくんは……知り合い、なんだっけ。

 どういう知り合いなんだろう。

 少なくともアカリ様はレンゲくんのことを気にしていた。

 もしかして、昔付き合っていたとか……。


「気分がいい話ではないよ?」

「え? 教えてくれるの?」

「えーとね、最初に……一番初めに『暁の輝石』が生成されたのはアカリさんがまだ生きていた頃。珠霊人が生まれたのはある意味偶然だった。三千年前、人間などの生き物から体内の『原始魔力(エアー)』を吸い取る植物がいてね」

「た、体内の『原始魔力(エアー)』を!?」

「今はいない。あれは絶滅したから」

「ほっ」


 そ、そんな恐ろしい植物が、昔はいたんだ。

 けど、そう考えると生態系も文明同様だいぶ変わっているのかな。

 昔使えた素材も無くなってるってことになるわよね。

 それはちょっと惜しいかも。


「えーと、その植物で一つの村が絶滅しかかった。アカリさんが村を助けようとして空中に漂っていた珠霊を『原始星(ステラ)』の力で彼らに融合して生まれたのが『珠霊人』の始まり。生まれたての珠霊人は人間とほとんど変わらなくて、珠霊人が結婚式で愛を誓い合うと『暁の輝石』が生まれた。『暁の輝石』は、愛という感情が額の珠霊石を進化させ、生成される物だったんだ。最初はなんか綺麗な石ができたから、恩人のアカリさんへ贈ろう、となったそうだよ。そのあとアカリさんは『原始星(ステラ)』を次代に引き継ぐ為に『暁の輝石』を入れ物として使った」

「…………」


 わたしがアカリ様から受け取った虹色の石。

 あれは『原始星(ステラ)』が入った『暁の輝石』だったということ?

 あれ?

 でも、なんでも願いが叶う不思議な石っていうのは?


「『暁の輝石』はアカリさんが死んだ後も、珠霊人が結婚する度に世に生まれていた。でもある時、その石の力に人間は気づいてしまう。美しい石だから譲ってくれという旅人に、珠霊人たちは譲ってしまった。旅人は危篤の親の死に目に合うべく旅をしていたんだ。そこで、その手に入れたばかりの美しい石に『どうか親の死に目に間に合うように』と祈った。そうしたらその旅人の親はたちまち元気になってしまった」

「え、すご……」

「でも、その一回の願い事で『暁の輝石』は光を失ったという。旅人は不思議に思いつつ、まさか、という予想を立てた。そして……また珠霊人の村に立ち寄った際、『暁の輝石』を買い取り……億万長者になりたいと願った」

「……か、叶ったんですか?」

「うん。旅人はそれ以後、生涯金に困らなくなったらしい。そしてそういう奴は最終的にあることを願う」

「あること?」


 生きていくのに困らないお金を手に入れたら、次に欲しがるもの……。

 それってまさか。


「不老不死、とか?」

「そう。旅人は珠霊人の村へまた赴いて、『暁の輝石』を買い取った。あの頃は珠霊人もその価値をわかっていなかったから、ホイホイ旅人に譲ったそうだよ。ただ、やたらと値を吊り上げてくるから奇妙には思ったらしい」

「それで、その旅人は不老不死になったんですか?」

「ある意味ね」

「ある意味?」


 どういう意味?

 首を傾げる。

 レンゲくんの眼差しは厳しい。


「旅人は『暁の輝石』を手に入れた、その場でそれを願った。そしたらその旅人は、その場で石像に変わった。……そして、その時に初めて珠霊人は『暁の輝石』が持つ『願いを叶える力』に気がついたんだ。彼らは二度と『暁の輝石』を村から出さなかったけれど……旅人はこっそりと親しい者に『暁の輝石』の話をしていた。そして、それを鵜呑みにした何人かが村を訪れるようになり……そしていつしか当時の王たちの耳にもその話は広まって、長く続く戦乱時代の原因になったんだ」

「…………」


 口を、両手で覆う。

『暁の輝石』……!

 そ、そうよね、なんでも願いが叶う……。

 石像になったのは、確かに……本人の願った形ではないけれど、願いそのものは——不老不死は——叶っている、ことになるわよね。

 ……でも、そんな、戦乱時代?

 そんな時代が?


「戦乱時代、なんてあったんだね……」

「うん。僕が生まれて五十年後ぐらいから始まったかな……。四、五百年近く、人間は人間同士で戦争をしていたよ」

「そ、そんなに……!?」

「残念ながら『壺の中の小人』はその戦乱時代を利用して、最初の『原喰星(スグラ)』を作ったんだろう。僕とレェシィが世界を燃やしたあとも、生き延びた人たちは再び文明を蘇らせようとして荒野になった世界の再生を大義名分に……珠霊人たちを襲って奪い取ったりも、していた……」

「…………」

「……そういう暴走もした、という話……」

「……う、うん」


 それは少し理解できる。

 世界が全部燃えて、なにもかもがまっさら更地になって、前のような生活を取り戻したくて必死だったってことなんでしょう?

 けど、それは……それはひどい。

 珠霊人だって、状況は同じだったはずなのに。


「珠霊人はそんな経験を経て、どんどん感情を捨てていき……『暁の輝石』を、生成しなくなった。いや、できなくなった、かな……」

「そんな……」


 珠霊人は感情が希薄な種族。

 それは、珠霊が世界の摂理の一部だから。

 その摂理の一部から生まれた種族だから……。

 そう、本には書いてあったのに。

 本当は戦争の原因になりえる『暁の輝石』を生み出さないためだった?

 そんな……!


「ええと、だからその、気分のいい話ではないでしょう?」

「…………うん」


 珠霊人にそんな歴史があったなんて……。

『暁の輝石』の血よ、どうか永遠に目覚めないで——。

 ああ! 本当にその通りだわ。

『暁の輝石』はこの世界に生まれてはいけない!

 そんなもの、争いの火種になる!

 わたしは絶対そんなもの生み出したりしな————。


「…………。……あの、レンゲくん……」

「うん、なに?」

「昔の珠霊人は『暁の輝石』をたくさん生成していたのよね? その、愛し合えば……額の珠霊石が『暁の輝石』になるって……」

「うん、そう聞いている。昔の珠霊人は人間にとても近かったから、一度の結婚で二人分……男女の額の珠霊石が『暁の輝石』になることで、愛の証明にもなっていたとかなんとか……」


 そ、それはそれでなんとなく素敵!

 じゃなくて!


「あ、あの、それじゃあ……わ、わたし……」

「………………」


 ちらりとレンゲくんを見上げると、なんとも悲しげにも見える眼差し。

 それが全てを物語っているようだった。

 ……感情が希薄になった珠霊人は、婚姻を結んでもそこにある愛情はとてもささやか。

 だから額の珠霊石は『暁の輝石』にはならない。

 でも、わたしは?

 わたしは前世の記憶があるし、育ての親は人間だ。

 自分でも人間だという意識が強いし、希薄というほど感情が淡白な方ではないと思う。


 ——わたしが人を愛したら……レンゲくんを好きだと言ったら……額の珠霊石は『暁の輝石』になってしまうんじゃ……?



「……………………」


 胸を抑えた。

 この気持ちが成就したら、額の珠霊石は『暁の輝石』になるの?

 どんな願いも一つだけ叶える不思議な石。

 争いを呼ぶ石。

 成就しなければいい?

 レンゲくんに好きと言うことさえ告げられずに、一生独りで、この気持ちを抱え続けないといけないの?

 レンゲくんは優しいから、争い事が嫌いだから……わたしの気持ちを受け入れて『暁の輝石』を生み出すことをきっと望まないだろう。

 それをわかっていて、告白する?

 でも、結局その後もわたしは誰かを好きになる度に諦めなければいけない。

『暁の輝石』は世界に生み出しては——いけない。

 そんな……、そんな……っ。


「てぃ、ティナ……あの……」

「…………ご、ごめんなさい、話が思いっきり逸れちゃったね!」

「え?」

「アリシスさんとクリアレウス様に会いに行くっていう話だったじゃない? えーと、行けるかな? 転移魔法があればすぐだと思うけど……どうかな? お見舞いだけだから一時間くらいで帰ってこれるかな? あ、でもアリシスさんには錬金術のことで色々聞きたいこともあるしな〜。二時間くらい見ていた方がいいかしら?」

「…………。うん、まあ、いいんじゃない? ゆっくり話してきても。その間はレヴィに、結界に魔物を閉じ込めておいて貰えばいいんだし」

「そ、そうか、その手があったか〜。あははは……」


 気を遣われてしまった。

 ……そういうところだよ……レンゲくん……。


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