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第2話 「同郷の彼女」

少しづつ書き足していきます。

 俺達は村を出発した。


 そういえば、これから一緒に旅をするんだから、パーティの登録をしないといけないな。

 ステータス画面にはパーティーに関する事項の記載があることを思い出していた。

 具にメニューを開いて、パーティー申請の項目を選択。

 名前が表示されているのでチェック。


「おっと」

 

【パーティーについて】

・リーダー〈申請者〉を除き最大15名 (以下リーダー)

・加入条件。リーダー、メンバー〈受諾者〉ともに真名を認識していること。 (以下メンバー)

・パーティーの脱退は死亡にのみ行われる。

・リーダーの死亡によりパーティーは解散される。

・リーダーはメンバーの加入時にメンバーの固有能力を得る。以降固有能力の付加の影響を受ける。

・リーダーはメンバーのステータスに干渉することが可能。

・殺傷の禁止を設定可能 デフォルトでOFF


 詳細が表示される。


 一度パーティーになると死ぬまで抜けられないとは、ずいぶんと制約が重い。

 恩恵も計り知れないが、裏切られたら目も当てられない。

 殺傷の禁止が設定可能なのもその辺が関係しているのかもしれない。

 しかし、戦略の面から考えればむやみにリミットを設けるような真似はしたくない。


 俺を含めて16人でパーティーを組むなんて想像できないけど、よく考えないと。


 ユイナをパーティーに入れるのは決定事項だ。


「パーティーを組めば、俺はユイナの固有アビリティを収得して、ユイナはPPを使って新しいアビリティの習得ができるようになる」


「わかった。それでどうすればいいの?」

 

「今からパーティー申請をするから、受諾してくれ」


「受信はどうすればいいの?」


「え?」


「え?」


 俺はステータス画面を操作し、申請を行った。

 ユイナはステータス画面の表示などはないのだから、機能するか心配ではあった。

 

「承認しますかと聞かれたので、『はい』って答えましたがこれでよかったのでしょうか?」


「ああ、それでいいはず……」


 どうやら、世界の声という形で作用したらしい。


 結果。うまくいった。 

 ユイナのステータス画面が表示された。


 【ステータス】

 名前: ユフィーナリア・ミヤコ・フィールド・ダークア・エリヲール  

     レベル19 

 種族:聖エルフ・闇魔族  

 職業:無 

 加護:無  

 身体アビリティ:SP80 

         MP429

         WP78

         筋力80

         防御78 

         回避65 

         器用81 

         魔力290 

         精神力90 

         知力130 

         霊感63 

         魅力122 

         運49 

  固有アビリティ:叡智回帰 完全空間把握   

  アビリティ  :痛覚耐性 属性耐性 状態変化耐性 詠唱短縮   

  スキル    :投擲

  魔法     :空間操作、闇操作、空間移動、治癒、浄化

  PP     :820    

 

 〈叡智回帰アカシックレコーダー

 ・この世界の隠匿されていない事象の開示、及び行使。

 ・魂及び思考の分離。

 ・対象へ解析、演算、分析、鑑定、予測を行う。


 とんでもない能力を持ってるみたいだけど、この世界じゃ当たり前なのか?

 そんなことはない。固有アビリティに分類されているところをみると希少なアビリティだな。

 能力値も俺と比べると圧倒的に高い。

 

₍ん? そう言えば)

 

「村に携帯忘れてきたみたい。取りに戻るのも恰好悪いし、ちょっと貸してくれない? もしかしたら電波が通じているかもしれない」


「ごめんなさい。今は持ってないです」


「え?」


「え?」


 デジャヴった。


 なんと答えたところで、言うことは何一つ変わらないのだけど。


「まったく、一番の食わせ者はユイナだったってわけだ」


「急にどうしたの?」


「携帯って、携帯する何?」


「電話のことでしょ?」


「この世界にも電話ってあるのかな? 少なくとも俺はまだ見てないけど」


「それはありとあらゆ知識をすぐに習得する能力のおかげで今知ったの。実際には私も見たことはないよ」


「模範解答……。つーか、コピペ通りだぜ。叡智回帰はあくまでもこの世界限定の辞書のようなもので異世界の知識まで得られる類のものではないってことだ。ってことは何が言いたいのかわかるよな、ミヤコ? 俺と同じ《・・・・》でこの世界の人間……じゃないよな? ジルは芝居が下手だった。だけど、あんたは上手かったよ。正直、今の今まで俺を騙し切ったんだからな。しかも、村を出てからわざわざ気づかせるようにするあたりしたたかというか」


 そもそも待ってろって言ったのに、何であのタイミングで出てくるんだと……。


(あからさまに怪しいっての)


「そう……全部わかってて付き合ってくれたんだね」


「確信は持てなかった。ただ、あんたはすべて完璧すぎたんだよ」


「完璧な人間なんていないわ……。だって、私はまだ自分が子供って自覚しているもの。私は神無月美耶子かんなづきみやこ。あなたと同じ日本人で17歳の女子高生だったのよ。友達と学校の帰りにクレープ屋さんに立ち寄って、そこにトラックが私たちを巻き込んで、そのまま私は……」


 嘘を言っているようには見えなかった。

 涙を流して、語る少女は俺の瞳の奥を心の奥を未来すら見据えている。 


「そんな……」


「あなたに出会って私は、もう駄目だって思ったの。あなたは名前も外見も日本人そのまま。もしかしたら元の世界に帰ることだってできるかもしれない。それに引き換え、私には戻ることのできる体もないのよ……」


「それなら、どうにかして元の世界へ帰る方法を探す。もちろん一緒に。こっちに来るために生まれ変わったというなら、その逆だって可能じゃないのか? 諦めるにはまだ早いと思うが」


「駄目でもともとだしね。もともとあなたと会わなければこんなことも考えもしなかった。可能性にかけてみる!」


「今更だが、17歳で転生して、今は16歳って実際はさんじゅ……」


 口をむりやりふさがれ羽交い絞めにされる。


「16歳ですよ」


「いやいや、ここははっきりさせとこうぜ。さんじゅ……」


 見えなかった!?

 頬がじんじんと痛む。

 さて、まだまだ追及は止まらない……。


「そ……そう」


 本人がそう言うのだからそうなんだろう。

 笑顔!? 否、目が笑ってないとはよく言ったものだ。

  

 俺は少し距離感が近くなったような気がした。

 異世界なんて、無人島のようなもので孤独な人生へ一直線だろうなんて思っていた。

 しかし、もとの世界の人間と会えたというだけで親近感が湧いてきた。


 外国で暮らすようになれば、日本が好意しくなる感覚と言えばいいのだろうか。

 一種のホームシックにでも陥っていたのだろうか。

 彼女との出会いが確かに活力になったのを感じた。


 最終目的は彼女を必ず元の世界へ、送り届けて見せる。

 もちろん、戻れるなら『俺も一緒にと』こぼれた波声はそよ風とともに吹きすさぶ。


 隣からふと声をかけられた。

 物思いにふけっていたか、間抜けな返事になったがどうやら返事はしていたようだ。

 

「それより、とっとと行きましょ。それと、呼び方にしろ、態度にしろてんでんばらばらで定まってない感じなのが気になるんだけど? 無理しなくていいんじゃない。これからは旅の仲間なんだから、友達感覚で気楽にユイナって呼んでほしいわ。その方が自然でしょ!? 村の中じゃ、隠していてもわかるくらい距離感みたいなものを感じる人が多すぎて、こっちが疲れるって感じだったし。これからも気疲れしないと思うと滅入っちゃうしね」

 

「まあ、その方が俺も助かるんだけど。それじゃあ、あらためてよろしく。ユイナ」


 吹っ切られたように重かった足が、軽やかになった気がする。

 村に向かっていた時に群がってきたブルーンは近寄ってくる様子はない。

 兎、狼などのモンスターへフラフラ近づいていき、村に近づけないにしているようだ。

 自然に村から遠ざけるように追い立てているように見える。

 

 狼といえば、集団で群れを成して行動する生き物で、モンスターといえども行動規範は同じなのだろう。5~10頭が徒党を組んで小型の動物を追い立てている。

 遠目に観察しただけで、村の周囲から追いやられたモンスターが過密になっていく道程が見て取れる。

 それでも、敢えて危険な死地に赴くしか選択はない。


 村を出て初めてのエンカウント。

 

「見つかったみたい! どうする!? 今なら魔法で攻撃できるけど、近づかれたら難しい!!」


 ユイナはすぐに魔法の行使が可能な体制に入る。

 いっそのこと先にぶっ放してからでも、なんて野暮なことは思わない。

 接近してくるのは額に一角獣のような角を持つ狼型モンスターであり、一頭を筆頭にして数体後に続くのが小指ほどのサイズで見えている。

 下手に手を出せば、他の群れもまとめて相手をすることになりかねない。

 

「追ってきている群れだけを各個撃破したい。頭を倒せば群れは崩壊する。なんて安易な考えは持ち合わせてない!! できれば頭は最後に慎重につぶしに行きたい。魔法は火力よりも一体ずつ足止めする方向で頼む。って感じでいけそう!?」


 念入りに打ち合わせをしている時間も、手の内も把握できていないまさに土壇場での一発勝負。

 失敗すれば、言うまでもない……。

 そうこうしているうちに距離が縮まっていく。


 一回り大きい個体、おそらく群れのボスだろう。数は6体。

 

「足止めだけなら何とかなりそう。まずは、真ん中の大きいのと左手前の小さい子に五感を奪う魔法をかけるね!! 一度にかけられるのは二体が限界だから。小さいのを倒したら次に行くから。そのつもりで!!」


「わかった。なるべく、俺を盾にするような立ち回りをするようにして。あんまり離れすぎても守り切れるかどうかわからないから」


「私のことは大丈夫だから、自分のことを考えて。自衛するだけならなんとかなるから……。無理はしないで」


 早い!! 思っていたよりもかなりのスピードで間合いに入られた。

 発見してから、数秒しかたっていないというのに、緊張が支配する戦場へと変わってしまった。

 命のやり取りが始まる。


 金縛りにあったように動きを止める二体の獣。手はず通り、群れで一番小柄なモンスターへ刀による上段からの全力の振り下ろしを放つ。

 目の前では両サイドへ真っ二つに割れる獣が無残に血しぶきをあげ倒れ伏す。

 

(意外にあっさりと切れるもんだな。もしかしたら楽勝なんじゃ……) 

 

「あぁー!! 危ない!! もう遅いし……」


 何かが聞こえたとしか思えなかった。それがユイナの叫びと本音だと気づくには遅すぎた。

 ボス狼の真後ろに伏兵がいたのだ。『危険察知』の精度がそれほど高くもないせいで完全に密着するように追走する個体に気づかなかった。

 

 半分は油断していたということもあって、わき腹に鋭く噛みつかれつつ体重の乗ったタックルが入る。

 幸いにも牙が貫通することはなかったが、強靭な脚力からの体当たりは脳まで揺らす強力な攻撃となる。


 噛みついて離れない。こいつは……。


《ヴォーウルフ・レベル18》


 なんだこいつ。狼なのか牛なのかどっちなんだ!?

 よくよく見ると、角も牛っぽい気がする。しかし、牛のような狼なんて見たことがない。

 周囲も、レベルが11~21といったところで、ブルーンのレベルに比べれば随分高く感じるがおそらく種族であったり、生存競争があるたびに変動するのであろう。


 噛みついている狼の首へと鋭く、バイオリンの弦を弾くように刀を弾く。

 あっさりと、絶命する獣。


 刀は肉を斬るのであって何も力任せに叩き込む必要性は全くない。

 

 一匹また一匹と数を減らすヴォーウルフ。

 ボスを除けば後二匹というところで、二手に分かれて一匹はユイナ目がけて駆け出す。

 俺は牙を刀受け止めるために足止めを食らう。

 すぐに蹴り上げて、牙突により串刺しにするが間に合いそうにない。

 やっぱり、足が速いんだよな。四足歩行だから!?


 「とっりゃぁー!!」

 

 飛びつく狼の頭に杖をバットのように構えフルスイングする光景が広がる。

 地を離れた時点で後のことなど考えていなかったのだろう、哀れ。

 狼の頭は首から先が粉砕されていた。

 杖はさながらバットのようなもので、ある程度リーチがあるのだから、身体までの到達が早い方が先に攻撃を受けてしまうことになる。


「大したことないわね……」


 目の前でおぞましい物体と化したモンスターに、嫌そうに杖でつついている少女。

 万が一起き上がってこないか確認しているようだ。

 素材の回収とかするのだろうか。何て考えていたら、おもむろに転がっている牙を回収している。

 やはり、後々売るなり加工するなりが必要なのかな。


 最後に残った狼だが、こいつは別種なのか!? 群れのボスなのに、おそらく進化の類ではないかな。


『ヴーエウルフ レベル6』


 やっぱり牛か!?

 牛なのか。

 しかも、微妙に国が違うように思うが、異世界ならしょうがないね。


 相変わらず、動かない標的の首を叩き斬る。

 

 ボトッ


 これはえげつない。

 しかし、生きるか死ぬかの世界でまして殺されかけたのだから……。

 それにしてもあっさりとしている。


(五感を封じられる魔法って最強なんじゃ……) 


 気が付けば、当初の目的地に近づいていたようだ。

 何とか、危機的状況は脱したかのように思ってつかの間の安心感を得ていたそばから何やら目に入った。


 一面に広がる樹木が間近に迫る中、一体の人型のシンボルが樹木とどうかしているかのように溶け込んでいる。

 人……には見えない……。


(あれが、ファンタジーの定番って奴か)


 ゴブリンのようだ。体調150cm程で真緑の肌に襤褸切れのようなものを纏い、両手に棍棒を所持している。


 しかし、伏せた枯れた樹木を背に眠っているようでその場から動く様子はない。

 距離は100mを切っているが、視認するまで気づかなかった。『危険察知は』は相手に捕捉されなけば発動しないこと。そして、おそらく敵意が向けられていなくても条件は満たさない。それは、村での一件で推測できる。


 ゴブリンは樹木と一体となった配色でうまく溶け込んでいるのも、見つけるのが遅れた要因の一つだ。

 本来なら遠目にでも、見張りを立てて万が一に備えるところだが、急な戦闘を挟んだせいですべてが後手に回っていく。


 こちらは隠れる場所がなく、周囲にはモンスターが徘徊している為、場合によっては周囲から包囲され、森からは伏兵の奇襲も十分予想できる。


 正面から静かに近づき速やかに倒し、森へ侵入するか敢えて起こすことなく戦闘を回避するか考えていると不意に背後に反応が出現した。

 数は10……20……。それ以上数えるのは嫌になった。

 油断も隙もない。 

 

 あまりに考えが浅はかだった。

 死地においてのんびり思考を巡らせているほど甘くはない。

 まして、すべてにおいて素人と言える現状では……。


(迎え撃つか……)


 振り返ると反応が少しずつ増していく。

 芋づる式に増えてく状況で、消耗戦をしても力尽きるのはこちらの方が早い。

 言ってしまえば、向うは替えがきくがこちらは控えもいなければ、後々の戦闘も考慮していかなければならない。


 血の気が引く。隣に並ぶユイナは杖を構えて、周囲に警戒をしているようだが落ち着かない。

 精神力、魔力どれをとっても無尽蔵ではない。

 願わくば温存しておきたいところ。

 杖から繰り出される打撃は相当なものだけど、回避不可能な状態で叩き込めることなんて、そう多くはない。

 一撃必殺をねらえる場面、逆を言えば相手も同条件化であるともいえる。

 無茶は極力しない。 

 ならば、ここでの選択肢はこれしかない。


「このまま、森に逃げ込む! ゴブリンは無視して! ダッシュ!!」


「了解!」


 ユイナに合わせて並走するつもりが、想像していたよりもずっと速い。

 

(置いて行かれる)


 アビリティがもたらす影響は無視できるものではないと、あらためて心にとめておく。


 「は、速すぎ……」つい情けなくも呟いていた。





お読みいただきまして、ありがとうございます。

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