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ついつい書いちゃいましたFSOの続編!
今回は主人公も変わって文体も少し変えて挑んでみてます。
あいかわらずとっちらかってますけど。
こりゃ書くのに時間がかかりそうだぁ…
全作主人公ソード君は存在は話に昇るけど直接出て来はしない予定です。
さーてがんばるぞー がんばるぞー…
VRMMORPG、Free Style Online。
今時珍しくもないVRMMO…だけど、内容は従来の表情も変わらないVRゲーム達を上回る、凄まじい自由度でゲーマーの噂となった一品。
しかも体感時間延長機能まであり、なんと最大ログイン時間の10倍までの加速が可能だという。
「凄まじいスペックだな…」
左腕に内蔵された筋電位操作型インプラントを細かく動かしながら、浮遊するスクリーンの中…昔はパソコンと呼んだものをじっと見ていた。
身体の所々にインプラントしたコントローラのELラインが薄緑の光を放ち、家庭内用マシンアームが低分子栄養チューブを運んできた。
ギュッと特有の握りしめ方をするとキャップが飛び、バニラ味の栄養剤をすすると、俺は次いで掲示板類を見た。
「なになに…?『血の狂戦士』事件だぁ?」
ふと目に付いたスレでその男について調べると、幾つもの情報が出てきた。
曰く、いつも復活ゲート前にいる男。
曰く、謎の鋼鉄を鍛える技術者。
曰く、狂戦士。
曰く、絶対に戦いたくない相手。
その名前は…ソード。
「へぇ、面白いな、こんな奴も居るんだ…痛覚100%だとペナ0なんだ…?で、こんだけやって平気って事はVRギアに心マと小脳バッファ機能だけじゃなく小脳改造済み?でなきゃ当人も化け物ってことかな?身体寄りのブーステッドマンはずるいよなー」
彼はけたけた笑うと、ま、いいかと呟いてヘルメット台の器機を取り出す。
「ま、ウチはウチで楽しくやるか。この電位コンソール接続型のギアでな」
そして彼は、彼の「Free Style Online」に入っていった。
「驚いたな、両性もあるんだ」
両性とは…男女の性的特徴を両方持つ者である。
遺伝子改造技術が進歩した現代では、マイナーではあるが僅かに存在する人種だった。
FSOはそれにも対応し、専用のアバタースタイルが用意されていたのだ。
「現実とあんまり違うと齟齬があるからなー。両方アリアリだとこういう時ウザいんだよなぁ…」
チュートリアルでアバターを作りながら彼…いや彼女?、は言う。
見た目寄りならむしろ彼女だろう。その冷たさの割りには柔らかな声で、彼女は一言、アバター名を呟いた。
「ブレイド。性別、両性。種族は…ククッ、これでいいか」
その他のチューニングが、身体の表現が猛烈な速度でうっすら痙攣するかのような肉体の入力により制御されていく。
現実に可能な限り近く、そしてさらに美しく。
どうせなら綺麗な方が良い。それが彼女の考えだった。
ついでに在る部位も少しだけ盛った。なにせその方が「美しい」と思うからだ。
そして最後にシステムが聞いてくる。
『ELインプラントをアバターと同期させますか?」
答えはイエス、そして次の瞬間、全身を緑のラインが走り、彼女は瞳を開いた。
肩で切りそろえた銀のボブカットに銀色の目。
形の良い肢体と少し高めの背丈には、時折緑の光が走る
それはアインブルクの中央広場にあって、人目を引かずにおれない光景だった。
「ELまで入れてるぜ…」「再現する奴居るのかよ…」「めっずらしー」
こもごもの声の間を、彼女はにこりと笑ってから緩やかに歩き出し、野次馬の一人に流し目を送ってささやいた。
「レディの前で身体の話はしちゃダメよ」
ふふっ、と笑うような声に、頽れる男を無視し、彼女は人垣の間を抜けていく。
人垣は自然と彼女を避けて居た。
コレで初期資金ゲットな、と彼女は内心ほくそ笑んでいた。
その懐の中にはさっきの男の財布。見ほれた瞬間にくすねたのだ。
出来なければボディタッチということで誤魔化す気だったが、ぶっつけ本番でもやれば出来る物である。
この挙動から分かるように、彼女はスキルに「盗賊」を取っている。
このFSOは謳い文句にこそ「スキルは幾らでも手に入る」とあるが実際の取得条件はかなり厳しい。
一部緒トップランナーは汎用のはずなのに現在専用ともいえるスキルを持っていたりする有様なのだ。
そのため、初期スキルがプレイスタイルに与える影響はかなり大きい。
そして彼女が選んだスキルは「風魔法」「火魔法」「練金」「射手」「盗賊」。
どれにしてもどうも中途半端とも思えるが、だからこそ面白い、と彼女は考える。
何かいろいろが出来そうで、それで居て何も出来そうにない。
その不確実性がたまらなかった。
それにどうせこの容姿だ、要らない相手が幾らでも寄りついてくるだろう。
ソロにも生産にもPTにも特化していない、となれば、それらを避ける体にも成るとも踏んでいた。
…と、ステータスにもなっていないざっくりしたステータスやインベントリを眺めていると、ふと目に入る物があった。
『美しき魔手:その美貌を持ってハートも盗んだ魔性の称号。魅了率上昇』
…さっきの一見で追加されたらしい。
そうそう、このゲームにおけるもう一つのスキル?それが称号である。
ジョブ、基礎技術と言い難いステータス上昇や特殊の能力付与などは基本的に称号という形を取る。
しかしこの称号、与えられるかもランダムな上、同じ名前であったとしても説明文まで個々人で違う、といういい加減な代物なのだ。
上昇率も期待できる物ではなく、実際は運営手書きの「がんばったで賞」の仲間ではないかなんて言われている。
だが、彼女はその称号を見て婉然と微笑んだ。
――称号、つまり変なことをしろって事だろ?面白いじゃぁないか。
それが、彼女の答えだった。
アインブルクの町並みは中世ヨーロッパの建築、というかティンバーフレームを連想させる物である。
古ぼけた木の枠に意志が整然と積まれ、いかにもという雰囲気を作っている。
だが上下水はしっかりしているらしく嫌な臭いはしないし、道はかなり広く二台の馬車がすれ違っているのも見た程だ。
しかし特徴的なのは人々…の腰だろう。
皆が皆、質はともかくガチャガチャと剣や手斧を下げている。
狩猟用の鉈でもないし、時にはシャツのように薄手の鎖帷子に、メルトの輪っかをぶら下げて剣をぶら下げている男まで居る。
で、ふつうならこんな状況、もっと殺伐としているはずなのだ。
戦時ならもっと武装するが、にしてもみんな剣を持っているのにこんなに穏やかなのも不思議な物である。
まるで何事もないようにほがらかに、長閑に日々を過ごし働いている。
女性ですら腰にダガーをぶら下げている始末だのにだ。
やはり、モンスターが出る世界は文化が違うんだな。
そう思うと、これからの冒険が少し楽しくなった。
とりあえず装備を買おう。
露店で買ったイエローベリーのパイとやらを囓りながら、俺は店を物色する。
ホコリも禄に立たない堅牢な石畳の道をカツカツ歩けば、色とりどり…というには重厚な色合いの店達が俺を出迎えた。
「やっぱ基本はヨーロッパっぽいよなー」
翻訳機もあるしヨーロッパなんてそう遠い時代でもないのに、ゲームはいつまで経ってもこういう町並みを基本にする。
まぁ文化なんて物はそんな物か。
指先に付いたジャムをぺろりと舐め取ると俺は一つの店に目を向けた。
「やっぱダガー欲しいよなぁ」
この世界では鍛冶屋と武具店に明確な差がないことが多いらしい。
槌撃つ響きの手前では店番の徒弟だかがせせこましく客あしらいをしていた。
で、ダガーである。
ここで彼女の所有物を見ると、まず初心者の服。
そして初心者の長杖、初心者の練金道具、初心者の弓矢、初心者の鍵開け道具と続き、まぬけの財布がある。
で、ダガーだ。
初期装備にはないが、盗賊があるのだ。短刀くらいなら使えて当然だろう。
なにより弓が最初から使い物になるなんてほど甘い考えは持っていない。
NPCらしき女性達を観察して見ても大抵持っているわけだし、この世界で女性が短刀を装備することはむしろ自然な事のようだ。
なら郷に入っては郷に従え、初心者向けの一本を買い求めよう(他人の金で)と店先を見た時…
その一本の短剣に目を引かれた。
形はなんと言うことのないダガーだった。
だが淡い木目のような縞模様を見せる肌が、吸い付くように目を引いて離さない。
彼女がごくり、と喉を鳴らすと同時に、同じく喉を鳴らす音が手前から聞こえ、彼女は正気に戻った。
「お、お客さん…お目が高いですね!それは最近出来た最新の鋼で出来た一品ですよ!」
良いながら店員の視点は若干身体の端々を走り回っている気がするが、もう気にする気にもならない。
「そう、ならここで最高のダガーってわけね?」
「そそそ、そうなります!」
次の瞬間、彼女は台に身を乗り出し、甘い吐息を零しながら言葉を続けた。
「なら…おいくらかしら?」
ついでにこのナイフも買うわよ?と汎用性の高そうな普通のナイフも手に、彼女はさらに身を近づける。
「そそそそそそれは…!」
まぬけの財布。まぬけの店員。とかく男の脳は下半身にある。
実感があるから分からないでもないがもうちょい何とかならんのか。
なんとか金額が足りるまで値引きさせたダガーの重みを腰に感じながら、男って奴は…と慨嘆に耽る。
さぁ、次は訓練場に行って弓とダガーの練習だ。
…そういえば矢の調達がすっごい面倒だったらどうしよう…
誤字修正しました