初日の出会い
「久し振りだね、悠莉ちゃん。長旅お疲れ様。彩里の相手は疲れたでしょう?」
「正治さんお久し振りです。叔母さんのお陰で、退屈知らずでここまでこられました」
「ちょっと正治、それはどういう事?」
いいこだなー、悠莉ちゃんはと叔母さんをスルーする正治さん。さすが夫婦。
叔母さん夫婦は《富田荘》と言う下宿をしていて、私はそこにお世話になるのだ。下宿生は私を含めて6人、私以外男らしい。叔母さんいわく、どんなに頭が良くてもこんな山の中に住みたがるお嬢さんはいないそうだ。私は何なんだろうな。でも、ちゃんと相田高校には女の子もいるらしいので……。
私に与えられた部屋は三階の角部屋。畳でタンスと机、扇風機。窓の所には風鈴がぶら下がっていて、押し入れのや中には布団が入っている。
(もう寝ようかな)
計四時間の長旅で疲れがたまってる。押し入れに入ったままの布団に顔を埋めると眠気が……。
「あ、変人がいる」
はい、変人です。ドアが開けっぱなしになっていたらしく、下宿生に醜態をさらしてしまった。それよりも眠い。
「お休みなさい」
「はぁ? おい! 立ったまま寝るな変人、倒れるぞ! 言わんこっちゃねぇ‼」
誰かに支えられたところで悠莉は意識を落とした。
「おい、起きろよ! ちぇっ、声なんてかけなきゃよかった」
「なに叫んでの~叶多ちゃん。あっれぇ~逢い引きかい? ハレンチだなぁ~」
「はやく布団に寝かせて退散した方が言いと僕は思うよ。その子、彩里さんの姪らしいしね。じゃ」
「待てよ、メガネ! 手伝えって」
「叶多ちゃん、ちょっとだまろっかぁ~。この子が起きるのも彩里ちゃんに見つかるのも面倒だからね?」
「ちぇっ。わかってるっつの!」
⭐
あれ? 私、いつ布団ひいたっけ?
お昼頃着いたはずなのに既に窓から差し込む光は茜色だ。思い出せ自分。確か、下宿生に変人呼ばわりされて……思い出すのは止めよう。布団をたたみ端に寄せる。
「ユーリご飯よー!」
一階にある食堂に行くと叔母さんと正治さんがテレビの前の席で待っていた。台所には可愛らしいお婆さんがいて目があったので軽く会釈すると微笑み返してくれた。
「あ、もしかしてずっと寝てた? 長旅だったもんね~」
「本当だ、目がとろんってしてる」
「すみません。何もせずに」
「いいよ、いいよ。温かいうちにご飯食べちゃいましょ。ばかどもは勉強会で帰りが遅いから食べちゃいましょ! 今日も多恵さんがご馳走作ってくれたから」
「ほら、悠莉ちゃん」
正治さんに促され席につき、改めて今日の夕飯をじっくりとみる。筑前煮に鯖の味噌煮、漬け物に……。一口ぱくりと口にいれると美味しい。久し振りに温かいご飯を食べた。
「とっても美味しいです。いつもこんなに食べれるんですか?」
「食べれるわよ~。そんなにご飯を放馬って、可愛いんだから」
ぱくぱくと箸をすすめると玄関の方から、ガラガラと複数の足音が聞こえた。
「あ、あいつら帰ってきたわね。紹介するわね~。あんたら、さっさっと手を洗って食堂にきなさい~! 彩里さん命令よー!」
彩里さん命令??
きっと、顔に出てたんだろう。正治さんが私の疑問を解消してくれる。
「見たままだよ。ここは彩里の独壇場だからね」
ぞろぞろと足音が食堂に向かってくる。私は夕飯が乗ったお盆を持って、テレビの前から正治さんの隣に腰を下ろした。正治さんは何か言おうとしたが、言わなかった。私はその気遣いがとても嬉しかった。
「多恵ちゃん、今日も美味しいご飯ありがと~」
「ありがとうございます」
「今日もおかわりある?」
「亜久里進め、つまるだろ?」
「はーい」
「速くすすめや!」
次々お盆を多恵さんから受け取り私たちがいる机に次々座る。机の回りをぐるっと見て、確かに顔面偏差値は高いですね。ただ1つ言えることは、どこをどう間違っても私の王子様では無いことだけは断定できる。
「あら、ユーリ。いつ席移ったのよ~。しょうがないわね。……紹介するわ。高梨悠莉、私の姪。訳あって、私が預かることになりましたぁ~。泣かせたら殺すからそのつもりでね~」
あぁ、そう言えば私の事変人呼ばわりした人もこの中に居るんだ……。
「ほーら、自己紹介しなさい?」
どうしてだろう。爽やかお姉さんの叔母さんの笑みが黒い。
「はーい! じゃあ、俺から! 澤村亜久里、高校二年生。選択は文系でぇーす! よろしくね、ユーリ」
茶髪で前髪をポンパドールにした以下にも犬見たいな彼は先輩。
「俺は来栖旅人。彼女は絶賛募集中だよ~。悠莉ちゃんと同じ一年生」
黒髪だけどロン毛でパーマかかってる。女関係爛れてそう。
「霧島叶多、高校一」
金髪ストレートでいかにもヤンキー。でも、顔は美人。
「松田来季、高二。選択は理系よろしく」
黒髪メガネ。腹黒そうだ。
「神崎星羅、高二」
黒髪だけど、なんか凄く髪型がお洒落。編み込んでたり……。
全員の自己紹介が終わると思い思い夕飯を食べ始めたので、そうゆうものかと食器を片付けにいこうとすると叔母さんに視線で止められた。
「お前ら、のうのうとしてるけどねぇ。この子の面倒ちゃんと見なさいよ。なんかあったらでてってもらうかんな?」
「わかってんよ~。彩里ちゃんが心配することはないよ~」
空気の悪いまま夕飯の時間が過ぎていった。げど、お皿を下げるときに多恵さんにご馳走さまでしたって言えてよかった。
私はあの面子と、出来るだけ関わらないようにしようと心に決めた。




