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気分転換

朝、いつも通りに起きて食堂で早めに一人で食べる。多恵さんが早いのねと声をかけてくれた。町をぶらぶらしたいのでと言うとおすすめスポットを教えてくれたので早速行ってみることにした。


現在時刻6時半。


多恵さんは早起きなんだな。相田千村の朝は霧が深く迷いやすい。そう言われるのわかる。だって、真っ白。出る前に一枚着ておいて正解だった。田んぼが村のほとんどを閉めているが中心部に向かうに連れて家の数が増えていく。一歩一歩ゆっくりと進む。街灯が無いから足元がよく見えない。商店街を抜けると二階建ての木造の建物がずしりと建っている。相田千村・小・中・高等学校。これがあの有名な相田高校かぁ。木造の校舎なんだ。学校に行くのが楽しみ。


「あの、どなたですか? もしかして、転校生の人?」


不意に声を掛けられて振り向くと懐中電灯を持った男の子がいた。正直油断していた。まだ、朝も早いし誰にも会わないと思っていた。


「はい、転校生の高梨悠莉です」


愛想よく笑い頭を下げる。


「やっぱり、よかった。僕は中等部の鹿倉周です。よかったら、校舎を案内しますよ先輩」


「私はまだ先輩じゃないですよ。鹿倉くん、お言葉に甘えてもいいですか?」


はい。では、どうぞ。そう言われて私は校舎の中に足を踏み入れた。鹿倉くんはどこからかスリッパを持ってきてくれる。出来た子なんだろうな。なんて、頭の隅で考えてすぐに消す。じゃないとここに来た意味がなくなってしまう。トイレに職員室、教室。どれも木で出来ているからか暖かみがある。落ち着く。


「えっと、ユーリさん?」


少し照れ臭そうに私の名前を呼ぶ鹿倉くん。あれだ、母性本能をくすぶられる可愛さ?


「なに?」


「ここが最後で、図書室です。休みの日は高校生の方々が僕達の勉強を見てくれるんです」


あぁ、これが昨日叔母さんがいってた勉強会か。図書室いっぱいに押し込まれた本。机には落書きだられだが、悪い感じはしない。


「鹿倉くんはどうしてこんな時間に学校にいたの?」


「僕は図書当番なんです。朝早くから自主学習にくる生徒が多いんですよ?」


そんなんだ、と相槌をうちながら窓の外を見据える。霧が無くなってきた。それに、そろそろ帰らないと嫌な予感がするし。


「私、そろそろ帰ろうかな」


そう言った直後、朝日に照らされた天使が現れたならよかったのに。そこに現れたのは金髪ヤンキーと女たらし。


「なにしてんだよ、こんなところで」


「そ~だよ~。彩里ちゃん心配してたよ~」


凄く頭にくる言い方。でも、そんなの馴れてる。どうでもいい。私がその場から立ち去ろうとしたとき、隣にいた鹿倉くんが大きな声でいった。 


「ユーリさんは悪くないんです。僕が引き留めたから……。だから、ユーリさんのこと悪く言わないで下さい」


がばりと深く頭を下げる鹿倉くん。どうしてこんなに真っ直ぐなんだろうな。面倒な事に頭を突っ込んで。本当にほっとけない。


「優しいんだね、鹿倉くんは」


今、自分は自然に微笑めていると思う。ぽんぽんと鹿倉くんの頭を撫でる。


「ご迷惑をかけてすみませんでした。多恵さんには出てくると伝えたんですが……次からは叔母さんにも声をかけてでますね」


入口に突っ立ていた二人にお外行きスマイルを残し、少し駆け足で富田荘に帰る。二人が言った通り叔母さん夫婦はきっと心配してると思うから。一人でいると何をしでかすかわからないしね。


私は無意識に右手の手首を握っていた。


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