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04


で、「真理の目」だ。

これやばい、魔力?の流れが理解できる。

植物には植物の、地面には地面の、風には風の魔力が見える。

色もあるけど関係なく、認知感覚で「そう」だと認識できる属性がある。

正確に言うには感じ取れるだから1080度は認識できる。

モンスターの魔力も見えるから何もかも丸見えに近い。

もっともスキルのレベルが低いのか、安全装置なのか射程範囲はそう広く感じないのだが、これ育ったらどうなるか正直恐い。


…んで、その状態で魔法を使うと、魔力がどう動いて魔法が形成されるかも一発で分かる。

例えばファイアボルトを使うと、まず体内から流れ出したELとは違う緑の光が、緩やかに手の中で薄赤に変色していく。

そしてその魔力の玉が凝縮され、魔力の針のような進行方向へ向けての細い何かを出したあと、赤色にまっで高まった魔力は瞬時に火の玉となって飛び出す。

そして進行方向を決めるかのような魔力の針が息切れをした所、もしくはぶつかった所でパァン、と軽い爆発が起きた。

こんな構造になってたんだ…




その後も、俺はいくつかの魔法を使って魔力の流れを見てみた。

ファイアコントロールはファイアボールで作ったたき火にかけてやってみたのだが、コレが案外に楽しい。

炎の持つ魔力と自分の魔力を同調させて動かすのは、まるで炎と踊るようなのだ。

エアコントロールも動揺だが、やはり力が濃い物なのかファイアコントロールの方が楽しい。


…で、ピンと思いついた。

両方の魔力を合わせたらもっと楽しいんじゃね?

そして俺はエアコントロールで周囲から凝縮し、渦を巻かせた風を、ファイアコントロールで炎に食べさせ、その魔力のほとばしりを全身で体感した。




すっげえ火傷した。

森の一部は今もめらめら燃えている、

本気を出したファイアコントロールで延焼は防いだものの、森の一部は煙を上げていた。


「火災旋風とかマジ忘れてた…」


しかし考えようによっては、初級魔法でこれだけのことが出来る、とも考えられる。

すげえなー、と傷薬になりそうな物を探していると、インベントリに大量の木材と木炭が入っていた。


『木炭:高温の火で一気に焼いて出来た炭』


『乾燥木材:高温をかけて乾燥させたため一部がひび割れているが、よく乾いている』


ああやってぶっ壊すとドロップになるんだ…じゃなくて回復アイテムは…

と、スキルを見ると風魔法に「ヒーリングエア」が入っていた。

「エアシールド」もあり、さっきの一件で風魔法がレベルアップしたのだろう。

一も二もなくヒーリングエアを連打すると、身体から出た緑の靄が手元で薄緑の渦に変換され、また広がって身体に染みこんで行くのが判る。


あーきもちいー。


で、こうやったらもっと気持ちよくならないかな、と、身体から緑の光が出て薄緑の光になった瞬間、それを全身に吸い上げた。


ちょーきもちよかった。


すっかり火傷が治った俺はそういえば火魔法もレベル上がってるかなーと魔法の欄を見て、愕然とする物を見た


「火魔法」

・ファイアボルト

・ファイアコントロール

・ウォームアップボディ

・ファイアピラー


「風魔法」

・エアスラッシュ

・エアコントロール

・ヒーリングエア

・エアシールド


「火風魔導」

・ファイアストーム


「風魔導」

・リフレッシュエア


うんなんだよそのファイアストームとかリフレッシュエアとか!

もしかしてアレか!?特別な魔法の使い方をして効果は出ると登録されちゃったりするの?

しかも何魔導とか書いてるってことは魔導のスキルってそういう技術の登録なの?

ファイアストームって明らかに火災旋風の英訳だしなぁ…試し使いが恐すぎるが…


「リフレッシュエア」


必要ないけど回復魔法…いや魔導を唱えてみる。

すると魔力は勝手に身体に吸い込まれるのではなく、空中に霧散しかけた。

おわ、と呻いた俺はあわてて魔力を身体に引き寄せる。

すると魔力は身体に染みこみ、何となく身体のだるさが消えていった。


「…いちいち精密コントロールを要求されるのか…こりゃ確かに魔法の上?みたいな表記の「魔導」だわ…」


とりあえず俺はここらで練習を切り上げて、街に帰りエリナの所に行く事にした。

だって胸当て、ボロボロになっちゃったからね…




「どうしたんですかその服!ついに!?ついにですか!?」

帰って来るなりエリナが耳をへこませそんな風に泣きついてきたのでチョップを入れて黙らせる。

ただの魔法練習の事故だというと、そんな盛大な魔法使えましたか?と言われたが、光れば使えるんだよ、の一点張りでなんとか誤魔化した。

そして胸当てを作り直して貰うんだが…


「良いのか?前と同じ料金で」


「戦闘以外の普通に出来ることで壊れる事を想定しなかったのは私の責任ですからね、職人の意地ってやつです!」


ふんっ、と鼻息を荒くしたエリナが初心者の服の周りにメジャーを当て直していく。


「そう言えば初心者装備は壊れないんだよなぁ…」


俺がぼつり、というと、エリナが苦い顔をして口を開いた。


「そうなんですよね…だから初心者武器を防具にしたり、ボロボロにならないからってずっと着てたりする人も居るくらいなんです…」


どんな変人だ、とつっこむ気にもなれず、ふーんとかえして俺はそのまま採寸を続けられた。


「そういやこの材料使える?」


『大蜘蛛の糸:人さえ絡め取る大蜘蛛の糸。火には弱い』


そう言って取り出したのはこんな糸束だ。

それをみてエリナはんーと声を濁らせる。


「最初から縫製に使うならともかく、修理や強化には使いづらいんですよねー。なにより、少し上級の皮革道具が必要になる素材ですし」


弓の弦にして見るのもどうです?と言われふと思い当たった。

あの大量の木材を使えば、素人の俺でも弓一本くらい作れるかもしれない。

何時までの最弱威力の弓と矢尻らしいものの木を尖らせた矢に頼るわけにも行かないのだ。

目指せ木工、頑張るぞ!




と、言うことで、エリナも御用達の街で弓を作っている木工場に案内して貰った。


「ここはすごいんですよー?木工持ちなら一から教えてさえくれますもん」


中を覗くと何人かの青年達が仕切に西洋鉋の様な物や鑿の様な物で木材を加工している。

もうここで頼んじゃうかなー、と思ったりもしたが、やはり一度作ってみたいものである。

俺を一目惚れさせたダガー。あそこまでは行かなくとも、世の中には美しいもjのを作ることが出来る瞬間があるはずだ。




「で、「木工」無しに木工がやりたい、と」


俺は首をこくこく振って熱意の限りを胸に込める。

髭の頭領は少し顔を背けながらしかしなぁ、と複雑そうな塩梅だった。


「まぁ良いじゃないですか大将、試しにやるだけなんでしょう?」


と横から声が聞こえてきた。

今までエリナの弓の調整をしていた明るそうな細身の男が。


「黙ってろキッシン。こいつはお嬢ちゃんの時間を無駄にするかもしれない大事な話なんだ」


決定的に基礎が身に付かないのであれば、どれだけ教えても時間の無駄になる。

つまりそれは相手の時間を無駄にするということだ、と大将は考えているらしい。


「そんなことは気にしませんよ、俺がやってみたかったってだけなんですから。たとえ時間の無駄になっても…」


「ふむぅ…」


「じゃあこうしましょう大将さん!なにか基礎を見る試験をブレイドさんに科して、合格できたら教える、ってのじゃダメでしょうか!」


今まで新しい弓類を見ていたエリナが急に首を突っ込んで口を開いた。

なかなか侮れない奴だ。大将もその言葉にうぬぬと唸った後、パンと膝を叩いた。


「よし!キッシン、奥に開いてる工房があるな!」


「へい!」


「そこ使わせてやれ!嬢ちゃん、アンタは一日でせめて弓と呼べるだけの物を作れたら、まともな木工を教えてやる!」


ということで、私は試練を受けることになったのでした。




そんでめのまえの作業台の上には弓に向くと思しき木の原木材。まずコレを割らなきゃいけないんだけど…


「一人でどうっしろての…」


もちろん工房には様々な斧や鋸があるが、そう簡単に使えるとも思えない。

というか使えなかったので斧や鋸は既に中途半端に刺さっている。

手元からどうにか出来る道具を探すが、ドロップアイテムか初心者装備くらいしかはいっていない。

ダガーやナイフで削り取るにも凄まじい手間だしきっと無理だろう。

……と、その瞬間、彼女の目にある物がとまった。


『初心者の連金道具:練金の基本道具がそろえられている』


小さな石が数個刺繍された大きなハンカチ程度の布である。が、その表面には不思議な魔法陣であった。


「もしかして練金って…」


呟いた彼女はステータス内部を操作、そしていくつかの可能な操作を見てある「無茶」を思いついた。


まず、2m以上の原木の下になんとか練金布を敷く。

そして真理の目で木の魔力を見ると、加熱でいびつに歪んだそれが見えた。

そしてそこからが彼女の力の使いどころだ。

おそらく、ゲームの仕様通りに使えば粉々になるだけだろう、

だから彼女は自分の身体を緑に光らせながら、全力で呟いた。


「粉砕」


ピシ、と魔力の光が原木の弱い部分を走り、木は幾本かの長い木片に別れる。

こうなれば一本づつ動かすことも不可能ではないので、斧や鋸を外し、弱い木達を横にどかしていく。

そして最後に残った力強い木を前に、彼女はさらに魔力を集中させて口を開く。


「粉砕」


またしてもピシと、音がして、原木の破片の中からは弓に近い形の木片が転がり出た。

これが彼女のやりたかったこと。魔力による植物の成形である。


あとはこのおおよそ弓に見える木を実際の弓に作り替えるのだが、そこから先は手作業でなければならない。

押し鉋とナイフを手にした彼女は、身体能力を高めるという火魔法「ウォームアップボディ」を自分にかけ、長い長い削り作業に入るのだった。




――完成図は見えている。

魔力の形がのぞむ、弓としての形があるのだ。

一件弓に見えずとも、彼女は迷いなく木の魔力に沿って削り続けた。

そして……悲劇が訪れた。


びし、と音がして、弓弦掛けの部分が割れたのである。

これでは弓にならない。

絶望しそうに成った彼女は一頻りへたり込むと……練金布を持ち出した。

それは最初顔でも拭こうとでも思ったのかも知れない。しかし考えてみれば出来るはずなのだ。


「調合」


そしてメシリ、と音がして、割れた部分道士は魔力的に融合した。


そこからの作業は早かった。

リカバリが効く事を理解した彼女は、繊細さに大胆さを乗せて木を削る事が出来る様に成ったのだ。

そして9割方が弓の形になった時、彼女はふと思った。


…これ、別の魔力源と「調合」でひっつけて、合成弓に出来るんじゃね?


そして、人食い蔦の蔓に「乾燥」や「分解」による繊維ほぐしを行い、細い糸の様にしたあと、残った木片に引っかけて撚ろうとし始めた。

そこでまた一つ気が付いた。

コレも「調合」してしまおう。

それは大蜘蛛の糸であった。

そして彼女は両者を長い時間を掛けて撚り合わせて「調合」し、できあがった上でそれを前提にさらに削り直した弓にしっかりと巻き、再度「調合」でそれらを完成させた。


「出来たぁ!!!」


弓弦は同じ撚り糸であり、グリップには僅かに兎の毛皮を巻いていた。

ステータスを見ると。


「森の弓:森の魔力に逆らわず作られた弓。森林での威力が上がる」


等と書かれていて、一体自分は何を作ってしまったんだ、という気になっていたりした。


天には朝日が昇り始めていた。


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