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転生したら絶滅寸前の希少種族でした。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
第七章 〜十五歳のわたし〜

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十五歳のわたし第2話



「そういえばクリアレウス様はお元気?」

「あんまり、かな。元々かなり弱っていたし……」

「そう……。じゃあ次の幻獣王は本当にどうなっちゃうの?」

「レヴィに任せるよ。僕は王の器じゃないもの。『資質』もないしね」


 でもわたしは知っている。

 レンゲくんの周りの幻獣たちは、みんな、レンゲくんが次の幻獣王だと思ってるってこと。

 レヴィ様でさえそう思っているんだもの。

 でもレンゲくんは「器じゃない」「絶対やらない」と言い続けている。

 くすっと、笑ってしまった。

 不思議な顔をされる。

 いや、だって……。


「わたしもそう思う。レンゲくんにはきっと無理だね」

「え」

「それに、王様なんて普通のお仕事じゃないものね。やりたくない人に無理やりやらせても失敗するに決まってるわ。やりたい人より『やり遂げる』って言ってる人じゃないと絶対無理よ」

「…………」


 やりたい人なら多そうだけどね、王様。

 でも、それに伴う責任を背負える人じゃないと……きっとその重圧には耐えられないだろう。

 レンゲくんは確かに強い。

 強いけど、ヤダヤダ言ってる人ができることじゃないはずだ。

 その点、レヴィ様なら「なんとかなる」気はする。

 あの無駄な自信と、レンゲくんというブレーキ役がいれば維持だけは可能だろう。


「…………ふふ……ふはっ……あはははっ」

「え?」

「面と向かって『無理』って言われたのは初めてだから……」

「え、だ、だって……」


 マフラー越しだけど、とても嬉しそうに笑うレンゲくん。

 え、ええ〜……ちょっとそんなに笑う?

 やめてよ、レンゲくんの笑顔は心臓にものすごく悪い!

 直視できないし、それに胸が痛いくらい鳴るし熱いし……なんかこう、てんてこまいになるのよ!


「でもレンゲくんが『やり遂げる』っていう覚悟をしたら、無敵だと思うわ」


 なにしろ空の上の『原喰星(スグラ)』をなんとかしようとしてるんだもん。

 その覚悟を『王様になって幻獣大陸を統治する』という方向へ持って行ったら、絶対素晴らしい王様になることだろう。

 レンゲくんは強いけど、同じくらい優しいから、きっと素敵な王様になるわ。

 要は本人のやる気よね。


「……やり遂げる、か……そうだね。でもやっぱり僕は王の器ではないよ。僕は弱いもの……」

「弱いというより優しすぎるだけだと思うわ。みんなに気を遣いすぎなのよ」

「え、ええ?」


 今度は変な顔。

 いやいや、レヴィ様やシンセンさんやエウレさんには、確かに遠慮はないように見えるけどね?

 それでも、周りに気を遣いすぎってくらい遣ってるのは気づくわよ。

 さっきだってわたしがレヴィ様に変な持たれ方してるから助けてくれたし、ラックをデイシュメールに転送したり……。

 レヴィ様ならラックをデイシュメールへ送るなんて絶対思いつかないわ!

 デイシュメールの人たちがお肉を食べたりラック乳で乳製品を作ったりできるよう、思いやってくれるなんて……うん、レンゲくんにしかできないわよ。

 その思いやりが、たまに度がすぎてることがあるだけ。


「わたしも昔、それで気疲れしちゃったことがあるわ」

「そうなの?」

「うん。それで、少し体を悪くしたの。今はもう元気だけど……」

「宿屋っていろんなお客が来そうだものね……」

「あ、うん」


 前世の話だけどねー。

 真面目過ぎたのよ。

 なんでも自分一人で頑張ろうって、頑張りすぎて、他の人のフォローもやらなきゃって、また頑張りすぎて……。

 まあ、それでキャパオーバーして精神内科行きよ。フフ。

 レンゲくんにはその気がありそうだから心配だわ。


「まあ、だからレンゲくんは王様に向いていないと思うわ。悩みすぎる感じだし」

「うっ……」


 目を逸らされる。

 その自覚はあるのか。

 その自覚があるだけましかな?


「…………君はすごいね、まるで僕のことならなんでもわかってるみたいだ」

「え? い、いやいや、別にそんなんじゃ……」


 ふわっとマフラーが靡く。

 黒い髪もさらさらと風に流れた。

 木や草の匂い。

 あれ、なんだか……懐かしいな。

 でも落ち着かない。

 細められた黒い眼。

 柔らかくて優しい眼差しだと思う。

 レンゲくん……。

 わたしはあなたのことを、ちゃんとわかってあげられてる?

 だとしたら——嬉しい。


「…………あ、あの、レンゲくん……」

「うん、なに?」

「わたし、わたし……もしかしたら……」


 いや、もしかしたら、じゃないわ。

 わたし、きっとわたしは——。


「! その話後でもいい!?」

「うん」


 ズシン、ズシン、という足音と、この草木の香りをかき消す悪臭よ。

 盛大に空気をぶち壊してくれたのは……いや、忘れてたわたしが悪いんだけど!


「っていうか団体さん!?」

「そのようだね。まとめて浄化できると思えば楽だけど」

「うっ、そ、そうね」


 数十メートルの『無魂肉(ゾンビ)』たちが、腕を引きずりながらぞろぞろ現れた。

 うっ、相変わらず気持ち悪い……。


「よ、よし! サクッと終わらせて苗植えの続きするわ!」

「ん……? 今日はやけに……ティナ! 早めに片付けて助けに行ったほうがいいかも」

「え!?」


 レンゲくんが指差したのは街道の方。

 そこには騎士団に護衛された商人のキャラバンらしき影。

 別な魔物に取り囲まれてる!


「うん! 急ごう!」





 *********



「いやぁ、助かったんだもんなぁ〜!」

「ほんとほんと、魔物に囲まれた時はもうダメかと……」

「失礼な。我々が護衛しているのですから問題なかったでしょう? ……だが、まさか噂の聖女が君だったとはねぇ」

「あはは……」


 デイシュメール、一階の食堂。

 そこにはギャガさんと、ドレークさん。

 そして、ギャガさんのキャラバンの護衛をしていた五人の『ダ・マール』騎士。

 リステインさんと、赤や青の騎士さんたち。

 リスさん以外は初めて見る。

 そして……。


「わたしのこと、リスさんにも話していなかったんですか? お父さん、リコさん」

「ああ、びっくりさせた方が面白いと思ってな」

「ほんとにびっくりしたよー。聖女がいるって噂は流れてたけど、それがまさか知り合いだなんて」

「う、噂になってるんですか……」


 まあ、なってそうだけど。

 髪をオールバックにして、礼服を着たお父さんは少し困ったように頰を掻く。

 その隣に立つリコさんも礼服だ。

 でもズボンだから、綺麗というよりカッコいい。

 二人は『サイケオーレア』に偶然居合わせて、デイシュメールに一休みに来たんですって。

 一泊と言わずゆっくりしていってくださ〜い。


「魔物を浄化する聖女の噂なら、確かに各国で広がってるんだもんな。いやいや、まさかそれがティナリスちゃんだったなんて〜! おじさんもびっくりなんだもんよ!」

「せ、聖女と呼ばれることは散々お断りしてきたんですけど……」

「やってることが『聖女アーカリー・ベルズ』と同じだからな。仕方ないさ」


 と、リコさんに微笑まれる。

 肩を落とすと、お水の入ったグラスを片手にレンゲくんが食堂に入ってきた。

 明らかにリコさんとリスさん、他の騎士たちが緊張の面持ちになる。


「ラックは厩舎に放り込んだってさ」

「ラック?」

「あ、さっき浄化した魔物の素体がラックだったんです」


 お父さんからの質問に目を逸らす。

 ラックがね、三十頭近い数でズドド……と移動してきたあの様は本気で怖かったわ。

 ぶつかって『コッケーン』って鳴いてひっくり返ったのは笑いそうになったけど。

 そして、せっかく元の姿に戻ったのにラックたちの一部はお肉となる。

 そう考えると……い、いいえ、わたしたちも生きるために栄養価の高いお肉は貴重!

 しっかり食べさせていただきます、ラック様!


「人間の国々の様子はどう?」

「『エデサ・クーラ』をなんとかするっつーのは全会一致だな。亜人の国々もあの国には迷惑している。エルフ、ドワーフ、コボルト族は国王同意の上、いずれティナを紹介するのを条件に協力は約束してもらった。蜥蜴人リザードマン鬼頭族オーガの方への交渉はシィダたちに頼んでいる」

「ああ、蜥蜴人や鬼頭族は自己主張が強いものね。手こずるようならレヴィを貸し出すからいつでも言って」

「え、レ、レンゲくんは動かないの?」

「蜥蜴人も鬼頭族も祖はドラゴンなんだ。僕よりレヴィの方が簡単にいくはずだよ」


 そ、そうなんだ。

 そういうものなんだ……?


「人間の国々もティナには会わせろとやかましい」

「お前らが来いって言ってくれた?」

「当たり前だ。ティナは『魔寄せの結界』の中から今はまだ動けそうにないって言ってやったよ」

「そんな度胸のある為政者がいる国はなかったがな」


 ふっ、とほくそ笑むお父さんとリコさん。

 それにつられるように目元が微笑むレンゲくん。

 政治に明るくないわたしにも、この三人が為政者たちを嘲笑っているのがわかるわ!


「あとは当代『太陽のエルフ』の実力次第かな……。『意思持つ原始罰(カグヤ)』のことはだいぶ浸透した?」

「どうだろうな。シィダのおかげで一般市民への浸透は早い。特に亜人大陸は。だが人間の国は……」

「やはり各国の宗教概念が弊害になるな。シィダ殿の言葉よりも、神官たちの言葉の方が民には説得力があるようだ」

「ふう。やっぱり……」


 えーと……この話は多分『意思持つ原始罰(カグヤ)』こと『壺の中の小人』から身を守る術の話。

『意思持つ原始罰(カグヤ)』は小さいから、人の身を乗っ取って分裂体を各地へ放ち、魔物や『原始悪(カミラ)』を増やしている。

 でも、乗っ取られない方法があるのだ。

 その方法は至極簡単なもので、『意思持つ原始罰(カグヤ)』に誑かされずに『自分の体は自分のもの!』と言い放つのだ。

 そうすれば魂が体を『原始罰(カグヤ)』から守ってくれる。

『意思持つ原始罰(カグヤ)』は小さいから、それで乗っ取られることは防げるんですって。

 …………でも……。


「そのくせ、神官どもはもう自国の神を信じちゃいねぇ。ったく、救いがねーなぁ」

「保身に走る者共の愚かさ故に、そういう者共の身の安全が保証されているのは良いのか悪いのか……」


 お父さんとリコさんが肩を竦める。

 それは人間大陸で前々から言われていたことだ。

 そう、宗教。

 各国が独自の神を崇めることで、せっかくの『意思持つ原始罰(カグヤ)』への対処法に国ごとで弊害が出ているのだ。

 神官の人たちは「自国の神を崇めることで、『意思持つ原始罰(カグヤ)』を防げる」と国民に言い含める。

 国民は生まれた頃からその神を信仰しているから、それをあっさり信じるのよ。

 でも本当は、その国の神様じゃなく、自分自身で拒まなければならない。

 だって人間大陸の国の神々は『国を統治しやすくする為』だけに生み出された架空の神。

 下手したら『意思持つ原始罰(カグヤ)』に、そこを付け込まれてしまう。

 だというのに、神官たちはお布施やそれのおかげで保証される自分の生活を最優先させている。

 とても神様に仕える人のやることじゃないわ……。

 まあ、弊害とはつまるところそういうことね。


「あとは『エデサ・クーラ』を落とす話だが……」

「それは僕の方でやっておくよ。でも、もう少し魔物が減って、全ての種族が『意思持つ原始罰(カグヤ)』から身の守り方を理解してからの方がいい。追い詰めたあとの方が、逃げ場を求めて死に物狂いになるだろう。今の状態であいつが人の国に入り込めば……」

「いずれ第二の『エデサ・クーラ』が生まれる」

「そういうこと」


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