契約
「神様⁉︎」
「そうだ。神様じゃ」
俺を助けてくれたこのおじいさんは神様だった。そしてその顔はドヤァァとしていらっしゃる。
「それよりお前さんはどうしてこんなところにおったんだ?」
おじいさんが思い出したように聞く。
「あー……」
どうしよう…。なんて言えばいいんだ⁉︎異世界から転生して気づいたら森にいたなんて言っても信じてもらえるわけないし……。
「あっ、えっと、そう!俺……僕は記憶喪失です!だからどうしてここにいるかわかんないんです」
「……そうか」
少し納得していない顔をするおじいさん。
なんだろう。気になることでも言ったかな?お互い少し間が空く。
「お前さん、これからどうするんじゃ?」
質問の意味がわからなかった。
「?、何がですか?」
「何がですかって……はぁ」
おじいさんは物分かりの悪い子供に言い聞かせるように言う。
「お前さんは記憶がないんじゃろう?ということは帰る場所もわからないんじゃないか?家族も心配するわい」
そうか……この設定だとそういうことになるのか。まぁ、転生した俺に帰る場所も家族もいないけど。前世の家族にいたっては心配なんかしてないだろうし…。
前世の家族を思い出す。
「大丈夫か?」
心配そうな顔して聞いてくる。
「いえいえ!全然大丈夫です。心配してくださってありがとうございます」
これ以上心配なんてかけちゃダメだ。
「確かに帰る場所なんてないですけど大丈夫です!近くの街で宿を借りれれば……」
「お前さん金持っとるのか?」
「うっ…」
その指摘に言葉を詰まらせる。
「しかも怪物がうろちょろしとる森を一人で抜けれるのか?」
そうだよ。俺がいるのはさっきのオーガみたいなのがいる森だった…。しかもこの口ぶりだとまだなんかいるみたいだぞ……。
「どうじゃ?お前さん、うちに来んか?」
頭を悩ませる俺におじいさんが救いの言葉をかける。
「え⁉︎そんな!助かりますけど……、これ以上迷惑なんてかけれません!」
「いやいや、もちろんただではないぞ?」
「え?」
どういうことだ?まさか奴隷として売られるのか⁉︎
裸にひん剥かれ檻に閉じ込められる想像をして顔を青くする。
「お前さんには儂の養子となって用心棒となってもらう」
「へ?」
事態が読めない。
「どういうことですか?」
「実は儂はいろいろと訳ありでのぉ。若いのが近くにおると助かるんじゃよ」
おじいさんが困った顔をする。
「いや理屈はわかりますけど僕なんかがそばにいたって……」
さっきのオーガ戦のことを思うと下を向いてしまう。
「こら」
ドスッと俺の後頭部にチョップをかます。
「い、痛いですよ…」
「お前さんは力が欲しいんじゃろうが。立ち向かえる力が」
「ですけど……」
どうやって?
俺は鈍臭いし、前世でなんかも運動神経なんてほとんどないぞ。
「儂とお前さんで契約を結ぶんじゃ!」
「契約?」
「おう!そうじゃ!」
「契約したらどうなるんですか?」
俺の質問におじいさんが説明する。
「契約とはその昔、この人間界に最初に降りてきた神が編み出した神と人間の絆の証じゃ。契約を受けた人間は神力。神の加護がつき、パラメーターがつくんじゃ」
「とっ、ということは僕なんかでも強くなれるんですか⁉︎」
「ああ、強くなれるぞ」
それを聞き、ついに力が手に入ると舞い上がる俺におじいさんは言葉続ける。
「ただし!それはお前さん次第だ」
「え⁉︎」
おじいさんの言葉にまたしても疑問符が上がる。
「言ったじゃろう。パラメーターと。つまりレベルなども当然あり、それを上げんことには強うならん」
ガーーーーン‼︎
そうだよな……。そんなうまい話があるわけないよな。
がっかりと気落ちする。
けど………。
「それでも!僕は力が欲しい!」
前世の時の辛い過去。オーガ戦の時の情けなさ。あんなのもう味わいたくない!
「僕は強くなりたいです!たとえそれがどんな困難な道だったとしても‼︎」
「よう言ったぞボウズ!」
俺の全力の決意をおじいさんが答えてくれる。
「これからよろしくの……え〜と」
「あ、僕の名前は……」
………あれ⁉︎俺名前なんだっけ?何故か前世での名前が思い出せない。
「なんじゃ。名前も思い出せないのか?」
「……はい」
「ふむ。なら儂がつけてやろう」
思案顔をする。
う〜むと唸っているおじいさん。どんな名前がつけられるかたのしみだな。期待に胸を膨らます俺を次の言葉がばっさりと斬る。
「トラ次郎とハムレッグバスターどっちがいい?」
「おおい‼︎」
期待してたのと全然違う!なんでその二択?トラ次郎はまぁ、いけないけど置いといてーーーなんだよ!ハムレッグバスターって⁉︎つまりハムとレッグをバスターするんだろ⁉︎そんなもったいない名前いるか⁉︎
俺がツッコミを入れるとおじいさんは笑う。
「ハッハッ、冗談じゃ」
本当かな〜?
またしばらく考える。数分考え、勢いよく顔を上げてこちらを見る。
「決まった!お前さんの名はーーーリクじゃ!」
「リク……」
それがこの世界での新しい名前。
高揚する自分を抑えられない。俺はリクとして異世界に生まれかわったのだから。
「よろしくの。リク。儂の名はエルギスじゃ」
そう言って右手を出す神エルギス。
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」
言い淀みながらも手を握り返す。
「これで契約完了じゃ。」
「?」
右手の甲をトントンと叩く。なんだろうと自分の手の甲を見てみるとそこには今まで見たことのない紋様が浮かび上がっていた。
「これが契約の証」
その証は丸い円の中に複雑な模様をし、円の内側を読めない文字が沿っていた。
「そう、これでお前さんーーーリクは儂の眷属でもありーーーーー息子じゃ」
「はい!」
これからもつらいことが待っているかもしれない。
だけどきっと、この人とならーーー。
ーーー強くなれる!
そしてこの世界では頑張ろう!おぉ!
応援したくなる主人公。僕は大好きです‼︎
あ、あと、この後主人公はチートを持ちます。