初めてのダンジョン
ゆっくりと進行するので何卒ご付き合いの方、よろしくお願いします。
<ダンジョン> そこは遥か昔、人間と神の契約がされる前から存在している不思議な場所。あらゆる研究家が調べてみるも、まだ何も発見できてはいない。無数に存在するダンジョンはいろいろな神秘がある。見たことのない財宝や危険な魔物、階層がありレベルの高いダンジョンほど多い。たくさんの人たちが目的を持ってダンジョンに潜る。時には一攫千金を手にして帰るもの、はたまた二度と戻れなかったもの。いろんなものたちが夢見る場所、それがダンジョンである。
「は〜、そうなんですか」
「リク、本当にわかったか?」
長い説明を聞いて少し眠くなった眷属リク。そんなリクを見て気合を入れ直してやろうかと考える老神エルギス。
二人は今ダンジョンの前まで来ている。
「ここがダンジョン…」
「うむ。名前は『鬼の口』じゃ」
名前が『鬼の口』とだけあって洞窟の入り口はギザギザになっている。まるで牙の生えた鬼が獲物を待って口を開けているかのように。
「………………」
「そう緊張するでない。ここはEランクのダンジョン。今のリクならそう簡単に死にはせん」
安心させようとエルギスが声をかける。
「はい、じゃあ行きましょう」
中は洞窟と同じで薄暗い。まだ魔物には遭遇していないがいきなり襲われたら反応が遅れそうだ。
ーーーその時だった。
「グギァーーーーーー」
オーガが洞窟の奥から襲いかかって来た。
Lv.10
名前:オーガ
体力:98
攻撃力:99
防御力:53
敏捷力:47
魔力:0
神力:0
<魔法> なし
<スキル>なし
<技スキル> 鬼の乱打
<称号> なし
素早くオーガのパラメーターを見る。
「どうじゃリク⁉︎」
「はい、倒せない相手じゃありません!」
「よし、儂は魔法で援護する。リクは隙をついて止めをさせ!」
「わかりました!」
作戦が決まるとリクは短剣を構えオーガに向かい走る。エルギスは後ろに下がり魔法の準備をする。
「ッ⁉︎でかい!」
すぐ近くにやってくるオーガに最初の時の光景を思い出す。何もできずに殺されかけた時のことを。
「もうあの時の僕じゃない!」
オーガが手に持っている棍棒を振り下ろす。すぐさま横に避ける。そして無防備になった腹に一閃。
だがーーー
「クッ、浅いか!」
オーガの肉厚で短い短剣のリーチでは腹の芯まで届かない。
オーガは腹の傷など気にせず棍棒を振ってくる。
「グアッ」
肩にぶつかり身体が吹っ飛ぶ。オーガは追撃しようと向かってくる。
「ファイヤショット!」
詠唱を終えたエルギスの魔法がオーガの追撃を防ぐ。
オーガを後退し、苦しそうにうめいている。
「今じゃリク!一気にたたみかけろ!」
「はい!」
レベルの上がった敏捷力でオーガに迫り、技スキルを発動する。
「ソードスラッシュ‼︎」
短剣をオーガの肩から斜め下へ斬りつける。袈裟斬りだ。返す刀で逆袈裟斬り。
オーガの顔が歪む。
だがスキルは続く。今度は上がった短剣を上段に構え振り下ろす。
「グルァーーーッ」
動きにスキルの補正がかかり、流れるように綺麗な動作を実現させる。
三連撃 ソードスラッシュ
「もう一撃!」
勝利を確信し、もう一度スキルを発動させる。
「リク!」
エルギスが叫ぶ。
なんだ?
オーガを見ると拳が迫ってきていた。
やばい!
考えた時には遅かった。いつの間にか棍棒を手放していたオーガの両拳が雨あられとリクに降らせる。
「ガハッ⁉︎」
何発か腹にもらい、肺から空気を押し出される。
『スキル:魔神の力Lv.1発動』
『魔法:ファイヤショットを得ました』
『技スキル:鬼の乱打を得ました』
そうか。魔神の力でオーガのスキルを…。
オーガのスキルはまだ続く。
オーガのパンチが僕に当たるがさっきまでの破壊力がない。
「ッ⁉︎」
オーガは驚く。
「ハハ、殴られている時.最後の一発にふれたんだよ」
『スキル:魔の吸収Lv1発動』
スキル 魔の吸収Lv.1 :効果 触れた相手の力を自分の力としてすべて吸収する。(死んだ相手にも効果は適用できる)
さっき僕はオーガに触れた。けど一瞬だったからか吸収できたのは二つだけだった。
攻撃力と減った分の体力。とりあえずこの二つを奪った。
きっとオーガの攻撃力の欄は0になっているだろう。
「反撃開始だ!」
いきなり迫って来た僕にオーガはたじろぐ。
今だ!
「ソードスラッシュ‼︎」
二度目の技スキルがオーガの腹を斬りつける。
「グギァァァァ」
オーガは叫ぶ。さすがに同じ箇所を二回も攻撃されれば効いたらしい。
「これで止めだ!」
オーガから奪った技スキル。
「鬼の乱打!」
数十発ものパンチがオーガの体中を叩きつける。
「うおぉぉーーーー!!」
そして、オーガはゆっくりと仰向けに倒れた。
ドスンッ
重い巨体が地面を叩き、砂埃が舞う。そしてオーガの体は消えた。
「え⁉︎」
「ダンジョンの魔物は死んだら消える。常識じゃ」
いつの間にか近くにいたエルギスが答える。
…せっかく吸収しようと思ったのに。
「……それよりもいきなり死にかけましたよエルギス様」
「それはお主が油断するからじゃろう。勝ち急ぎおって」
えー?そうかな?
心の中で文句を言いながら次に進む。
そこからの戦闘は一回目を教訓にできるだけダメージをもらわないように戦った。
遠距離からファイヤショットを打ち込んだらエルギス様に驚いた顔をされてしまったが…。
宝箱などが点々とあるが、開けると大抵が体力が少し回復するポーションなどや代用食のようなものばかりだった。
しばらく歩いていると、奥で何かが壊れる音が響いて来た。
「ーーー⁉︎エルギス様!誰か襲われているみたいです!」
「なぜこんなところで!リク!急ぐぞい!」
音の方向に向かって走る。
音の方に着くと、オーガ一体に西方によくある格好をした衛兵たちがおそわれていた。
「クソ!なんでこんなことに!」
「喋ってるひまがあるならこいつをーー」
愚痴る兵士に叱咤する兵士。だが言葉は続かずオーガの棍棒の餌食となる。
「隊長ー!」
隊長がやられ、士気を失った兵士たちは皆、次々とやられていった。
「全滅……」
見える光景は悲惨だった。大量に流れる血の匂いは吐き気を催す。
「いや、リク。あそこを見い!」
「あれは……」
兵士たちの奥に荷車がある。きっとあれを守っていたのだろう。
「まずい!オーガが向かっとる!あの中に人がおったらーー!」
「ファイヤショット‼︎」
荷車に歩み寄るオーガに詠唱を終えていた魔法を叩きこむ。
注意をこっちに向けないと!
「はぁーーーー!」
気合を入れ、オーガに攻撃する。
「ソードスラッシュ‼︎」
短剣の三連撃がオーガを斬る。だがオーガの体力は削りきれない。
「これで終わりだ!鬼の乱打!」
片手での攻撃だが、ここまで来るのにレベルが上がった今なら片手でじゅうぶんだった。
「はあっーーはあっーーくふっ」
オーガは体力がなくなり、消える。
呼吸を整え、荷車の中に人がいないか確認する。
するとそこには銀色に透き通る綺麗な髪をした美少女がそこに居た。
「ーーん…。誰?」
僕は女の子の顔を数秒見つめそっとドアを閉めた。