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転生したら絶滅寸前の希少種族でした。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
第五章 〜十二歳のわたし〜

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十二歳のわたし第7話



 さて、アリシスさんと出会い、色々お話を聞いた翌日。

 わたしたちは『ロフォーラのやどり木』に帰るべく荷物と装備を整えて預けていた愛馬たちへ跨った。

 やっと帰れる。

 そう思うと安堵感が湧いてくるわね。

 ……それに……“帰れる”。

 少し前は一人で生きていくためにも、色々勉強しなきゃと思っていたけど……今はお父さんとナコナ、三人で暮らすのが当たり前になっているわね。

 そして、あの場所がわたしの『家』。

 不思議だけど、悪くない。


「じゃあな」

「はい! ……また、いつでも……と、言える状況ではありませんが……ひと段落つきましたらお伺いします!」

「……頑張れよ。でも必要な時以外の無理はするな?」

「は、はい!」


 わたしたちを見送りにきてくれたのは若き青の騎士団団長ギルディアスさん。

 アイスブルーの瞳とダークグレーで短く、逆立った髪。

 長いマントと青で縁取られた立派な鎧。

 ………………青の騎士団ってアイドル事務所かなにかなのかしら?

 見送りにきた騎士は皆、顔が整っていてキラキラオーラがハンパない。

 ま、眩しい……なによあの青春謳歌してる輝きの集団……!?


「お嬢、お手紙を書いてもいいでしょうか?」

「わ、私も!」

「え? うん? いいよ? 手紙書くの好きじゃないから返事は遅いかもしれないけど」

「「そ、それでもいいです!」」

「じゃあ僕はラブレター書きますね」

「「リステイン……!」」

「あはは! リスってば相変わらず軽いね〜!」


 ナ、ナコナ!

 このやり取りも何度見たのだろうか。

 し、進展がなさすぎる……!

 赤の騎士では唯一見送りにきてくれたベクターさん、絶対ナコナ目的だろうに……軽やかにスルーされててちょっと可哀想。


「もう帰るのか」

「リ、リコ! お、おう!」


 おおう!? リコさん!

 もしやお父さんを見送りに…………って感じじゃないなー……。

 鎧を着て完全防備に完全武装。

 あとなんか腕の『原始魔力銃エアー・ガン』が大きくゴツくなっていません?

 そういえばリスさんの腕の『原始魔力銃エアー・ガン』も形が変わっているような?


「ん? 出撃か?」

「ああ『ロスト・レガリア』から救援要請があってな。リス、お前は留守番だ」

「ええ? ……」

「?」


 ロストレガリア?

 王の権威の喪失?

 ……なんのことだろう?

 あ、留守番を言い渡されたリスさん不満げ。

 でも救援要請ってことは緊急そうね……。

 リコさんの部下らしき人が馬を連れてくる。

 青と黒の混色部隊。


「む? 青と黒だけか? 赤はどうした?」


 わたしも少し思ったことを、お父さんが口にする。

 教えてくれるのかな?

 なんか戦争のこととか、一般人には機密っていうイメージだけど……。


「ディールの葬式が終わったばかりだからな……喪に服す神殿を護衛するべく赤はそちらに人を回すそうだ。それと、現れたのは魔物だ。外壁の護衛に白だけでは心許ない。今の白はあまり実戦経験が多くないからな」

「お待ちください、リコリス団長! では私を赤の代表として同行させてください! 『ロスト・レガリア』の防衛に赤の騎士団から一人も行かぬとあっては……」


 と、名乗りを上げたのはベクターさん。

 しかし、リコさんは無表情のまま。

 その後ろから青の騎士が一人前に出る。


「残念だが赤は全隊『ダ・マール』の防衛に回ってくれとのお達しだ。耐えろ、ベクター。……そもそも君のところの団長がアヴィデの本家を怒らせたのが原因だろう?」

「うっ……」

「父には言っているんだがな……。リス、わかったな。頼むぞ」

「了解ですよ、義姉さん。とはいえ、僕よりもリコ義姉さんが話した方が義父さんの怒りも治るんじゃないですか?」

「私では丸め込まれてしまうんだ……」

「お、お前……」


 よくわからないけれど、お父さんが愕然とする。

 しゅん、と落ち込むリコさんを見るに……家庭の事情?

 リコさんのお父さんが関係してる、っぽいけど……。

 えーと、よくわからない。

 ナコナに助けを求めると、ナコナもしょげっとした表情。

 つまるところ?


「あー、リコさんのお父さんって前赤の騎士団団長でしょ?」

「う、うん」

「で、今の団長ってリコさんと結婚して今の地位を引き継いだのよ。でも離婚しちゃったじゃない」

「……う、うん……」


 ロンドレッドさん、だったかな。

 ナコナのお母さんと不倫略奪の結婚とかなんとか。

 ……あれ?

 リコさんのお父さんが要するに義理の息子に地位を譲った形よね?

 それなのに?

 リコさんと離婚して、よその騎士団副団長の嫁と再婚……となると?


「リコさんのお父さんブチ切れたんだよね」

「……そりゃあ、そうだよね」


 騎士なんて忠義で生きてるようなものでしょう?

 不貞の末に結婚、それも自分の娘を捨ててまで……。

 そりゃ切れるよ、ブチ切れるよ。

 誰もがシンプルに理解できるわよその構図。


「一昨日、案内してくれた白の騎士が言ってたじゃん? 赤と青でトラブルが続いてるって。どうやら赤の騎士団は全部隊が前線から『ダ・マール』防衛に回されているみたいなのよ。もちろんリコさんのお父さんの圧力でね。赤の騎士団はその八つ当たりで青とトラブルを起こしてるみたい」

「ぜ、前線に行かなくていいのはいいことじゃないの?」

「とんでもありません、騎士としては武勲を立てる機会を奪われるようなものです」


 と口を挟んできたのはガウェインさん。

 あ、そ、そういうもんなんですかー……。

 ……だからだろう、ベクターさんは拳を握り締め、俯いている。

 確かに頑張って訓練して、その成果を出す機会を奪われるのは悲しいかも。

 私の作ったお薬たちが日の目も見ることなく捨てられたと思うと悲しいわ。

 ……リコさんのお父さんの気持ちもよくわかるけど……それが末端騎士たちに対する仕打ちになってしまうのは、なんか違うんじゃ……。

 まして、元部下でしょう?

 なのにリコさんでは丸め込まれてしまう、と。

 リ、リコさーん……!


「ロンドレッド団長が退団されれば赤の騎士団も前線に戻ることができるだろう。もう少しの辛抱さ」

「は、はい……」


 先輩青の騎士さんがベクターさんの肩を叩く。

 ベクターさん、青の騎士団の人とも仲良しなのね。

 というか……。


「ロンドの奴そんなに追い詰められているのか?」

「まあな。最初のうちはディールが間に入っていたんだが、病で退団後は一気に……」

「…………気苦労ばかり背負いやがって……」

「というよりもうちの父の執念深さに呆れている。……私は気にしていないと言えば『俺を裏切った』といつも口にする。……もはや私怨だな。赤の騎士団には申し訳ない限りなのだが……赤の騎士団が温存されていると思うと前線で戦っている間はどこか安堵感さえある。なんとも言えんよ」

「まあ、確かにな。……ただ、赤は防衛には不慣れだからな……」

「なにより指揮官が育たない。個人的にはベクターは今回の遠征には連れて行きたいのだが……」

「バレると怒られますよ」


 と、副官的黒の騎士さんがリコさんに釘をさす。

 ……お、怒られる程度なの?

 罰とかじゃなく……?

 さすが黒の騎士団団長……?


「………………。……ギルディアス」

「はい!」


 お父さんが青の騎士団団長さんを呼ぶ。

 騎士団の団長さんが背筋を正して一般人のはずのお父さんへ返事をする不思議。

 でも、お父さんを真っ直ぐに見る瞳は信頼に満ちている。


「ディールは、ロンドの力を必要だと思っているから庇ってきたはずなんだ。戦況が変われば必ず赤の騎士団の力は必要になる。さっきも言った通り“必要じゃない時以外の無理はするな”。それと、“無茶をやらかすところ”は間違えるなよ」

「……! ……はい!」


 ……そ、その助言は大丈夫なのだろうか?

 お父さん、騎士団団長さんにすごい無茶振りしてません?

 でも、団長さんの後ろの騎士たちも真っ直ぐで真剣な眼差しで頷いている。

 お、お父さんのこの信頼の高さ……。

 戻ってきてくれと乞われるのは仕方ないのかな。

 こんなに信頼されてるんじゃ……。

 確かに……二年前魔物と戦うリコさんたちやシィダさんたちを指揮するお父さん、すごかったしな。

 全盛期のお父さんは剣士としても戦えていたらしい。

 ……あれよりもすごかったんだろう。


「さて、では出るぞ。……途中まで一緒に行こう。方向は同じだろう」

「そ、そうだな」


 …………しかし、リコさんにそう言われて一気に狼狽える姿にその面影はない。

 目が泳いで唇はなぜか上向き。

 顔からは謎の汗が噴き出し、挙動は不審だ。


「……………………」


 わたし、前世でも彼氏とかいたことないけど……恋ってこんなに人をダメにするものだったかしら?


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