第10話「猫耳少女~パーティ加入」
いかにもガラの悪いチンピラ風の連中が何やら喚き散らしている。
その矛先がこちらのある一点に注視しているので、とりあえず聞いてみることにした。
「おいおい、スペラ知り合いか?」
「森に行く為に囮にした連中にゃ。あいつらも隠れて森に行こうとしてたから、屋敷の人に教えてあげたんだにゃ」
悪びれる様子もなく言い放つ猫耳少女に怒りを露わにする賊共。
哀れには思うが自業自得なのだからしょうがない。
それに、せっかく拾った命なのにどうして捨てるような真似をしているのか疑問だ。
「あの時の借り。返してやるよ!! こっちは男3人。そっちは野郎が一人いるだけで後はか弱い女とガキ共ときたもんだ。野郎をを始末したら可愛がってやるからよ」
豚と豚を足して3で割ったようなもう人間を捨ててしまったような小太りの男が言い放つ。
人は欲に溺れるとこうも品が無くなるものなのか。
絶対になりたくない大人のお手本みたいな豚もとい男だ。
「これだから、おじい様は甘いと言うのです。放っておくと害にしかならない者もいるというのに、気まぐれで世に放ってしまうんです。後始末をする身にもなってほしいです」
自然に俺の肩を掴むと一歩下がらされた。
あまりの威圧感に、心臓が捕まれたのではないかと錯覚するほどの感覚だった。
どうしてこいつらは、恐怖を感じないのか不思議に思っていた。
それを察してかラティは言葉を紡ぐ。
「恐怖を感じるという事は力量がわかっているという事です。それを感じないのは本能で察することも出来ず、力量も計れない虫けら以下という事です」
誰もが聞こえる程の声量をもって紡ぐ音は、遮るもののない空間においてはまさにジャブ。
賊共を刺激する軽い先制攻撃には効果は絶大だった。
「おい女ぁ。お前は真っ先に殺す。殺した後でも新鮮なうちはセーフだよなぁ。俺の次はお前らにも回してやるからよ。楽しみにしとけよな!」
豚似の男は頭に血がのぼっている割にはよくしゃべる。
それより、俺が真っ先にやられるんじゃなかったのか。本当に記憶力がないのか、短気なのか救いようのない連中のようだ。
厳つい男と中肉中背のスキンヘッドもゲラゲラと下品な笑い声を上げながら、煽るのでどんどんつけあがっていく。
聞いているうちに腹立たしくなってくる。
「俺がこいつらを倒す。言われっぱなしなのはどうも好きじゃないんでね。黙らされてやる!!」
俺は恐怖も振り払えるほど頭にきていた。
元の世界では絶対に関わりたくないと思っていた類の奴らだが、身内に刃を向けるなら許さない。
三人とも曲刀を構えているが、今までの強敵に比べれば技術も脅威もまるで感じない。
それが油断だとしても、それを加味したところでスパイス足りえない。
「アマト様は優しいんですね。でも優しさは時に身を滅ぼしますよ。手が震えているじゃありませんか。人間相手に剣を向けた事……ないのではないですか」
言われて震えていることに気が付く。
言葉を話す者に刃を向けた事なんて今までなかった。
師匠の分身のゴブリンは一切しゃべることをしなかった。
あれは、俺たちの素性を知っていた師匠が敢えて言葉を発することをしなかった。
言葉を話す者に対する戸惑いや、罪悪感を抱けば今のようにまともに戦えないことをわかっていたのだろう。
愛着が湧けば言葉を話さないペットの死でさえ、心を蝕む。
心や魂と言ったものはそれだけ、意識すればするほどに己を責めたてる枷となるという。
今眼前にいるのは、人を人とも思わない連中だが、罪悪感は感じざる負えない。
これが優しさかと言われれば、そうではないと思う。
強いて言うならば、自分の心の弱さが人の死に責任を持てないのだ。
こいつらを生かしておけば誰かが死ぬ。
それは罪のない人々か、そうでないかはわからない。
悲しみの連鎖を断ち切る為にはやるしかないんだ。
「私も命を奪うことが好きではないんですよ。もしも……もしもの話をします。彼らがここに現れず、真っ当な暮らしをするように改心していたならと考えると、今から起こることは皆さんにとって悲しい現実になるでしょう。でも、それは誰にも分らないことです。今、ここにきて先程の言動が彼らの運命を決めたのです。一度おじい様から頂いた命を私の手で刈り取ることになるのは残念ではありますが……」
最後の一言は本来誰かが代わってあげるべきだった。そう思わせる言葉だった。
少なくとも俺にその勇気もなかった。
人の命はみんな平等だなんてことはないんだな。
「別れの挨拶は済んだか、じゃあ死ね……よ」
今目の前で、《《何か》》が起こったのだろう。
ラティを除く誰もが息を呑んだ。
小太りの豚似の男が首と胴体が離れて、胴体が地面によろよろと数歩前に出たら力なく倒れたからだ。
「ア、アマト……」
ユイナは目に涙を浮かべて、俺の胸に顔を埋めてた。
俺は目も背けることができず、グロテスクに血しぶきを上げて解体される瞬間を直視してしまって猛烈な吐き気に襲われていた。
ユイナの背にそっと腕を回す。
「大丈夫……だから」
何とかこらえつつ声だけを絞り出した。
スペラは嫌な顔をしているが、案外ゲテモノ耐性があるようで動じている様子はない。
周囲は断層地帯で、隠れる場所は無数にあるが、今はいたって静か。
モンスターの類もいなければ、風も吹いていない。
「な、な……何をしやがった!!」
中肉中背のスキンヘッドが口角泡を飛ばしながら、倒れた仲間の元へ近寄ろうとする。
目の前には数刻前まで下品な事この上なかった男の骸が、転がっている《《だけ》》のはずだった。
ガタッ
何かが倒れる音がしたかと思えば、次の瞬間スキンヘッドの男は縦割りに真っ二つになって倒れた。
その男を除く誰もが身動き一つしないうちに、また一つ骸が出現した。
まるで、鋭い刃物で上段切りでもされたかのように血しぶきを上げて地面に伏す男。
「相当日ごろの行いが悪かったのですね。今のは事故です……と言ってももう聞こえていないでしょうけど」
ラティはゆっくり倒れた男共に近寄ると何やら、右手で拾い上げる動作をする。
何を拾ったかまではわからなかった。全く見えなかったところから掌に収まるほど小さい物を投擲でもしたのだろうか。
「いーー。見逃してくれ!! 俺はこいつらにはぐらかされただけなんだ。見逃してくれよ」
目の前の惨状を目の当たりにしてようやく自分の置かれている状況が分かったのだろう。
冒頭から祖父が仲間を屠ったとっていたのに、女だからと油断していたのだろう。
「それを言うのなら『唆された』ではないでしょうか。まあ今私に対してはぐらかしてますのでよしとしましょう」
そう言って右手を軽く振ると、また一つ胴体を真っ二つにされた骸が出来上がった。
今度は右手のスナップを利かせて下から上空に向かって、軽く振り上げる動作をするラティ。
右手の動きを追うと空に巨大な茶色の鳥が上空を巡回飛行しているのが見える。
「あの鳥が殺ったのかにゃ!? 全然見えなかったにゃ!!」
空を飛ぶ巨大な怪鳥を見るや、はしゃいでいるスペラにラティが違いますよと答える。
「ピューちゃんは荷物持ちです。普段から大人なしい性格で戦闘に参加することはほとんどありませんよ」
ピューヒョロロ
上空を輪を描きながら巡回している怪鳥が鳴いているのが聞こえてきた。
「なるほど、そのままって事か……」
俺はなんだか『鳶に似ているなぁ』なんて思いながら呟いた。
「可愛い名前だね。ピューちゃん」
ユイナも呟くが、ラティは表情を変えずに薄らと桃色に染めていた。
やはり、ラティが何らかの方法で三人を屠ったという事で間違いないだろう。
ミーシアが火の魔法で一瞬で焼き払い、戦闘の痕跡を消していく。
手際が良く今日初めての作業には見えない。
最終的に地面に手を翳し、地面を均す魔法をかけて何事もなかったかのように手を払った。
「どのような方法で戦っていたのか教えていただけませんか? 参考になるかもしれないので……」
ユイナには見えない拳を受けているので、これ以上妙な技に手を出してほしくないと思ってはいたのだ
が、その心配はいらないようだ。
「参考にはならないと思います。大剣で斬っただけですから。大剣自体を周囲から感じられないようにしていますので、私が何かを持っていたことさえ誰も理解できなくなっています。正確には大剣そのものに施された効果だけでも十分なのですが、念には念を入れているんです。父の形見なので誰にも見られたくも知られたくもないので……秘密ですよ」
ラティは微かに微笑みを浮かべたように見えた。
認識できない武器とは恐ろしい。
即ち、リーチさえ不明という事なので間合いが計れない。
手合せを重ねても、何が起こっているのか不明。
こういう未知数な武器があることを頭の片隅に置いておこうと思う。
今日含めて三日間で出会った人が皆化物じみていて、敵に回せば助かるすべなどなかった。
(味方で良かった)
よく考えてみると、ジル、師匠、ゼス、ラティ誰もが凄まじい戦力なのに辺境の地で守りに徹して戦力の温存に努めている。
敵はどれほどのものなのか想像すらできない。
俺達が戦う相手は完全に未知数であるが、間違いなく圧倒的な戦力を保持しているのだとわかっているだけましなのだろう。
おかげで楽観的にならずに済むのだから。
時間をそれほど取られることもなく、ライラ村への移動を開始する。
屋敷を離れるに従い、断層地帯を抜け次第に樹木がちらほらと点在する場所に出る。
元の世界、特に俺の住む地方では、開けた場所に樹木が自然な状態で原生しているのは希少だった。
辺りを見渡せばコンクリートが当たり前だった今までが嘘のように、舗装もろくにされていない道が続いている。
踏み鳴らされた場所の所々に街灯のようなものが見受けられるが、ガス灯や電灯ではなく水晶のようなものが嵌め込まれている。
そして、何度も見てきた音の成らない鈴がセットでぶら下がっている。
「あれは街灯か? もしかしたら屋敷にあったものと同じものが使われているんじゃないか?」
「街灯には双耀石が使われていますが、お屋敷の物ほど良いものではありません。本来日中光を吸収し、暗くなれば光を放つのですが、照らせる範囲はせいぜい1mにも満たないのです。よって、遠目に道しるべとなるように設けられるに留まっています」
「照明というよりも航空障害灯や灯台のような使われ方になってるのか。まあ、夜真っ暗になれば道もわからなくなるから、有るのと無いのとでは全く違うよな」
今はまだ昼前という事もあり、光を発してはおらず手のひら大の双耀石が鈍色の石ころのように見える。
光っていなければ、美しさは感じられない。極端に言えばその辺に転がっている石を染めたようにも思える。
「そうとも言えないんです。数も少なくあまり多くも設置できませんので村の周囲のモンスター除けとして使う程度でしか役に立ちません。設置しているのを見かけるようになれば、村からそう遠くないという事がわかるので目安にはなりますがそれでは効力としては今一ですね」
無いよりはましという程度の活躍しかできていないらしい。
それでもモンスターに遭遇する可能性が減るというのであれば、効果としては十分だと思えるのは何故だろうか。
昨日まで必死になって戦ったモンスターが村に村人に近づかないと思ったからか。
必ずしも絶対などないのに。
「村が見えてきたにゃ!!」
櫓のようなものが2km程先に見える。
「あれは何だ、櫓のように見えるけど?」
「あれは憲兵の常駐と共に創られた詰所の一部です。賊が村に近づかないように監視する為というのは建前で遠方の国……カイル様のお屋敷の監視が目的です」
「やっぱりそういう事か」
「アーニャ? やっぱりってどういう事にゃ?」
「最初から、気になっていたんだ。詳しくは知らないが、村というと人が少ないのに自警団がいるというのも何か引っかかる。憲兵の目的は村を守ることでないんじゃないかってな。賊に邪魔されるわけにはいかないから仕方なく退治しているに過ぎないってことさ。それに屋敷が監視対象になってるんじゃないかとも思っていた」
「確かに憲兵の連中はおかしなやつらだったにゃ。話しかけても反応しないし、言葉を話すのを聞いたことがないにゃ。でもなんで領主様が監視されなくちゃならないのかにゃ」
「領土と言えどシフトラル王国の一部だからな。異世界だから元の世界の知識がどれだけ役に立つかわからないが、税金を納めていたり逆に国からの援助があったりするわけだ。本来監査員が出入りするなりあったもいいだろうが、屋敷はどこかの村に属しているわけでもない。言ってしまえば独立した国のようなものだろ。目の上のたんこぶにならないように牽制しているんじゃないかってね」
「シフトラル王国は基本的に不干渉です。現国王は旦那様と旧知の仲なので別の勢力が動いていると見ています。派閥の均衡を崩さない為にも旦那様は屋敷の外では鎧を纏い正体を隠すことになっているのです」
「道理で森を抜けてからが厄介だと言っていたわけだ。問題は賊だけに留まらないって事か……師匠は師匠で大変そうだな」
一国の王と親友だからと言って、一枚岩ではない以上いついかなる時も隙を作らない。
そこには同意できるが、敵視するような輩が現れたこと自体が問題だ。
俺の勘では絶対に俺達にも何らかの障害になり兼ねない。
俺達が屋敷を出るところは見られていたと考えて行動しないと。
ライラ村は周囲を柵に完全に囲まれていた。
一か所入り口として解放されているところには、鎧で肌身を一切晒さない門番が二人立っている。
門番の間を特に気にする様子もなく、スペラは駆け抜けていく。
門番は全く反応しない。
「ラティさん。入管手続きのようなことはしなくていいんですか?」
ラティに続いて門番の横をすり抜けていく俺達だったが、ユイナはある程度距離が離れてから問いかける。
「私も彼らの事を詳しく知っているわけではないのですが、モンスターや盗賊に対しては即刻攻撃に打って出るようです。ロイドの報告では敵意に《《反応》》していると言っていましたが、それもまた不思議な話です」
ラティも何か思うことがあるのだろう。どうにも煮え切らないといった表情をする。
村はざっと見ただけでも数百件は家が乱立いている。
ジル達の村の規模の10倍以上は優にあるだろう。
実際に町だの村だの基準が良く分からないが、元の世界の村は多ければ5万人程の人口であった。
この世界の人口ってどれくらいなんだろう。
「あれが家にゃ!!」
木造の平屋建ての一軒家の扉を開くスペラの後に続く俺たち。
リビングの先の扉が開いたままになっている。
そこから咳き込む声が聞こえてくる。誰かと話をしているようだ。
スペラは開かれた部屋に向かう。
「誰にゃ!?」
俺達は続いて寝室に入る。
「どうしてあなたがここにいるんですか? 旦那様からは聞いていませんが任務もせずに遊びほうけていたのではないでしょうね」
そこには金髪ロン毛のちゃらちゃらしたイケメンが猫耳女性の手を握っていた。
年は20代半ばってところだろうか。
「まああれだ、屋敷に連絡を飛ばした後であまりに体調が悪そうだったからこうして看病してたんだよ。姐さんが思ってるようなことは何もしてない。安心してくれ!!」
「あなたが何をしようと勝手ですが、任務に支障が出るようなことはしないでください」
「さらっと流されたぁー。おっと、ごめんね子猫ちゃんたち。オレはロイド・グラッセ。よろしく」
「私は、ユイナ・フィールドと言います」
「スペラ・エンサにゃ」
「俺はアマト・テ……」
俺の方は見向きもしないどころか聞きもしない。
ユイナの右手を両手でつかむと、手の甲にキスをするロイドがいた。
「あ~麗しの美少女。オレの心は今満たされた。君の紡ぐ言葉によって!!」
手にとまった虫を振り払うかのように、手を振るうユイナ。
その眼は下等生物を見るかのように暗い。そして、怖い。
「にゃーもこいつ嫌いにゃ」
「女性人からは評判悪いなあんた」
「うるせーよ!! このハーレム野郎。こっちは専ら諜報活動でろくに表立った行動が出来ねーんだよ。たまにはいいだろうが、羽目を外したってよう」
よくわからんが泣きながら逆上し始める残念イケメン。
「病気を患ってる方の前で騒ぐなら出て行っていただけますか?」
ミーシアは笑顔でろロイドを部屋から追い出すと、すぐに診察を始めた。
「にゃーーーーーーー」
入り口の方で女の子の叫び声が聞こえた。
俺とスペラが向かうと、ロイドが先程までユイナにしたことを猫耳幼女にしていた。
(あいつ本当に見境ないな)
スペラが真後ろからロイドに拳を振るうが、当たらない。
二発三発と放つがかすりもしない。
「言ったろ? 俺は諜報活動主体の任務に就いているってな。敢えてその手に触れるのも悪くはないんだが痛いのは御免だ」
「お姉ちゃんお帰りなさいみゅ。無事でよかったみゅ」
この猫耳幼女の前から最早ロイドは眼中にないらしい。
そういう星のもとに生まれたんだな。哀れなロイド。
「薬草は採ってこれなかったけど、医者を連れてきたにゃ。それでこっちがミャーを助けてくれた勇者様のアーニャだにゃ」
「初めまして、勇者アーニャ様、あたしはエルピスといいますみゅ。お姉ちゃんを助けてくれてありがとうございますみゅ」
スペラと同じ金色の瞳と白い髪だが、肩まで伸びているところが少々大人びた印象を与える。
「俺の名前はアマトっていうんだけど……」
「失礼しましたみゅ!! お姉ちゃんは仲良くなるとすぐ愛称を作ってしまうんでしたみゅ。
ごめんなさいみゅ」
涙目と上目づかいのコンボで見つめられ、気にしないでと頭を撫でていたらユイナに見られていた。
「アーマト君……あ・ま・と・く・ん」
ぶるぶる震えている俺の横で、ユイナに気づいたスペラがユイナに飛びついた。
「勇者様と一緒に助けに来てくれた精霊様のユーニャ様にゃ」
「せ、精霊様ともお知り合いになったの!! お姉ちゃんを助けて……あ、ありがとうございました」
「そんなに緊張しないで。私はユイナ、精霊って言っているけどハーフエルフだから、そんなに凄いこともないよ」
「そんなことないにゃ、アーニャにマナを授けてドバーってゴーレルを切り裂いたりしてたにゃ。あれは凄いにゃ」
目を輝かせるエルピスにおとぎ話を聞かせるように盛りまくった英雄譚を語って聞かせるスペラは本当にお姉ちゃんなんだなぁと思わせる。
仲睦まじい姉妹愛に注意を引きつけてもらい、静かに部屋に戻ろうとする。
わかってます。
二人の世界の姉妹。泣き崩れる残念イケメン。そして頭を鷲頭掴みにされている俺と掴みびりびりしている精霊様。
次の瞬間頭を起点にして全身に電撃が駆け巡る。
もう恒例となりましたネーミングコーナーのお時間です。
さあて、意図も簡単に捕まった、続いて電撃ときましたらその必殺の一撃の名は『稲妻』と言ったところかな。あまりに長くなると後々面倒だし。
玄関口で三組のごたごたがあった頃、治療は行われていた。
結果的にうるさい連中がみんな追い出されたのだから良しとしよう。
そうしよう……。
部屋に戻れば上半身を起こした猫耳の女性が、ラティ達と話をしていた。
「あなたがアマトさんとユイナさんね。ラティさんからお話はお聞きしました。私はエスポワール・ランサ、スペラとエスピスの母です。娘を助けていただきましてありがとうございました。それから、これからの事も聞き及んでおります。娘の立場は承知しております。ですが……どうか、娘の事をお願いいたします」
スペラも、エスピスも語尾ににゃとかみゅとか言ってるのに普通だなぁなどと一瞬思ったが、エスポワールの願いは最初から聞くつもりであった。
「約束します。俺が命を懸けて守ります。次にお会いするのを楽しみにしていてください」
俺は迷うことなく言った。
助けた命にも屠った命にも責任を持たねばならない。
そう、胆に銘じているのだから。
「ありがとうございます。スペラ、アマトさんの力になってあげてね」
「わかったにゃ!! ミャマも帰ってくるまで死んだりしちゃいけないにゃ。エスピスもいい子にしてるにゃ」
頭を撫でられるスペラを羨ましそうに見ているエスピス。
その光景が微笑ましい。
「私たちは今日一日村に滞在し、明日屋敷に帰ることにします。スペラ、今日からあなたは同僚です。これは旦那様よりお預かりした路銀と前報酬になります。旅に役立ててください。お母様とエルピスの事は私たちにお任せ下さい。あなたは自分の使命を全うするのです」
「わかったにゃ。ニャマとエルニャを頼むにゃ」
貰ったお金を背中のショルダーポーチに入れる。
「ラティさん、ミーシアお世話になりました」
「ラティさん、ミーシアさん。先生にもよろしくお願いします」
「じゃあ、行ってくるにゃ」
「皆さんの無事でお祈りしています。どうか、いってらっしゃいませ」
「スペラちゃん、お母さんは私が治してあげるから安心してね」
「おい、アマト!! 女を泣かせる奴は屑だ!! わかったな」
「あんたが泣いてるようじゃ世話無いぜ」
残念イケメンを一瞥すると、うぐぐと呻いている。
見苦しいので、軽く頭を下げてから家を出ることにした。
ユイナとスペラも相当ロイドの事が嫌いなようで、名残惜しくもすんなりついてきた。
「これからは三人で旅に出るわけだけど、スペラには改めてパーティの契約をしてもらいたいんだ。でき今からパーティ加入の条件を説明する。それを聞いて上で判断してほしい。パーティについては他言無用で頼む」
俺は加入条件とその恩恵を生死を除くすべてを説明した。
「最初からアーニャのいう事なら何でも聞くつもりだったにゃ。もちろん答えはイエスにゃ」
「今から、パーティの申請をするから、受託してくれ」
「わかったにゃ……イエスにゃ!!」
スペラが承認するのを聞くと俺は速やかにメニューを開く、すると二人目のパーティメンバーの名前が表示されていた。
種族が白虎人となっているが、虎だとニャーとか言わないはず。
動物園の虎もガウーとかガオーとかそういう鳴き声だったはず。
異世界不思議項目の一つだな。
ステータスは年齢にしては高いように見える。
師匠が従者として俺達に使えるようにスカウトするだけの事はある。
【名前:スペラ・エンサ レベル21 14歳】
種族:白虎人
職業:従者 〈主の指揮命令下で能力UP〉
加護:無
身体アビリティ:SP120
MP220
WP110
筋力70
防御40
俊敏420
器用120
魔力120
精神力50
知力60
霊感30
魅力30
運30
固有アビリティ:獣化 獣疎通効果
アビリティ :痛覚耐性 属性耐性 状態変化耐性 雷属性無効 危険察知 無音歩法
スキル :ブリッツネイル 投擲 電磁浮遊
魔法 :雷魔法 ボルティア サンダー
PP :1820
〈獣化〉
・身体の一部分をより獣に近づけることが可能
・持続時間は現在最大10分
〈獣疎通効果〉
・獣の心を読み取ることが可能
恐らく、成長することによって獣化の幅も広がるだろう。獣との意思疎通ができるのもいつか役に立つような気がする。
今まで、の成長も確認しておく必要があるな。
俺はステータスの関する割り振りはある程度ポイントが貯まってからするようにしていたしね。
【名前:天間天人 レベル28 19歳】
種族:人間
職業:自称勇者〈全能力補正がかかった気がするだけ〉
加護:無
身体アビリティ:SP250
MP130
WP200
筋力130
防御122
俊敏210
器用120
魔力110
精神力110
知力120
霊感30
魅力30
運21
固有アビリティ:全恵の才
アビリティ :痛覚耐性 危険察知 モンスター情報表示 魔法耐性 物理耐性 属性耐性 コンパス
スキル :回し蹴り 月極燕落とし 旋風瞬刃波 烈風瞬刃波
魔法 :風魔法 旋風
PP :780
【名前: ユフィーナリア・ミヤコ・フィールド・ダークア・エリヲール レベル29 16歳〈17歳〉】
種族:聖エルフ・闇魔族
職業:自称精霊〈精霊信者の同行により能力に補正〉
加護:無
身体アビリティ:SP120
MP821
WP245
筋力220
防御88
俊敏76
器用96
魔力410
精神力200
知力180
霊感92
魅力158
運51
固有アビリティ:叡智回帰 完全空間把握
アビリティ :痛覚耐性 属性耐性 状態変化耐性 詠唱短縮
スキル :投擲 頭蓋粉砕振り 疾風怒涛拳《シュトゥルム・ウント・ドラング・ファウスト》 絶対零度蹴り
魔法・精霊術・術法:闇魔法 空間操作 闇操作 空間移動 風魔法 竜巻乱舞 氷魔法 治癒 浄化 幻術 幻影弾
PP :1460
筋力の伸びが半端じゃないな。
俺の倍近くもあるし、もう明らかに殴ったほうが強い。
今のメンバーだと全員が前衛という脳筋パーティーになりかねない。
師匠のようなガード兼アタッカーではないので、強烈なのを一撃受ければ皆倒れる。
俺が後方支援に回ることも考えていかないといけないな。
そうなると、ポイントの割り振りはまだいいかな。
正直、どこにどう振り分ければいいのかわからない。
もう少し仲間が増えてから考えることにしよう。
突発的に魔法を使えるようになったりと、無駄に覚えないようにしていたらタイミングがどんどんつかめなくなっていくのだった。
「これから、アルティアに向かう。このまま北に進んで間にある山を沿っていく。まあ、後は村を出てから考えるけど、大丈夫?」
「私はそれでいいと思う。話によればいくつか村と町があるみたいだから、途中はどこか休憩しながらでいいと思うよ」
「ミャーはついて行くだけにゃ。北には一番近い町タミエークがあって何度か行ったことがあるにゃ。そこまでならミャーが案内するにゃ」
「了解。タミエークまでの道案内。頼むよ」
俺達はタミエークを目指して、ライラ村を後にする。
数えるほどしか町や村がないゲームとは違って、首都までは経由するところが多そうだ。
次の街では情報収集お必要もありそうでゆっくりもしてられない。
そんなことを思いながらもライラ村を後にした。