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転生したら絶滅寸前の希少種族でした。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
第六章 〜十三歳のわたし〜

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十三歳のわたし第1話



「誕生日おめでとう! ティナ!」

「おめでとう」

「おめでとうティナお姉ちゃん!」

「あ、ありがとう〜」


 パチパチと、夜の自宅で和気藹々とした声が上がる。

『ダ・マール』での一件から四ヶ月、わたしは晴れて十三歳の誕生日を迎えました〜。

 まあ、拾われた日が今日なので実際の誕生日は多分すぎてると思うけど……些細な問題よね。

 重要なのは去年まではナコナとお父さんだけだった食卓に、レネモネとムジュムジュが加わったこと!

 レネくんは無言でリリス、デュアナ、ソランの花の花束を差し出す。

 プレゼントらしい。

 こやつ、わかっておるな……。

 いやぁ、それにしても「ティナお姉ちゃん」だなんて、なんて素敵な響きなのかしら〜!

 何度聞いても身悶えたくなる響きだわ。

 こんなに嬉しいならナコナのこともちゃんとお姉ちゃんって呼んであげればよかったかしら?

 でも精神的に抵抗が……。

 でも誕生日を毎年大々的に祝われるってなんかやっぱり慣れないな〜。

 生前……じゃない、前世は貧乏でコンビニのケーキをお母さんと食べられたらラッキー、くらいだったもの。

 この世界では欧米みたいに家族が揃って大々的にお祝いしてくれる。

 まあ、このよれよれのケーキもオツなものよ。

 モネとナコナが一生懸命作ってくれたものだからね!

 見た目はモネ作だろうけれど、クリームやスポンジはナコナが作ったものだから味は抜群。

 ……何気にナコナって料理が上手い。

 たまに軽やかにわたしを超えてくる。

 ま、まだまだ頑張らないと。


「うん、美味しい!」

「よかった〜! あのねあのね、モネがクリーム塗ったんだよ!」


 でしょうね!


「そうなの。すごく可愛くできてるのね」

「うん!」


 モネの方が可愛いけどね!


「ティナも十三か……早いものだなぁ……」

「父さん、目が遠いよ」


 うっすら涙まで浮かべて……。

 大袈裟だなぁ。


「むじゅむじゅ」

「ムジュムジュもありがとう」


 足元に身を擦り寄せてくるよくわからない生き物、ムジュムジュもわたしを祝ってくれているっぽい。

 ……結局この子なんなんだろう?

 いや、もうなんかムジュムジュはムジュムジュという生き物なんだろうけど……たまーに思い出したように疑問が湧くのよねぇ。


「………………」


 まあ、でも……幸せだな。

 十三年生きてこれたことに。

 手を組み合わせて、感謝した。

 今日という日を迎えられたことに。

 ありがとうございます。

 これからもこの幸せが続きますように………。


「ティナお姉ちゃん、なににお祈りしてるの?」

「うーんと、色々!」

「…………」





 パーティーの後は普通にお風呂に入って屋根裏部屋に向かう。

 レネモネは昔お爺ちゃんとお婆ちゃんが使っていた部屋でムジュムジュと寝ている。

 ので、行く途中おやすみの声をかけてから階段を登るのがすっかり定着した。

 部屋についてから一度背伸びをして、鏡の前に立つ。

 金から赤紫へのグラデーションの髪。

 お風呂上がりで濡れたそのロングヘアをタオルでトントンと叩いて乾かす。

 赤い目。

 尖った耳。

 毛先が赤い金の髪。

 エルフほどではないにしても……人間よりはやっぱり耳が長いのよね。

 前髪は眉よりうえで切り揃え、額のサークレットが隠れるくらいをキープしている。

 ……サークレット。

 レンゲさんにあの日作ってもらってから毎日つけている。


「…………」


 レンゲさんはこの額の石に気づいたのだろうか?

 気づいたから、あのペンダントをサークレットに変えて額に嵌めてくれたのだろうか……?

 だとしたら、あの人はなぜそんなことを……。

 ま、まあ、たとえ額に石が出てもなんとかして隠すつもりだったから、サークレットにしてもらえたのはありがたいんだけど……なにぶん意図がわからないのよねぇ。

 それとも、レンゲさんがサークレットを作ってくれた時にはまだなかったのかしら?

 本当に、額を……頭を守るためにというご厚意?

 え? なにそれ、あのイケメンヤバくない?

 だとしたら心までイケメンすぎる……。


「痛……」


 ツキン、と額の石が僅かに痛む。

 ここ半年、たまーにこういう痛みが起こる。

 サークレットは外して、化粧台に置く。

 むむむ……また石の面積が大きくなっているような……。

 すりすりと指先で額の石を撫でる。

 撫でる分には痛みはない。

 というか、本当にただの石みたいで触れた感触はないのよねぇ。

 痛いのは石と額のお肉のところ。

 肉を石が押し上げるみたいで痛い。

 これって石が「成長中でーす」ってこと?

 ふざけんな、縮め。

 もしくはぽこっと取れたりしないかなぁ。


「ティナ、少しいいか?」

「お父さん? は、はい、ちょっと待って」


 閉めた扉からノックとお父さんの声。

 慌ててサークレットを額に戻して、タオルを頭に巻く。

 ……家族とはいえ……まだバレたくはない。

 そりゃお父さんとナコナなら、わたしが珠霊人でも「出ていけ」とは言わないだろうけど……錬金術のことでそれでなくとも神経使わせているのにこれ以上は……ねぇ?


「はーい。どうかしまし……た?」


 扉を開くと、お父さんが見たことのない表情で立っていた。

 本当に、どうした?

 真摯な表情……というやつ……?

 纏う空気も、眼差しも、いつもと全然違う。

 緊張感というか、それが肌に響くようにまとわりつく。


「すまんな、寝る前に。話があるんだ」

「……話、ですか? ええと……」


 なんだろう?

 いつものお父さんとは、違う。

 部屋に入れていいものか、僅かに悩む。

 ……それ程、今のお父さんはいつもと違った。


「べ、ベランダでもいいですか?」

「ああ、そっちの方がいい」

「?」


 部屋に二人きりはなんとなく息苦しい気がしたので、ベランダを提案する。

 思いの外あっさり……いや、好都合と言われるとますますわけがわからない。

 部屋に入れて、ベッドの横のガラス扉を開く。

 ウッドデッキの床を真っ直ぐに歩いて、ベランダの手すりに片手をのせる。

 なんとなく、頭に巻いたタオルを取った。

 夜風で乾かすのもいいかな。


「…………あの空の黒いもの……でかくなってるな」

「え? ……はい、なんだか気味が悪いですよね」


 夜空を見上げたお父さんの言葉に、わたしも空を見上げる。

 満天の星と、まん丸のお月様の横で数ヶ月前から次第に存在感を増す黒点。

 せっかく綺麗な星空なのに……あいつのせいで台無しだ。

 あの黒点……昼も夜もそこに浮かび、日に日にはっきり見えるようになっている。

 不気味だ。

 なんなんだろう、あれ。


「お父さんはあれがなんなのか知っているんですか?」

「……半信半疑だったんだけどな」

「え、本当に知ってるんですか!?」


 でも半信半疑って?

 四季のない『ウィスティー・エア』も、あまり夜風に当たりすぎると体が冷える。

 ロフォーラは比較的西側だから、あったかいけど……。


「…………『原喰星スグラ』というそうだ」

「スグラ……」


 なんだろう、なんだか、嫌な感じの響き。

 お父さんの表情がますます緊張感で引き締まっていく。

 ……もしかして……まさか……。

 胸に手を当てる。

 今の、この生活が変わるのは、嫌だ。

 そりゃ、街道の一部は閉鎖が始まったところも出てきた。

 お客さんは今日もゼロ。

 宿としてはかなりよろしくない状況……でも、だからって……。


「ティナ、あのな……あの『原喰星スグラ』は、宇宙そらで巨大化していく魔物なんだそうだ」

「へ? ……宿の運営の話では!?」

「う、うん? い、いや、それじゃない。そっちは明日話し合おう。それも大事だからな。……そうじゃない、そうじゃなくて……『原喰星スグラ』だ」

「あ、は、はぁ。……宇宙で、って、宇宙!?」


 バッと勢いよく見上げる。

 あ、なるほど宇宙……。

 い、いやいや! 宇宙ァ!?

 そして、魔物ォ!?


「あ、あれ魔物なんですか!?」

「らしい。……俺も最近聞いたばかりで実感はなかったが……そいつの言う通り、日に日に……目に見えてデカくなる。五年後にはこの『ウィスティー・エア』を呑み込むほどデカくなるという話もあながち嘘じゃないのかもしれん」

「…………!? ……『ウィスティー・エア』を……の、呑み込む……? あ、あれが、ですか!?」


 も、もう一度宇宙を見上げる。

 た、確かに……ほんの数ヶ月で小さなお豆くらいのものは、おはじきくらいになっている、かも。

 大きくなるスピードは、速い。

 っで、でもでも待って、あれがもっと大きくなって、そして『ウィスティー・エア』を呑み込む?

 そんなこと、あるものなの!?

 あ、いや、お父さんも半信半疑って言ってたのはそういう……。


「『原喰星スグラ』は『ウィスティー・エア』を呑み込み、世界の生き物は全部魔物になって大地に溶けるそうだ。仮に宇宙にあるうちに破壊できても『原喰星スグラ』は魔物……そして、普通の魔物でもねぇから、破壊されれば『原始罰カグヤ』っつー『原始罪カスラ』よりもやばいものを落っことしてきやがるらしい」

「…………」

「それを回避するには……『原始星ステラ』しかないんだとよ」

「ス、『原始星ステラ』……って」


原始星ステラ』。

 かつてこの世界に居た聖女様が使えた奇跡の力。

 で、でも、『原始星ステラ』は……聖女様が亡くなったことで失われたって教わったわよ、ギャガさんに。

 シリウスさんは別の角度から人間大陸の異変を見て、改善する方法を探すべきって言ってたし……そんなあるかどうかもわからない力を頼るのは……。

 ……いや、そもそもわたしみたいな一般市民にそんな話をされましてもって感じだし?


「ええと、お父さん……なんでそんな話を?」


 わたしたちに関係ないんじゃないの?

 そりゃ、世界が食べられるとなると全く無関係ではいられないけど……。

 魔力薬の開発とか、イブの花の栽培くらいしか、わたしにできることなんてないわよ?

 次にギャガさんがきた時、頼んでおいた上級治療薬の材料が揃うから、注ぐ魔力を聖魔法に変換して錬成してみるつもり。

 もしかしたら、万能治療薬になるかもしれない!

 というわけでわたしはやりたいことが山のようにある。

 お父さん、まさか宿を休んで『原始星ステラ』を探しに行きたいとか言い出すんじゃ……。

 お父さんなら言いそう。


「……ああ、ティナ、あのな」

「は、はい」


 もしそうだとしたらどうしよう?

 世界のために旅立つというのなら、止められないわ。

 でも、さすがに一人で旅なんて無理だろう。

 今度シィダさんやアーロンさんたちがきた時に、お父さんを連れていってもらえないか聞いてみるという方向で調節してもらうしかないわ。

 あ、でもナコナも一緒に行くとか言い出しそう。

 そうなると宿の防衛面が……。


「お前が珠霊人なら……『原始星ステラ』を宿して扱うことができると言っていたやつがいる。……お前は、どう思う?」

「……………………」



 …………え?




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