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はじめまして


「いや~野郎の制服姿と違って花あるわねぇ」


叔母さん。私より顔の偏差値が高い下宿人の方をみた方が本気でいいと思う。初日だし皆で揃って学校に行きなさいと追い出され、多くの相田千村の高齢者住民に「あれが男を侍らせるっていう……ハーレムってやつかしら?」「違う違う。確か逆ハーレムよ!」お婆ちゃん達この状況を理解したらそんな可愛らしいこと言えない。冗談抜きで自分より高い人たちに回りを囲まれて歩く恐怖。絶対に共有できないから。


「今日からお世話になります。高梨悠莉です」


私の在籍するクラスは男女比は半分半分。勿論、中学生も高校生もいる。こっちのクラスは相田千村に元々住んでる人しかいないらしい。相田千村の高校生は中学までここで勉強して高校になると、都会で下宿するのが一般的らしい。


「高梨さんは先日この村に来たばかりなので皆さん、よろしくお願いします」


窓側の3列目。ほんのりと陽射しを浴びている席。そこが私の席である。


「わぁ~。外から女の子がくるの久し振り! 私、船井慶子。高校一年生。よろしくね、たかなっちゃん」


凄く自信に満ち溢れてる子。きっと、ここではお姉さんみたいな存在なんだろうな。高い位置で結い上げられた髪が左右に揺れる。


「けい、お前すぐに体が動く癖どうにかしろ。見苦しいから。あ、俺は津田翔琉」


「ちょっと、今は私が話してるのー。翔琉は黙ってなさい」


ヒートアップが予想されたバトルは始まる前に花巻先生が終止符を打った。さすが、やればできる先生。


「じゃあ、一時間目は自己紹介にしようか」


その後、次々に自己紹介が始まった。上は高校生三年生から下は中学一年生まで。総じてみると中学生の方が多いみたい。思った通り、昨日図書室で会ったのはみんな隣のクラスみたいだ。

  

「昨日図書室に来てたんでしょ?」


「うん、来てたよ」


そう言ったら女子中心に詰めより始めた。何事!


「え、じゃあ。プリンス達に会ったの!」


……プリンス。叔母さんが車の中で言っていた王子様プリンス・アイドルって話、あながち間違って無かったみたい。先生まで、和気あいあいと私の出方を待っている。


「叔母さんの下宿先の人ってだけで、特に関わりはないかな?」


えー、凄く羨ましいという中学生組とあの巣窟に住んでるのと高校生組。この差は何なんだ。


「プリンスの下宿先って、彩里さんのところでしょ? たかなっちゃん平気?」


「その反応はよくあの人達もしてるけど、叔母さんは凄く心配症で凄く優しいよ」


「彩里さんを手玉に取るとかユーリ最強! けいはよく遊ばれてんもんな」


「翔琉だってそうじゃん。彩里さんの毒牙がかかってないのはたかなっちゃんだけだよ」


叔母さん、私の知ってる叔母さんと相田千村の知ってる叔母さんにはちょっと違いがあるみたい。本当に叔母さんここに来て何を仕出かしたんだろう?


「次の授業は芸術ですから、静かに移動を始めましょうか」


はーいと元気よく返事をして駆け出した。


「皆さん、静かにです‼」


「先生も大変ですね」


あははと空笑い。大変なんですね。

所謂進学クラスの横を通って2階へ上がるのだが、進学クラスを除くと鹿倉くんやあの人達が真面目に授業を受けている所を見た。勉強という意識からこの人達には追い付かないんだろうなとふと思った。先生と二人でゆっくり歩いていたからか、後ろから駆け足の音が聞こえてきた。


「あぁ。第二派がくる。悠莉さん、端に避けましょうか」


花巻先生、相当疲れがたまっているのでは無いのだろうか? 弱冠病んでいる。そんなこと考えたいたら目の前を猛ダッシュで小学生組が駆け抜けていく。


「ここはサバイバルだからね、悠莉さんも急いだ方がいいかも知れません」


サバイバル? 何をそんなに急ぐのか。先生、私は教えて欲しいです。でもまぁ、急げと言われれば急ぎます。トットットと駆け足で芸術教室に駆け込む。


「遅いよ~たかなっちゃん! はいはい、座る」


船井さんに言われた席に腰を下ろせば、今度は次々と進学クラスの人が入ってくる。私の隣が空いているから誰かくるのか? 

そんな私の憂鬱はすぐに解消された。


「ユーリさん隣いいですか?」


愛らしい顔した鹿倉くんが目の前に現れたからだ。


「うん。どうぞ」


「ありがとうございます」


鹿倉はよく照れる凄く可愛いんだけども。私も照れる。


「あ~! さすがたかなっちゃん。しーくんを捕まえるなんて」


「捕まえるって、バカかお前は」


「えー」


全員が席に着いたところで先生が入って来たのだか……。

叔母さん何してるの??

こそこそと船井さんが耳打ちしてきた。


「もしかして、知らなかった?」


「うん。でも、元々オーケストラやってたから納得」


「えぇ‼ 彩里さんオーケストラ入ってたの‼」


船井さん、なんのためにこそこそ話してたの。叔母さんめっちゃ見てるよ。


「また、船井ぃ? あんた少しは大人しく授業受けなさい!」


「はぁーい」


しょぼんとする船井さん。タイミングが悪かったねごめんよ。


「じゃ、授業始めましょ。まず、転校生の高梨悠莉を紹介するわね。ほら、ユーリおいで」


目立つ事をしている叔母さん程輝いている時はない。こう言うときの叔母さんは止められない。渋々前にいる叔母さんの横にたつ。


「私の姪で基本的になんでも出来る万能系女子だから、みんなよろしくねぇ」


「高梨悠莉です。よろしくお願します」


そう言って席に戻ろうとしたら後ろから襟首を捕まれた。


「ユーリ、ちょっと待ちなさい。ユーリ、まだ余裕で声出せるわよね」


「出せないことは無いけど……」


「はい、最後に教室に入って来たの誰」


叔母さんが声をワントーン下げて周囲に聞く。


「今日はかなちゃんだよなーはな?」


「うん、今日はかなちゃんだよ!」


澤村さんの隣には昨日のはなちゃんがいた。この兄弟は癒される。はなちゃんは私に気付いて手を振ってくれる。


「早く出なさい叶多」


「わぁーてるよ。くそっ!」


「音確認する?」


「いらねぇーよ、ばばぁ!」


「おめぇには聞いてないっつの。いる?」


「大丈夫」


叔母さんはピアノを弾く。この曲は神の讃美歌。授業でこんな歌歌うの?

疑問が残りつつも大きく息をすった。叔母さんが満足する様に歌えばすぐに解放される。


「さすが、ユーリ完璧。叶多! 何で前より下手くそになってんのよ! ユーリの歌い方真似しなさいよバカ!」


「バカじゃねぇよくそ! こんなん、合わせるのなんて無理だっつの‼」


「あら? そう言い方だとユーリを敵に回すわよ。」


「はぁ? 知るかそんなもん」


二人の喧嘩がヒートアップの予兆が見え始めた。回りの状況を見ると何時もこんなもんみたいだ。今度こそ、席に戻ろうとしたら、今度は松田さんが手招きしてる。恐怖だ。よたよたと霧島さんが座っていた席に着けば下宿では見たこと無いような爽やか笑顔で迎えられた。思わずヒッと小さく悲鳴をあげてしまった。


「女の子に悲鳴をあげられたのはいつぶりかな?」


黄色い悲鳴なら浴び放題なのでは……。


「今日の帰りの話だよ。朝みたいに俺らに囲まれて下校したい? 俺は別に構わないけどね」


私はすこぶる困る。絶対に嫌だ。


「嫌だ。それなら、船井さんか津田さんと帰る」


「相変わらずぶれないなぁ。でも、それだと俺らが彩里さんにどやされるんだけどな」


「私には被害ないもの」


これだからガキは……と聞こえたのですかさず変人だものと挟む。これには松田さんも笑った。


「そうだね。今日は叶多と帰っておいで?」


「わかった。霧島と帰る」


霧島さんと叔母さんの喧嘩がそろそら終わりそうだったので、席に戻ろうと霧島の席から立つと神埼さんに声をかけられた。


「ちゃんと授業受けろよ」


「……受けてます」


出来るだけ素っ気なく返事をした。だって、神埼さんの隣に座ってる美人さんに睨まれているのに気付いたから。

席に戻ると、鹿倉には歌を誉められ、船井さんと津田さんには松田さんと何を話していたか聞かれた。

勿論、当たり障りない事を適当にいって誤魔化したけれど。

それにしても、私の事睨んだ女の子人誰なんだろう。



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