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その七
暑かった夏が過ぎ、少し肌寒くなってきた頃、今度は冬物を買いに、一緒に出かけた。もう当たり前のように、二人で手を繋ぎながら歩いていた。
「こうやって、また服買いにいくと、あの時を思い出すね。」
「私が来た日?」
「そうそう。パジャマ代わりに俺の服着てたりとか。」
「意外とぶかぶかで、歩きづらいんだよ?英治の服着ると…」
「そうだったんだ、初めて知った。で、パジャマ買ったら藍がはしゃいでた。」
「だ、だって英治と一緒に決めたから、嬉しくて…そういえば、呼び捨てにしたのもあの時からだったね。」
「そうだね。もう二ヶ月くらいが過ぎたんだ…」
俺は会社で働いて、藍が家事全般をやる、というのが当たり前の日々が続いていた。俺は前よりも仕事を熱心にやるようになり、昇進も夢じゃないと、上司に言われた。藍は料理の腕前が格段に上がり、毎日美味しい料理を作ってくれている。
「ありがとね、藍…」
「き、急にどうしたの、英治…」
「ううん、なんでもない。さ、いこ。」
俺は秋の寒さを感じながら、手から伝わる温もりを実感しながら歩いた。