その一
ピンポーン…
部屋にインターフォンの音が響いた。
「はーい」
俺は扉についたチェーンとカギを外した。外には、小柄で、雪のような白い肌の女の子が立っていた。
「永田 英治さん、ですか?」
「はい、そうですけど…!?」
言い終わる前に女の子は俺に抱きついてきた。
「やっと会えた…」
女の子は俺に抱きついたまま、急に泣き出した。
「落ち着いた?」
「はい、すみません…」
俺はとりあえず、女の子にココアを飲ませた。
「なんだか不思議な飲み物ですね」
「ココアって言う飲み物だよ、知らない?」
俺が尋ねると女の子は首を横に振った。
「で、俺になんか用があってきたの?やっと会えた、って言ってたけど…」
「もう、覚えて無いですよね、十年以上昔ですから…」
女の子はココアを飲みながら、一枚の写真を取り出した。そこには小さい頃の俺と両親、そしてその女の子と思われる子が写っていた。
「んー、全然思い出せない…」
「そう、ですよね…」
女の子はココアを静かに置くと、また泣きはじめた。
「ご、ごめん…きっと、君と何か約束したんだよね?だから探してここまで来たんでしょ?」
写真に写っているのは実家の近くの畑だった場所で、今は仕事で都内に近い場所に住んでいるため、実家からはかなり離れている。
「どんな約束か、覚えて無いですよね?」
「う、うん、ごめん…」
「いつか、連れ出してやる、そういう約束です…」
女の子が約束のことを話しても、全然思い出せないままだった。