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三人がとぼとぼ家路に向かっていた頃、富田荘では彩里さん会議が行われていた。


「あんたらねぇ。少しはユーリの事構いなさいよ!」


「彼女は僕達とは距離を起きたいようだったけど?」


各々スマホをいじったり、新聞を読んだり。


「星羅、貴方は人の命の尊さを知ってるわよね。なら、無駄な命散らされたくないわよね?」


新聞からやっと目を上げた。来季も亜久里もやっと真剣に話を聞き始めた。


「最近お茶の間を騒がせた、家庭内暴力の事件。事件のその日まで家族は仲睦まじいと有名だった。その均衡を一人で保っていたのはあのこよ。両親の期待、友人関係。何時も笑顔だった彼女は壊れた。母親の一言で」


チクタクチクタク―――


「貴方なんて生まれてこなかったらよかったのに」


「もう、いい。わかったから。高梨の面倒は俺が見る」


手に持っていた新聞は目も向けられない程、無惨な姿で床に転がる。


「星羅が見るなら、俺もやるー!」


「僕は遠慮しておくよ」


来季は席を立ったが彩里さんに睨まれて、渋々腰を下ろした。


「最後まで聞きなさい。あの子の手首にはリストカットの後が残ってるし、事件の後遺症で母親との生活に耐えられなくなってここにきたの。彼女はここにきたのは自分の罰だと思っている。あの子にとって、自分自身と言うのは出来るだけ出したくないものよ」


彩里さんは三人を見て頭を下げた。


「あんた達にしか頼めないの。あの子に必要なのは深いところにまで踏み込んでこれる自分勝手で無神経な人が適任なの。だから、お願いします」


そんな緊張した雰囲気は多恵さんのご飯の準備ができましたよーで幕を閉じた。


「ただいまー」


「ばばぁ、ちゃんと連れてきたぞ!」


「失礼します」


三人も帰ってきた。食堂に入る暖簾の下からユーリが顔を出した。


「叔母さん」


「なぁに、ユーリ?」


「どうして、明日から学校だって教えてくれなかったの?」


「叔母さん言ってなかったけ?」


「いってないよ」


ユーリごめんね~。彼女に謝り倒す彩里さんの姿に未だに五人は馴れなかった。


「ばばぁくそだな」

 

「ばばぁ言うな叶多ちゃん!」

 

頭ぐりぐりされる霧島さん、ざまー。結構痛いんだよね。容赦ないから叔母さん。ささっと手を洗って多恵さんから夕飯を貰い、一番端の席に腰を下ろした。


「ねぇ、ユーリ。私と三つの約束をしましょう?」


持った箸を箸置き戻すと叔母さんは私の隣に座った。


「一つは一ヶ月間一人で外に行かないこと。ニつは自分を偽らないこと。三つにこの五人の誘いを断らないことよ」


「叔母さん。それはお願い?」


「えぇ、そうよ」


「なら、私はその願いを叶えるよ? だって、叔母さんが間違った事言ったことないものね」


頭をがじがしと思いっきり撫でて叔母さんは食堂を後にした。片手で軽く髪を整えるが、早々諦めご飯を食べる。

がしゃんがしゃんがしゃんと次々に私の回りの席を埋められて行く。何事。


「あれぇ? ユーリのご飯少なくない? 俺のおかずいる~?」


急に横から顔を覗かれ思わずのぞける。椅子がガタンと音をたてる。こんな愛くるしい顔して先輩とか反則だ。


「これでも多いくらいなので平気です。お気遣いどうも」


「そう? ユーリはかたいなぁ。あ、俺の事はあぐりんって呼んで!」


「ちょと、亜久里ちゃん~。あからさまに怯えてるよぉ?」


「タビオよりは誠実だと思うんだけどなぁ」


「そうだね。旅人はもうちょっと女性関係をしっかりする事をおすすめするよ」


「えぇ~。来季さんまで亜久里ちゃんの味方なの?」


「俺には叶多ちゃんがついてるし~。黙ってれば叶多ちゃんまじ天使だからぁ」


「おい、旅人それ以上言うとぶっ殺す」


「きゃー、怖い」


何なんだろう、この茶番。とても食べづらい。前の人からの視線が気になる。一番なに考えてるのかわからない神埼星羅さん。


「美味しい?」


その問いに頷くと神埼さんは満足そうな表情を浮かべると頭をぽんとした。


「そうか。なら、もっと食べろ」


「無理です」


そう言うと何をつぼったのか笑いだした。


「でたよ~不思議くん代表星羅さん。ちょっと、来季さんどうにかしてくださいよ~」


「あれは素だから無理だよ。」


「ユーリちゃんどうにかして~」


青菜の漬物を食べていたユーリは一瞬固まったが直ぐに動き出した。


「私は変人らしいのでむ―――」


彼女が言い切る前に机の端の方でおしるを吹き出した人がいた。


「叶多、汚いよ」


「女の子がいのるにそれはないよ。ねぇ、タビオ!」


「そ~だね~。ビジュアルに自身があってもそれはねぇ~」


「うっせぇ! くっそ‼」


「全部食べて偉いな早く食器を下げてお風呂に入れ」


この人、本当にフリーダムだな。このタイミングで食べ終わった私も私なんだろうけど。


「お言葉に甘えさせて貰います」


多恵さんにごちそうさまをして、お手拭きを貰い、霧島さんに届けてから部屋に戻った。おしぼりを受けとるときの霧島さんの顔、結構怖かった。一番風呂楽しみ。


「優しいねぇユーリちゃん。ちゃーんとお礼言わなきゃね」


「わかってる」


「早く拭きなよ」


「わかってる。くそ!」


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