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第43話「異世界11日目 」

 バニティーとはこれで契約は終了した。

 短い間ではあったがずいぶんと世話になった。

 出会いは一期一会とは言うが、この一件で赤の他人に戻るという事はないと思いたい。


「首都まで無事に来られたのはアマトがおかげだ。感謝するが」


「こっちこそ、世話になった。バニティーに会っていないければそもそも首都に来ることなんてできはしなかったはずだ」


「これで別れるだが、近々また会う気がするが」


「まあ、俺達もやることを済ませるまでは首都に滞在しているわけだから、会う事もあるだろう。その時はよろしく頼む」


「んだ」


 バニティーはそのまま部屋を後にした。


 首都でなければ成せないことがあれば刻が来る前にこなさなければならない。

 それがいつなのか具体的なめどは立たないが、計画は立てておかなければ終わりなど見えはしない。

 そして、その期限は宿を去る日。


「まずはルナの服を買う。これは最優先事項だ……。では行くぞ」


「行くにゃりよー!」


「ダーリンはなんでそんなに、服にこだわるのかわからないよ」


「そのうちわかるようになるさ。今は、理由なんてどうでも良い。そういうものだ」


「説明するの面倒になったのかな?」


「私から説明しても聞いて下さらないのよね」


「ミャーは今着ている服は着てても来てなくても変わらないから、割と気に入ってるにゃ」


「それはそれでどうかと思うけどな……」


 スペラの服も際どい。

 だからこそ、スペラも服を着ていてくれている。

 出会った頃も服は着ていたのだが、申し訳程度に着ているものだから服の機能が芳しくなかった。


 それが今では、様になっている。

 多少布面積が少ないからと言って別段騒ぎ立てることもないはずだ。

 好奇な視線を浴びることが無いかと言えばそうでもないのだが、致し方が無い。


 有というのは総じて何らかの影響をもたらすものなのだから。


 荷物を部屋に置いたまま外出するには些か抵抗があったが、食料や嵩張る衣類などは部屋に置いておくことにする。

 要するに無くなっても被害は最小限で済む者だけ残す形として、機動力を上げるためだ。

 流石に両手に大荷物を持ったまま街中を散策することなど出来はしない。


 それに買い物をすれば持って帰ってこなければならないのだから、最初からストレージを消費したくはない。

 宿のセキュリティは話を聞く限りでは万全という事なので、信じておいても問題はないだろう。

 少なくとも俺達を謀ることへのリスクは解らないとも考えられない。

 

「ベッドメイキングをいたしますがお客様のお荷物の扱いには最善の注意を払わせていただきますので、ご安心くださいませ」


「気にはしていない」


「いってらっしゃいませ」


 宿から出た俺達は声を失った。


 昨夜は武装した警備の者以外は一切出歩くものはいなかった街に、埋め尽くさんとする程の人、人、人。

 そこには賑わいに沸く光景が広がっていた。

 ここまでの人口密度は、元の世界でもそうはない。


「ニャー、なんか酔いそうにゃ」


「わからんでもないな。俺だって都会に住んでいたつもりではあるが、ここまでの人混みは見た事が無い」


「車もないし、乗り物の類は見当たらないかな」


「ただ人がいるってだけで飽きないね。これだけいろいろな人がいれば新しい出会いがあっても不思議じゃないよね。ダーリンならピンポイントに当りをひけるよ」


「その根拠は?」


「ダーリンが出会った人が運命の人になるってこと。どうかな?


「質問を質問で返すなよ。俺が白と言えば白になるなんて自惚れていたつもりはないんだが……。まあ、実際に良くも悪くもルナとこうして話している以上否定も出来ないってことか」


「そういう事」


 

「悪くともって言ったんだが?」


「そういうところが面白いんだよね」


「態としているなら、まだしも無意識に言うんだからアマトは、やっぱり子供だと思う」


「わかってるさ。結局いつまでたっても俺はたかが知れている」


 人間の内なる感情なんてものは誰も見通すことは出来ないはずだった。

 それを確定させる要因は外面に現れて初めて成立する。

 また、それを指摘する人間も第三者に他ならない。



 これだけ人が多いとゆっくりと品定めなんてできはしない。

 そう思っていたが、よくよく辺りを見渡してみれば店が賑わっているわけではないようだ。

 それもそのはずで、皆が建物に入っていかないから街が人であふれているのだ。


 飲食店の数も少なく、建物のほとんどすべてが住居であったり直接物の売買をする類の建物ではない。

 先進国によくみられる構造になっている。

 観光客のような装いの人間もいない。


「とりあえず、大通りに沿って歩いて行こうか」


「昨日は夜も遅かったから、御店が閉まっていたと思ったんだけど違ったみたいね」


「ここまで変わるとは思ってもいなかったわ。私が数百年前に来たときと建物も、人も全てが別の者に置き換わったみたい」


「流石に百年も経てばな。変わらないのは……。人?」


「昔は人間だけの閉鎖的な街でした。それが、多種多様な種族が当たり前のように見えます。統治者が変わったのかしら」


 どうも読めない。

 今まで、種族に関しては特に気にしていなかった。

 召喚されてすぐ出会ったのもエルフだった。



「世代交代をすれば考えも変わるとは……」


 自信が持てない。

 自分が行ったことに責任が持てないとはこのことである。

 明らかにおかしなことを口走っていたのだから。


「その通りです。元々の系譜を辿ってはいないと思います。仮に稀有な才能の持ち主であっても、街をそっくりそのまま創りかえるなんてことができるでしょうか」


「私達の世界の人が関わってるんじゃないかな。それなら、今までの村や町よりも最先端な街並みでもおかしくない気がする……」


 ユイナは同郷の者がこの世界の一端を創りかえたという事に誇りや高揚感なんてものは感じていない。

 表情は俺でなくても感じ取れる不安が色濃く出ている。

 ならば、これ以上は言うまい。


 それにしても飲食店が少ない。

 朝食を済ませていなかったら食事にありつけていなかった。

 数少ない食事処は全てクローズしている。


 例外はない。

 しかしながら、他の店はひらいている。

 勿論人の出入りがあり、流行っているのはいるのは言うまでもない。

 

 軽食が恋しいが絹で出来た小物を喰らう気にはならない。

 見渡す限り、建物、建物、建物。

 それでも、直接旅人が携わる事になるのは僅かな売買に因んだ商業施設のみ。


 文明がここにはあるのだ。

 文字もある。

 ところどころに異世界の名残が見受けられるが、何を意味する。


 少なからず俺の知る文化が根付いている事と、その文化を受け入れた者達がここに住まう。

 言語というものは簡単であり難しくもある。

 基本言語は環境によって左右されるというのだから、こればかりは個人レベルで覆すことは出来はしない。


 生まれた国が複数の言語であふれていれば、幼いうちから多言語の取得も容易になる。

 反対に、一切言語に触れる機会が無ければ生涯言葉を知らずに一生を終えることすらある。

 一朝一夕でこの環境が実現できたというのならばその手腕はいかほどのものか。


「私達と同じ世界の人がいるよね。絶対に……」


「疑う余地はないな。俺たちの敵にならなければ問題はないが、そうでなかったらどうすればいい?」


 一国を敵に回すというには非力すぎる戦力である。

 国家戦力に勝るのは国家戦力だけだと言われている。

 それも元の世界での話であり、今まで出会ってきた者達ならば一人でこの国どころか世界さえ滅ぼしかねない。


 しかしながら、それが成せなかったのはこの世界にもそれを指せない抑止力があるからだ。

 拮抗しているわけではない。

 この不安定なバランスなんてものは誰もが容易に崩すことができる。


「アーニャなら何でもできるにゃ。やっつけてしまえばいいにゃ」


「あながち間違ってるとも言えんが、国盗り合戦がしたいわけじゃない。無駄な戦闘は避けられるなら避けるに越したことはないだろ? 無論、妙なことはしてくれるなよ」


「みゃみゃみゃ!! ミャーは何もしないにゃりよ!」


「みんな……悪いが目を離さないように見ていてくれ」


「なんだか、私も自信が無くなります。気がついたらいなくなるんですもの」


 ディアナの視線はルナへ向く。


「ボクに振らないでよ!! 僕だって……違うよ!!」


「何が違うって……。頼むからおとなしくしててくれよ」


 

 それにしても、太陽が高い時間帯に食事ができるところが見つからないとは思ってもみなかった。

 青果、魚、肉を販売する店こそあるが加工はされているが調理はされていない。

 当分は食事に困ることが無いが後の事を考えれば状況は確認しておきたい。

 ならば手近な人間に聞けばいい、答えてくれるかは定かではないが。


「食事ができるところを知っていたら教えてほしいんだが」


「外から来たんだね。この時間は飲食店は全部しまってるはずさね。見つかったら捕まって店も営業できなくなるさね。朝は7時から10時まで、夜は5時から8時までしか営業はできないさね」


「食事処だけがわりを食ってるってことでもなさそうだな」


「そうさね。私らは昼前10時から夕方5時の間だけ営業が許されているさね。そのおかげで助かってるんさね」


「ん? それだと同業種では生産性が……」


「おかしなことを言うさね。見てごらんなさいな」


 この青果店のような店は思いのほか多いのに対してレストランの類は少ない。見渡す限り一件だけ。

 それも外観もさることながらその前の床のタイルすらピカピカに磨かれ、行きゆく者達を映し出していた。

 だからこそ、埋め尽くさんばかりの建物から見つけ出すことができたのだ。


「なるほどな。いろいろ教えてくれてありがとう。その林檎を貰おう」


「毎度あり。あーそれと、大丈夫だとは思うけど路上で食べては駄目さね。見つかったら罰金さね」


「おっと、知らなかった。俺も知らなければ食べていた」


「悪いことは言わない、早いうちに役所へ行った方がいいさね」


「忠告痛み入る」


 この街に塵一つないのは徹底した管理によってもたらされている。

 飲食店は中でも害虫、害獣の発生源となる以上国の管理下にあるとみていいだろう。

 営業できる時間さえ国が決めてしまうのだ。


 しかし、働く人間に不満はないのは見ていればわかる。

 限られた時間内でどれだけ生産性を高められるかは本人次第。

 それでいて、働き過ぎて過労死する何ても事もないリミットを定めている。


 隙が無い。

 過労死根絶のために、労働時間を減らし、休日を増やすことに躍起になっていた元の世界と似ている。 



 24時間休まることが無い勇者なんて職業は真っ黒な仕事だと言わざる負えない。

 幸いにもなんとも言えずとも世の中は悪い方向へ行きはしない。

 不条理を嘆いている人間を見かけないのがその証拠である。


「夕方の食事も宿に戻れば食べられる以上悩まずに済む。装備を整えに行くぞ。閉店してしまえば予定も狂う」


「これだけ人が多いと酔っていしまいますね」


「私も久々だからかな、疲れたってわけじゃないんだけど、なんだかね」


「言いたいことはわかるさ。俺達は元の世界よりも格段に身体能力が高くなって処理できる情報量も多くなった……。一度に数万の個性が目の前を闊歩してると思えば疲れもする。ここではどうかわからないが人間は一度見た物は二度と忘れないっていうしな」


「どういう意味にゃ?」


「今までに見た事も聞いたことも無いような光景を夢見たことはないか? 今言っているのは寝ている時ってことだぞ。偏に一瞬でも瞳に映った光景を脳が記憶し、かすかに聞こえた音、僅かな匂いまでも脳は忘れはしない。それが心という脳に記憶されていない不確かなものの影響で未知の世界を夢として見るんだそうだ」


「うーん。今までのことを全部覚えている事なんてできないにゃぁ」


「思いだせていないだけだ。忘れたころに突然思い出す事はないか? 記憶が完全に消えてしまっているなら思い出すことは出来ないってことだ。まあ、衝撃で思い出すかもしれないが……試してみるか……」


「アーニャは酷いにゃ」


「まあ、スペラに思い出してほしい事なんてないから心配しなくていいがな」


「あんまり、スペラをいじめてると足を掬われるかもね」


「それはそれでありかもな。ルナに言わせてみれば退屈しのぎにはなるだろ」


「ボクを引き合いに出してくれることは嬉しいところだけど、スペラに意表を突かれるダーリン何て見たくないんだけど!!」


 ルナに耳もとで囁かれてから抱き寄せられる。

 もう、限界だ。

 早く服を買いに行かないと。


「お、おう」


 どうも、おもしろがっているのがみてとれる。

 仕方がないとはいえこのままってわけにはいかない。

 そこまで思ってもなにかができるわけではない。


「ねえ、あの娘の服可愛いよね。ここはお洒落に気を遣ってる娘も多いし、期待できそうかな」


「確かに……って別にみとれていたわけではないぞ!!」


「そんなに否定しなくてもわかってるけど。ルナの方が可愛いって思っただけだよね」


「んな!!」


 言葉にならない。

 確かにコーディネートが光る人は多い。

 だからといって、それ以上の感情は特に抱くことはなかった。


「ダーリンがそんな目でボクを見てたなんて……知ってた」


「俺は知らない」


 ルナは最早どうでもよくなったのか、周囲に目が泳ぐ。

 熱くなりやすくて、そして冷めやすい。

 感情豊かなのは人間を直に感じているからだろう。


 

「とりあえず、隣いこうか」


「私が選んであげる。可愛い系? クール系?」


「なあんでもいいよ。着れればぁ。……可愛いのがいい」


「ミャーの服は動きやすくていいにゃ。真似していいにゃ」


「スペラだけでいいっての」


「戦闘の事も考えたらスペラちゃんの服が一番実戦向きとも言えますね」


 俺の服も元の世界では明らかに違和感がある。

 少なくとも日常生活で着る類ではない。

 実用的かどうかではないという事だ。


 服飾関係の店は店の比率で言えばかなり多い。

 量産体制が整っているわけではないらしく、一品ものがほとんどであった。

 籠に無造作に入れられた、穴が開いていたり明らかに素人が縫ったであろうものは格安でウあられていた。

 

 これらはプロと呼ぶには些か技術が足りていないものの作品であろう。

 捨てることもなく格安とはいえ販売されている事に意味がある。

 あまりにひどいものは半ば服というより布切れとしか言えないが、やはり使われる人の元へ行く仕組みとなっている事に意味があるのだ。


「見た感じだと品質によって値段が違うようだが、どれも綺麗だな。買い取りはしていないのか?」


「首都で店での買取は出来ませんよ。勿論、お客様同士での売買も処罰の対象になるので木を付けてください」


「なるほどな。それで、不良が出ても無駄にしないで済むわけか」


「昔は、だれでも自由に売買ができたみたいですよ。今の王に代わってから憲法が変わったって聞いていています。結果的には自由に売買ができたころに比べて治安が良くなりました」


「だろうな」


 店主と話しているとルナは不思議そうにしている。

 自由といえば聞こえは良いが、誰かの自由は誰かの自由を妨げる。

 皆、同じ方向に進んでいればぶつかることはないが、好き勝手動いていればぶつかることもあるってことなのだが、如何せん自由を謳えば必ずといっていいほどこの問題に直面する。


「何がいけないのか、理解できないよ」


「例えば、ここで底の服を買う。いらなくなったらユイナに売ったとしようか。服自体は着ているうちに痛んでもくるだろう。痛んだ分を差し引いて少し値引いて売ることもある。さらにユイナはディアナへ、ルナへ、スペラへと回していく。結論を行ってしまえば誰も得をしないだ」


「最後に買った人は一番安く買えて得したんじゃないの? ここのお店が一番高い金額で買ってもらえたんだし、何も間違ってないと思うけど」


「店がつぶれるぞ!? 本来なら、人数分服が売れていなければいけないんだ。そうなると店側も慈善事業ではないのだから、値段を人数分まで上げたり痛みやすい服を売って回転率を上げたり、フリーサイズではなくオーダーメイドで縫ったり、複数の人間が着れないようにしたりするわけだ」


「そんなことしたら、売れなくと思うけどね」


「確かに消費者からすればデメリットしかない。俺の故郷では制作者の権利を守るためにと言って国だったり、生産者があらゆる互換性を無くしていったよ」


 

 誰もが得をするなんてことはあってはならないとする考え方はいつの時代でも存在する。

 第一次産業を生業とするものならば生産しすぎた値崩れを防ぐために廃棄する。

 貧困に苦しみ、食べ物にありつけない者がいたとしても無償で分け与えてはいけない。


 それがまかり通ってしまえば生産者は物が売れなくなり、生活が成り立たなくなる為である。

 本来であれば、生産したものを全て供給することができる仕組みがあってしかりなのだがそれは不可能であることは歴史が証明している。

 最新技術で作りだしたものでさえ、利便性よりも個々の利益を優先して生産者を守っている。


 この世界には個人の権利を守る法律もあるようだが、何よりも利便性を取っているように見えるのは明らかだ。

 安く物を買えることで消費者は得をする。

 生産者もごみを出さないで済むのだから、国としても無駄な税金の使い道を無くすことができる。


 購入先が一本化されていることで消費者同士のトラブルはない。

 何よりも驚いたのが刑罰が重いことにある。

 軽犯罪であっても聞いた話では罰金、禁固刑どれも軽くはない。


 犯罪を犯す事へのリスクが高すぎて割に合わない。

 それを理解していればとてもではないが手を出さない。

 だからこそ、買い物の際に説明責任を店主は負う。


  

 ここまで徹底して法律を守らせるのだから、法治国家としては優れているのは疑いようもない。

 本来ならば人の見ていないところであれば、些細な事であれば見逃されると思いもするだろう。

 ところだがそれを誰も良しとしていない。


 だからこそ、路地裏であっても清潔感がありごみ一つ落ちていない。

 単に、飲食店の類が無いのだからゴミや害虫の発生ポイントが無いだけなのかもしれない。

 それでも外から来た人間が嫌悪する場面に未だに遭遇はしていない。

 

 

 幸いにもどれも手持ちの資金で購入可能である。

 生地を触った感覚は普段着としてはもうしぶない。

 戦闘に耐えることは言うまでもない。


「これなんていいんじゃないかな。ルナのイメージとのギャップがあって新鮮な感じがするかな」


「ボクもこれなら面倒じゃなくていいと思うよ」


「狙ってたな」


「拘りが無い人ほど選ぶのに時間がかかるもの。ユイナちゃんはうまく誘導してたようね」


「ならば、これをいただこう」


 店員に代金を支払い、ユイナに支払いを済ませた旨を伝える。

 ルナはその場でコートをスペラに渡すと、ユイナは白いワンピースを着せる。

 白いワンピースは本来のルナの容姿にはこれ以上ない程良く似合う


 悪魔であるルナは不定形。

 過去の文献が示す通り、人によってみえかたが異なっていた。

 そこに例外はない。


 だが、今は誰が彼女を見てもそこには可憐な少女にみえていた。

 他の何ものにもない。

 確立された存在となっていた。


 それでも、ルナはもういない。


「みんなも気に入ったら、買おうか。今まで戦ってばかりだったから気にしていなかったが、滞在するのが街なら溶け込むことも必要だからな」


「もう慣れたから当たり前になってたけど、ここじゃ浮いてる気がするかな。珍しい恰好って感じじゃないけど、目立つのは間違いないしね」


「アマトさんの言う通りですね。トラブルに巻き込まれない為にも装いには気を付けておいた方がいいですね」


「今更なんだが、ルナにも戦闘用の防具は必用になるな。ディアナの服はどちらでもこなせる類のものなのは見てれば分かるんだが……」


 服は一張羅というわけにはいかない。

 だからと言って荷物になるのだから数着で回さなければならないのだが、それは仕方がない。

 命にかかわる以上文句のつけようはない。


 結局、ルナを含めた全員が街で溶け込むためにという名目で服を購入することになった。

 余所行きの装いで戦闘を行う事の無いようにしたい。

 強度に関してはディアナに強化の術式を組み込んでもらうとしても、もともとが絹やコットン、シルクどれも、モンスターの攻撃に耐えられはしない。


 試してみなければわからないと言われるだろうが、悲しいかな俺の目には数字となって強度が見えている。

 数字というものがどの程度信用できるかはわかりはしないが、比較は容易で身構える必要も無い。

 そういうものだ。

 

 こうして、手にしてみると元の世界と変わり映えはない。

 全員が買った服に着替えてみると、まさか得体のしれない化物と死闘を繰り広げていたとは思えないだろう。

 だからと言って追ってきているであろう連中の目を欺けるとはだれも思ってはいない。


 この街に侵入できることを前提に行動していれば対処のしようもある。

 それよりも、いざ一線を交えることになった後の事だ。

 今の様に順調に事を進めることは出来なくなる。


 どれだけこちらが優れていても、目撃者が一人でも出てしまえばもう後戻りはない。

 人というものは情報の生き物だ。

 まして、この世界では何が有るかわかりはしない。


「思いのほか、来ていた装備は嵩張るな……。一旦宿に戻って荷物を置いてくるしかないな」


「そうね。でも、なんとなくなんだけどもの足りなさを感じるような……」


「俺も同じことを感じていた。短い間にここまで馴染むんだな」


 元の世界でも、衣服、靴、鞄に限らず使い込むことで使う者に馴染んでいくという。

 特に革製品はそれが如実に現れる。

 靴であれば履いていた人の足の形に徐々に変わることで、他の誰の者でもない持ち主の一部となる。

 

 身体の一部になるという事は失った時に喪失感があってもおかしくはない。

 寧ろ、影響がない方が不自然であるが。

 まだ数日と経っていないはずの装備にここまでの喪失感が伴うとは思っていなかった。


 何かに執着するという事は呪いと同義であると言われてきた。

 解呪に犠牲を強いてきたように、例えそれが愛着であっても手放した時に心身に影響をもたらすのであれば最初から関わるべきではないのだろう。

 幾度となく命を救われてきた鎧は、その都度主の血を吸ってきた。

 

 総接種量は人の血液を遥かに超えているはずだ。

 本来であれば、再び手を伸ばすところではある。

 しかし、不思議と依存していたはずの感覚が緩やかに消えていく。


 まるで、あえて俺を引き離すかのような不思議な感覚。

 それは遠慮と言えばいいのだろうか。

 互いに信頼しているからこそ、離れていても通じ合える。


 革は生き物で経年変化を楽しむものだというが、そこに意思が加わればどうなる。

 俺が必要とするように、鎧も俺を必要としている。

 ならば、一時離れたとしても次には万全の状態で戦に赴けるというものであろう。


 店から出て宿に戻る俺達を見計らってのことだとだろう。

 これだけの荷物を抱えたカモでもやってきたのだから、後ろから襲えばなどとおもわなかったのだろうか。

 他にも買い物客は五万といるだろうに。


「ちょっと!! お兄さんたちってば!! 両手を広げて待ち構える美少女が無言で立ちふさがってるんだから、無視はないと思う……うん!! あたし、間違ってない!!」


「うわ……、これは駄目な奴だ……。関わるな、行くぞ」


「逃がさないんだから!!」


 俺達はその場から一歩も動けない。

 まるでこのスペラよりも一回り小柄な少女に釘づけにされたようだ。

 魅了されているわけではない。


 ただただ、逃げる意思がこの場に置き去りにされた。

 異常は伝播する。

 買い物客も店から離れようとしたはずの幾人かも動く意志がくじかれている。


 何が起こっている。



「何をした」


「あたしがお兄さんたちに用があるから、少し時間をもらってるだけ。それだけだけどね………?」


「俺達ねぇ……。明らかに俺達とは無関係な人も巻き込んでると思うんだが? 彼らにも用があるっていうならそれでもいいが……そうではないよな」


 視線を周囲に流して見せる。

 それをみても動じる和kでもなく、仁王立ちした少女は真っ直ぐ俺の瞳の奥を見据えている。

 何かを探っている風ではなく、訴えかけるように。


「お兄さんがあたしに協力してくれるなら、あの人たちも早くおうちにかえれるよ。さあ、つべこべ言わずにあたしに協力しなさいな。そう、おかしなことはいってないでしょ?」


「突っ込んだら負けか……」


「でしょ」


 したり顔の少女は俺の言葉を肯定ととらえたのだろう、ただただ誇らしげである。

 子供のいう事なんてと一蹴出来ない状況なのは間違いないのだが、だからと言って焦る必要もない。

 この街に来たら何かしら起きることは予想していた。


 予想に反して、目の前にはブロンズ色の女の子が立ちふさがっているがそれがここまで面倒なことになっていくとは思わなかった。

 スペラよりも一回りも小柄だというのに、尊大で傲慢で自分を中心に回っていると言わんばかりの物言いにただただあっけにとられてしまう。

 黙っていれば可愛いのにといわれる典型的な例だろう。

 

 注目を集めるには十分な容姿だというのに何がここまで彼女を駆り立てるのだろうか。

 この状況は彼女にとっても最悪な環境であると言っても過言ではないというのにだ。

 それでも、一歩も動かず動かさせず微動だにしない。


「騒ぎを起こすと不味いのはお前の方なんじゃないのか? 」


「何を言っているの!? 簡単な事でしょ、あたしに協力するの!! もうー!! なんでわからないかなぁ!! むきーー」


「うるさすぎるだろ……」


「このままじゃ埒があきませんね」


「にゃはは、勝手に騒いでるにゃ。面白いにゃ」


「アマト……、なんだか可哀想になってきたかな」


「悪意は感じないんだよね。案外、構ってあげた方が面白くなる気もするけど、ダーリンどうする?」


 次第に憐みの目が少女に集中する。

 それは道行く者達に伝播していく。

 なんとも言えない空気に、傲慢な少女もいきばのない感情が爆発寸前になる。


「はぁ、とりあえず場所を変えたいんだが?」


「やっとあたしに協力する気になったみたいね。はじめから素直になればいいんだから」


 ブロンズ色の髪を靡かせ、少女は大げさにかかとを鳴らす。

 それが意味するところを、動き出した人波をもって是とした。

 


 今まで身動き一つできずにいたというのに、誰も騒ぎ立てることなく何もなかったかのように、見て見ぬふりをするように、今しがた起きた事など忘れてしまったかのようにただただ日常に戻っていく。

 騒ぎを聞きつけて巡回兵がやって来るかと思いきや、それもない。

 ますます、雲行きが怪しくおかしくなってくる。


「不思議だニャ!?」


「言わずもながな……。この時間だと落ち着いて話ができる場所もないか、どうする?」

 

 宿のロビーであれば話をするには適しているが、泊まっている場所を知られてしまう。

 もうすでにこうして顔を合わせた以上、そこは問題ではないのはわかっているつもりだが納得いくことはない。

 このままうやむやにできる雰囲気でもないのだから、連れて行ってしまってもよいか。


「いいんじゃないかな。口ぶりからして反対方向に歩いて行っても見つかりそうだけど……。それに……」


「お姉さんは気がついたみたいね。それに比べて、お兄さんは察しが悪いなぁ」


「……」


「たぶんあってるよ」


「この子、ドワーフには見えないけど……」


「半分はあいつの血が流れてるかと思うと血を全部抜いて干からびて死んだ方がましだって思う。本当にね。それに、そこの悪魔のお姉さんの奇怪な武器だけど、見ただけでわかった!! あいつ殺さなきゃって!!」


 感情をむき出しにする少女は涙で眼を腫らして、膝から崩れ落ちた。



 この世界はいったいどうなっているんだって思う。

 次から次に厄介事が湯水のように湧いてきて、しまいには先日まで短いとはいえこの街まで道中を共にした者を殺すだ。

 それても俺のしたことが間違ったのか。


「おい、大丈夫か!?」


 とりあえず、目の前で俯き膝をついている少女へとを差し出す。

 それを待っていたかのように、勢いよく腕をひかれる。

 よろめき少女を押し倒す形となっていたはずだ。


 だが、俺の事なんてまるで空気の入った風船でも受け止めるように軽軽片腕で止めてしまう。

 無論、俺は風船ではないので少女の細腕で支えようとすればその流れから鳩尾にめり込んでしまうのはわかりきっていたはずだ。

 痛い。


「うぐっ!!」


「優しいんだ!? だから、お兄さんは間違えた」


「……ッ」


 耳もとで幼女が囁く。

 それは俺の耳を通り越して、胸に突き刺さった。

 俺は、彼は、人は、間違えた。

 


「責任をとってもいいんじゃないの!? お兄さん!聞いてる、ねっ!? 聞いてますかー!?」


「聞こえている……」


「それで、どこに連れていってくれるの? 流石のあたしでも、これ以上ここにいたら面倒なことになることぐらいわかるから」


「ここまで来たら引けないよね」


「後戻りはできない。それでも、俺にできるのか……」


 ほんの数時間でもと来た道を戻ることになるなんて想定していなかった。

 勿論、着てきた装備を片手に戻るとも思っていなかった。

 本来なら想定して然るべきことだったのだが、実際に装備は鞄にしまえずとてもではないがこのまま街を探索なんて出来はしなかった。


 そこにまさかのバニティーの娘ときた。

 鉢合わせだけは避けたいところではあるが、あえて元の宿に戻る選択をしたのはその不幸を避けるためでもあった。

 バニティーにも目的があったのだから、そのままとどまっているとは考えにくい。

 ならばと、招き入れた。



 あれからそれほど時間も経っていないというのに、ロビーは賑わいを見せていた。

 恐らく滞在客なのだろう、みな軽装で両手があいているところから見て取れる。

 談笑スペースは過分にあると思っていたが、最早余裕はない。


 ソファーの類も全て埋まってしまっている。

 仮に座れてもとても話せる内容ではない。

 このままここで人が捌けるのを待つにしても、時間は有限である以上ほかにもっといい方法はいくらでもある。


 無関係な人間を部屋に招くことが出来ないのだから、本来であれば場所を変えるしかない。

 だが、この時間帯飲食店はどこも閉まっているし人が立ち入らない場所なんてものはそうそう見つからない。

 まして、昨日今日首都へ来たばかりの人間には至難の業だ。


 俺は受付知人を招きたい旨を伝えた。

 特例は認められないという事ではあったが、宿泊客としてならば問題ないというので頭を抱える事になる。

 名前すら知らない少女を部屋に泊めるというのだ。


 まともな人間なら異常事態であることは疑いようもない。

 パーティーメンバーは俺を除けば全員女性というのも気まずい。

 それでも、ここまで来たら一人増えようと二人増えようと全く気にならなくなっている。


 そして、何よりも驚くことになったのは意外にも宿泊費出会った。

 期限付きとはいえ、無料で滞在が可能だったためにそのまま長期滞在は考えていなかった。

 それが、宿泊プランを見て声にならなかった。


 最上階はその特性上、滞在費だけで一泊金貨10枚だという。

 金貨の重さはせいぜい重くて10グラム程度というのにそれが10枚だというのだ。

 今回は期間内であるがために費用はかからないという。


 ただし、正式に宿泊客として登録しなくてはならないというのだ。

 俺達からすれば厄介な事この上なく、本人の了承も得ていない。

 どこからどう見ても邪な目的で連れ込んだようにしか見えない状況になってしまっている。


「アーニャ、何かあったらミャーが護るから任せておくにゃ」


「仕方がないんじゃないかな。こうしてる間にもやらくちゃいけないことは待ってはくれないんだから。それにまだどうしてあんな事を言ったのかはわからないんだよ。いまからでも説得して考え直してもらう事も出来るかもしれないし……。それに、ここまで言わせるバニティー―に問題が無いなんてことはないんじゃないかな」


「俺もそこは払拭できていない。命を救われた恩があるから、無意識のうちに善人の太鼓判を押していたんだと思えば感がを改めることもあるかもしれないしな。最初から信じていたところにこんな話を聞けばどちらを信じるかは明白だろ。しかしだ。状況は変わる」


「万が一の時は私達がとるべき行動は一つだからね。安心していいよ。伊達にアマト以上にこの世界で生きてきたわけじゃないんだから」


「せいぜい数日の俺と、生まれてからこれまでこの世界で生きてきたユイナ……みんな。頼りにさせてもらうさ」


 責任転嫁の言葉。

 所詮、人を容易に傷つける事の出来ない人間の戯言。

 だが誰一人として、俺を責めることはしないし心配すらしてくれる。


「とりあえず、君には手続きをしてもらう。俺たちの泊まってる部屋でゆっくり話を聞こうじゃないか。場合によっては協力する……その用意はある」


「このクラスに泊まれる人はそうはいないってことくらい、あたしだって知ってる。もう、わかってるんじゃないの? 長い付き合いになるってね」


 どうも、素直に喜べないのはこの少女が抱える問題の大きさゆえのものではないだろうか。

 それをこれから確かめる事になる。



 登録を済ませてしまえば、部屋に入ることができる。

 本当にこんなに簡単で大丈夫なのかと確認をしたが、誰でもいいわけではないようだ。

 わかりきっていたが、俺達は特別扱いされている。


 ここにいる宿泊者にも間者はまぎれている事だろう。

 それでも、部屋には一切の侵入が許されていないというのだからセキュリティの高さは相当なものだ。

 無論、もともと備わっていたものもすべて信用何てしてはいない。


 ディアナに結界を任せ、誰かが踏み入ったかどうかは簡単な仕掛けをして予防線は張らせてもらっている。

 子供でも思いつくような簡素な仕掛けであるほど案外大人の目には映らないものだ。

 とどのつまりドアに糸くずを挟んだだけである。


 ベッドメイキングに関しては誰かの立ち会い無くして行う事が無いように念を押していた。

 質の高いサービスを受けられるのだから任せてしまえばいいものを、敢えて立ち会うことにしたのも情報交換を行う為である。

 情報を集めるためにはただやみくもに走り回ればいいわけではない。


 時間は皆等しく、不平等である。

 流れる時間こそ同じでも、できる事が違えば全くと言っていいほど残酷なものだ。

 今俺達がコンタクトできる人間も今の特別な状況下であるからこそ巡り合えた。

 

 口が堅いのならば割らせればいい。

 ここで手に入れなければ、他でも手に入れることは出来ずその機会も永遠に来ることはない。

 そのためにも、まずはこの少女から聞き出せるだけの情報は聞き出す。


「話に聞いていた以上の部屋だね。外からじゃ、中がどうなってるのかもわかんないしこのフロアにさえ入ることができないし」


「その口ぶりからだと、この宿は初めてではないようだな」


「ここに来たのは今日で2度目だけど、泊まったことはないってのは言っておかないといけないか……。ここにはお兄さん達みたいに外から来た冒険者、行商人、貴族……上げればきりがないけど、お金を手に入れる力がある人があつまるから」


「だが、俺達に目を付けたのはそこじゃないってことだな。偶然なのか、バニティーに作らせた得物を見られてしまった」


「今だから言えるけど、この街の中ならどこにいてもお兄さんのっていうよりもその武器の場所は分かったんだけどね。万が一にも捨てるなり隠すなりされたら困るから言わなかったけど。もうここまできたらそれはないでしょ? 受付のやり取り見てたけど、お金もそれほど持ってるわけではないみたいだし」


 言いたいことは山ほどあるが、実際問題俺達もリスクは犯したくはない。だから、あえて招き入れることで対処することになった。それも余計な心配だったみたいだがな。



「確かに縁の武器を手放して困るのは俺達だ……。売りさばいたところで同等以上の品を買うのは難しいだろうな。だからと言ってお前の好き勝手な要求を呑んで俺達にメリットはないのもじじつだろ? 一方的に自分の意見だけを通そうっていうなら、快く強力なんてできはしない。協力をする振りをして後ろから……なんてこともあり得るってことだ」


「本気で殺るつもりなら言わないんじゃない? その甘さから付け込まれたんだろうってのは良く分かった。でも、その甘さを差し引いてもお兄さんが強いのは見ればわかる。悔しいけど、あたしじゃお兄さんには勝てない。だから、断るなら力づくでっていうのはできない……」


「断るつもりはないさ……。まあ、最初から面倒な奴に絡まれたとは思ったのは事実だけどな」


「あたしは最初から協力させるつもりだったけど、こんなにあっさりしてるならもっと早く返事すればいいのに。なんて、思ってても口にはだしたりしないけど」


「言ってるだろ。あの場所で手を組む話はできないだろ……俺達は見張られてて、お前も俺達と接触した以上無関係ではない。どの程度影響があるかはわからんが、少なくとも特になることはないだろう。下手をすればお前は消されるぞ?」


「無理やりいう事を聞かせようとしたあたしを心配してくれるんだ。勝手にいなくなってくれたほうが楽なんじゃないかと思うけど」


「俺たちのせいで消されたなんてことになったら、目覚めが悪いだろ」


 今の俺達に足りない物を彼女は持っている。

 


「そろそろ、あなたの事教えてもらってもいいかな」


「言質はとったし、教えてあげよう!! あたしの名前は……スミレ・タチバナ」


「「!?」」


「むりっも無いか。あたしの母さんとお兄いさんは雰囲気が似てるって持ってたんだ。お兄さんもこの世界の人じゃないんでしょ?」


「アーニャは神様だったのかにゃ!? にゃにゃにゃ!!!」


「ボクはダーリンと繋がってるから、わかっていたけど」


「知らなかったのは私だけのようね」


「こういう形でばらされるのはまずかったな。隠していたわけではない。言うタイミングがなかっただけだ。それよりも、また同郷の人間に……」


 俺は気になった点があった。

 スミレはドワーフと異世界の人間の子供だ。

 それが意味することは、想像に難くはない。



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