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謎の声



「大丈夫ですか!」


シアンが倒れているエルギスに駆け寄る。


「すぐに治しますから!」

「クッ、馬鹿もん…、さっさと逃げんか!」


どうしたらいいか分からず、戸惑ってしまう。


だがシアンはエルギスを置いてくことを放棄した。


ヒーリングの詠唱を唱えると影が差す。見上げると、ブラックオーガキングがすぐそばにいた。


「きゃあーーーーー!!!」






リクは左腕を斬り落とされ、大理石の上で踞る。

おぼろげに見えるリクの目には、シアンとエルギスが絶体絶命の状況にあった。


シアンが叫び声を上げる。助けにいこうにも、血を流しすぎたせいで立つこともままならなかった。


「死なせる…もんか…」


真っ赤に染まった床に右手で支えて身体を起こす。しかし、バランスを崩して倒れてしまう。


「(い、意識が……)」


そこでリクは気を失った。







『おーい』


誰かの声が頭の中に響いてくる。一声でその誰かがまともではないことがわかった。


『失礼な奴だなぁ』

「あなたは誰?」


声が直接頭の中に聞こえてくることは、とりあえず置いといて話す。


『そんなことはどうでもいい。それよりもお前、何勝手に死のうとしてんだよ』

「……死ぬつもりなんかない。僕は今すぐ助けに行かないといけないんだ」


記憶の最後には二人の顔が恐怖に染まっていた。


『あの様でか?』

「ッ!」

『よくそんな口を利けるな」


声の人物は全てを知っているふうに聞こえた。いや、知っているのだろう。どこからか自分達を観察して探っていたのかもしれない。


『探っていたのはお前だけだ。あとは……まぁどうでもいい』


心が読まれる。リクはなんとなく声の正体がどんな人物なのかわかった。


「あなたは神様ですか?」


声の人物が鼻で笑う。


『神か……、俺はあんな連中と一緒にするな」


少し強めに言う声。


『とりあえず俺は、お前に死んでもらったら困る。だから少しだけお前の力を引き出す」

「何を……」


言葉は続かず身体の内側から痛みが襲ってきた。


「ぐっ、ぐあぁぁーーーーーーーーー‼︎」

『フハハ、じゃあまた会おう』


そこで声の人物はいなくなった。






リクが気を失っている間、エルギスは二人を逃がそうと考えていた。


「エルギス様!」


シアンの声に反応して横に跳ぶ。強烈な破壊音とともにさっきいた場所はひび割れる。


「(こいつをどうにかせんことには……)」


シアンをすぐさま離れさせ、エルギスはブラックオーガキングの気をひいていた。


この場を切り抜ける方法を考えようとするが、ブラックオーガキングの攻撃がそれを許さない。


「せめてリクが起きてさえいればーー」


そこで気づいた。リクがいた場所に黒い何か(・・)がいることに。


「……誰じゃ?」

「グララァァァァァァァァァァァ」



全身余すところなく黒く、服から覗く腕と足には赤い血管が浮き出ている。真っ黒な髪は腰まで伸び、瞳は金色に妖しく光っている。


「黒い髪……まさか、リクなのか?」


映る光景が信じられない。リクから感じられるもの。あれは……





ブラックオーガキングはリクの雄叫びで背後の存在に気づいた。


ブラックオーガキングがリクを警戒する。


さっき倒したはずの人族が異様な姿に変わり、斬り落としたはずの左腕が何事もなかったように戻っていたからだ。



しかし、すぐに警戒を解く。この人型をした何かからは自分達と同じ魔物(・・)の魔力を感じたからだ。


味方が増えたことに笑みが浮かび、人族に振り返った瞬間、宙に浮いた。




「なんという速さじゃ!」


何が起こったのかわからないうちに、リクがブラックオーガキングを蹴る上げた。


「…………」


リクは無言で両手を天に突き上げる。


「魔法じゃと⁉︎姫さん伏せろ‼︎」

「は、はい!」


リクの両手に黒い塊が生み出され、どんどんと大きくなる。


「……グル・メトス……」


バスケットボールほどの大きさの球が放射され、ブラックオーガキングに向かう。


ブラックオーガキングが空中で球を斧で受け止めるが、跡形も無く爆発した。



その様子をエルギスが茫然と見る。シアンは丸まった姿勢を起こす。




二人が見える先には元に戻ったリクが倒れていた。



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