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転生したら絶滅寸前の希少種族でした。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
第六章 〜十三歳のわたし〜

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十三歳のわたし第2話



 爪先が冷えるような。

 足元が覚束ないような……。

 目の前が薄暗くなり、お父さんの姿がぼんやりと歪むような。

 は、はあ?

 手のひらに、変な汗、滲む。

 それを誤魔化すように寝間着の生地を握り締めて……無理やり、不細工になった自覚はあるけれど……笑顔を作ってみせた。


「は、はあ? わ、わたしが珠霊人、ですか? 珠霊人って……えーと、なんでしたっけ?」

「額に珠霊石を持つ亜人の一つだ。その額の珠霊石に『原始星ステラ』を宿せば、普通の人間が直に宿すより安全に、珠霊石に宿して使うより確実に力を使えるんだとさ」

「そ、そう、なんですか……」

「『原始星ステラ』は神力ってやつの一種で、普通の人間や亜人が身に宿して使うと精神が汚染されて人格がぶっ壊れるらしい。珠霊石に宿して使うのも、使い慣れないうちは精神が汚染される。だが、珠霊石を持つ珠霊人なら耐性が高く、また扱いも上手いから『原始星ステラ』を宿すには適性が高い。……って話だ」

「………………」


 俯いてしまった。

 お父さんの姿を見ていることが辛くなったわけじゃ、ないんだけど……。

 ちょっと、落ち着け。

 頭の中を、整理しよう。

 宇宙のあれは世界を呑み込む巨大生物……。

 あれから世界を救うには、『原始星ステラ』しかない。

 そして『原始星ステラ』を宿す適性があるのは……珠霊人だけって、そう言いたいの?


 …………そんな……ばかな。


 愕然となる。

 だって、その理屈だと……。

 それだと、世界でわたししかいないってことじゃない。

 珠霊人は十二年……ううん、十三年前に国ごと滅ぼされたのよ?


「お前、最近ずっとサークレットをつけているな?」

「!」

「いや、いいさ。……隠して生きていくのなら、それでも。それがお前の選んだ道なら……俺も最後まで付き合う」

「…………」

「ただ、考えておいてくれ。俺に『原喰星スグラ』や『原始星ステラ』のことを教えてきたやつは半年待つと言ってくれた。再来月……二ヶ月後に、答えを聞きにくる。まだ二ヶ月あるんだ。……俺はお前の答えを尊重するから、なにも心配しなくていい。あいつもお前を無理やり連れていくなんてことは、しないだろう」


 ぽん、と……頭に手が置かれる。

 いつもの、優しい手のひら。

 そして「冷える前に中に入ろう。早く寝ろよ」と声が落ちてきた。

 ……いやいや。

 いやいやいやいや……。


「……お父さん、は……いつから……」

「ん?」

「…………いえ、わかりました……おやすみなさい」

「ああ、おやすみティナ」


 お父さんが部屋を通り過ぎて、ドアから出ていくのを見送っても……部屋には戻れなかった。

 ああこれが『立ち竦む』というやつか。

 その場に足の裏が縫いつけられたように……足が棒になったかのように……動けない。

 お父さん、あの言い方は……わたしが珠霊人だと確信している。

 そうか、バレていたのか……。

 まあ、一緒に住んでれば……そうだよね。

 もしかしたらナコナにもバレているのかもしれない。

 でも、額に石が現れたのは四ヶ月前だし……いつ気づかれたのかしら。

 夜寝る時?

 寝ている時にしか、サークレットは外してないんだけど……。

 右手を額に伸ばす。

 指先で、体温で生温かくなっているサークレットに触れた。

 まぁね、バレる分にはいいのよ。

 お父さんはあの通りの人だもん。

 ナコナもきっと驚くけど、出ていけとは言わないと思うし。

 ……けど……お父さんにされた話の内容は思いもよらなかった。


「………………」


 わたしが?

原始星ステラ』を?

 ……『原始星ステラ』を宿して……あの空に浮かんでいる黒い点を、なんとかする?

 あはははは…………な、なにそれ。


「…………いや、無理でしょ……」


 誰が、どう、考えても……。

 考えておけって、言われたって、ねぇ?


「…………寝よう」


 そうだ、もう寝よう。

 別に今すぐじゃなくていいって言われているし。

 ふらふらと部屋に戻り、タオルを椅子に放り投げてベッドにダイブした。

 布団を掛けて、潜り込む。

 ……わたしが、『原始星ステラ』を額の珠霊石に宿して使う。

原始星ステラ』とは、どんな病も怪我もたちどころに治癒し……魔物を浄化する奇跡の力。

 かつて聖女『アーカリー・ベルズ』が持っていた失われた力……。

 あれ?

 …………どんな病も怪我も治癒して、魔物を浄化する……?

 確か万能治療薬と同じように、人体の欠損も治癒できたわよね?

 ついでに言うと万能治療薬でも治らない病気も治るのよね?

 あれ?

 そのうえ、倒せない魔物を浄化して消し去ることができる……。

 あれあれ?


 がば。


 布団から起き上がる。

 待って、まだ混乱してるのかな?

 …………特にデメリットが見当たらないような?


「あ、でもわたしが珠霊人ってバレるのか……そ、そうか……」


 ん?

 そうか?

 お父さんに頼んで内緒にしててもらえばいいんじゃない?

 サークレットがあれば額の石は隠せるし?

 サークレット様々!

 ありがとうレンゲさん!

 ……いや、けどわたし一人で魔物をなんとかするのって無理よね?

 いや、例えばわたしが『原始星ステラ』を宿したらわたしにしかなんとかできなくなる? あれ?

 よくわかんなくなってきたぞ?

 ええと、メリットとデメリットを比較してみよう。

 メリットは…………。

 ・魔物を浄化できるようになる。

 ・お父さんの腕とレネくんの額を治せる。

 ・他、病気になっても治してあげられる。

 デメリットは…………?

 ・魔物をなんとかしなくちゃいけない。

 ……けどなんとかできるもんならなんとかしたい。

 ・『原始星ステラ』を持ってるってバレたらめちゃくちゃ目立つ。



「………………………………」



 目立つのは……いけない。

 あ、あと精神汚染がどうとか言ってたわね。

 珠霊人のわたしは耐性があるから大丈夫、らしいけど……。

 うぅん……悩ましいけど、お父さんに相談して

 もう少し検討してみよう。

 うん、そうしよう!

 おやすみなさい!





 ********




 と、まあ、そんなわけでですね。

 翌朝ですよ!


「お姉ちゃーん! 見て見て! 湖の大樹にクミルがたくさん落ちてたよ!」

「わあ! 割ってクミルケーキにしようか〜」

「客もいねーのに?」

「こ、これからくるかもしれないでしょう?」


『ダ・マール』〜『ウル・キ』間が閉鎖されてからお客さんはめっきり激減してるからなぁ。

『フェイ・ルー』からくる人もあの辺りで足止め食らうのがわかってるから、きちんと準備して通る。

 うちは閑古鳥が鳴いてるけど、『ウル・キ』の国の宿屋や付近の街道にある宿屋は大繁盛だろう。

 ……うちは地味にその範囲から外れているのでこの有様だ。

 まあ、『フェイ・ルー』から『ウル・キ』まで行く間にあるのはうちだけだからたまーに団体さんはくるけれど……。

 噂話しか入ってこないが、あの辺りが閉鎖されたのは戦闘が頻発し始めたからのようだ。

 もちろん『エデサ・クーラ』と『ダ・マール』や『サイケオーレア』などが参加した連合軍との……。

 最初は『無魂肉ゾンビ』をどちらが討伐するかで揉めたらしい。

 こっちとしては「どっちでもいいからなんとかして!」って感じだけど……。

 ほら、あの付近に出る『無魂肉ゾンビ』って大きさが異常でしょう?

 ……まあ、揉めたのはアレよ、戦端を開くための口実だったようだけど。

 ホント、なにがしたいのかしらねぇ! あの国は!


「ティ〜ナちゅわ〜ん!」

「あ、ギャガさん!」


 宿へ続く道にガラガラと大型の荷馬車が数台列をなして入ってくる。

 荷馬車のテントにはキメラのマーク。

 あれは旅の商人、ギャガさんのキャラバンだ!


「お久しぶりです! ようこそいらっしゃいました!」

「ほんとほんとなんだもんの〜! 戦闘が増えて商売あがったりなんだもんね」

「あら? あの子は? お客さんの子ども?」

「あ! そうだ、紹介します!」


 メリリアさんがモネを見て首を傾げる。

 モネは人見知りだから、木の横に立ち竦みこちらを窺っていた。

 あんまりお客がこないとはいえ接客業だから、せめてお得意様には挨拶できるようになってもらわないとね。

 手招きして、まだ戸惑っている感じのモネへギャガさんたちを紹介した。


「モネです。双子の兄妹で、この子は妹。先日『ダ・マール』に行った際にご両親を亡くしてさまよっていたところをお父さんが保護したんです」

「モ、モネなの。はじめまして」

「初めましてなんだもんな〜! これはまたきゃわゆす〜!」

「……頭領……ティナリスちゃんの時からまさかまさかとは思ってましたけど……稚児趣味なんじゃありませんよね?」

「そ、そんなわけないんだもんね! なんて失礼なことを言うんだもん! メリリア!?」


 え! 違ったの!?

 わ、わたしてっきり……。

 いや、それでもちゃんと一線引いて商売を! 優先させるプロなのかと思ってた!


「あ、そうだ。そんなわけで今日はレネとモネの服も何着か購入したいんですけど……」

「もちろんなんだもんなー! たくさんあるから好きなだけ選ぶといいもんの〜」

「それじゃあ、今薬の在庫持ってきますね」

「よろしくなんだもんな!」

「あら? そういえばリフォームは終わったの?」

「あ! はい!」


 そうだわ!

 薬を引き取ってもらったら、リフォームが終わった新! 客室!

 その名も別館ロフォーラのやどり木!

 を、見てもらおう!

 長かった……長かったわ。

 二年、あ、いや三年前にムカデの魔物に破壊された一号室から四号室のコテージを、一度完全に解体してレドさんの設計図とわたしの前世の夢……一回でいいから旅館に泊まってみたい! ……を織り交ぜ建設された別館。

 木材は壊れたコテージのもので使えそうなものを再利用しつつ、西の森を切り開くついでに木を大量ゲット。

 夢だった大浴場、各部屋にはトイレと露天風呂が完備。

 一階にこれまでなかった一人部屋を五部屋追加し、食堂や会議室、サウナを取り付け二階は二人部屋三部屋と三人部屋が三部屋。

 単身のお客さんにも楽しんでもらえるアーンド欲しかった大きめのキッチンとオシャレで色々こだわった食堂がようやく!

 …………まあ、例のアレによってお客さんは来ないんだけど……。


「団体さんにも喜んでいただける仕様です! ご案内しますか!?」

「ええ! ぜひ! でもまずは服と……」

「薬ですね! 持ってきます!」


 話がまとまり、作りためておいた薬をギャガさんたちに買い取ってもらう。

 そのお金でレネモネの服を買った。

 レネは嫌がってたけど、服ばかりは買わないと手に入らないんだからありがたく買ってもらいなさい、わたしに。

 しかし、男の子って難しい。

 わたしの趣味で似合うものを買おうとするとすごく反発されてしまう。

 じゃあ、レネが自分で選べばいいじゃない。

 でもそう言うと「いらねーよ!」と怒鳴ってくる。

 なにこれ、遠慮してるのかしら?

 気持ちはわかるけど、あんた山に行って汚して帰ってくるんだから替えは必要でしょ!


「あと、これ頼まれてた素材なんだもんな」

「ありがとうございます! やった! これで上級治療薬が作れます!」

「出来上がったらぜひうちに卸してほしいんだもんな」

「ふふふ、もちろんです」


 お主も悪よのぅ、ギャガ屋〜。

 なんちゃってね。


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