冷たい風
秋山は、牙を追って事務所を飛び出し、街を走って牙を捜索していた。
秋山「くそっ…どこ行ったんだ牙の奴……ん?」
彼の目には、レイと対峙する牙が映った。
秋山「やっと見つけた…誰だ?牙と一緒にいる奴は…」
牙と話す黒帽子の男に、秋山は違和感を覚える。話の内容は聞こえないが、少なくとも親しい間柄でないことは確実であった。
しかも帯刀しているその相手に、秋山は一瞬で危機感を覚える。
秋山[どうする?様子を見るべきか?それとも…]
と、微かに牙の声が聞こえてきた。
牙「マヤの家族が殺されただと?」
秋山[なっ…]
その言葉に秋山は驚愕した。更に、黒帽子の男の声も聞こえた。
レイ「ああ。お前さんの父親を殺した奴にね」
秋山[マヤの家族が殺された…!?牙の親父も…!?]
たまらなくなった秋山は、隠れていた塀から飛び出し、2人に駆け寄った。
秋山「おい!!」
牙「秋山…」
レイ「おやおや…」
秋山の突然の登場に、レイはほとんど動じず、といった感じだった。
秋山はレイに対して「てめえは誰だ!!今の話はどういう事だ!!マヤの家族や牙の親父を殺したってのはどこのどいつだ!!」と、矢継ぎ早に質問した。
大変な剣幕の秋山の問いに、レイは飄飄とした様子で答える。
レイ「質問が多いねえ…先ずは最初の質問に答えるよ。俺の名はレイ」
秋山「レイ…」
レイ「次に2つ目の質問だ。簡単な話さ。5年前に牙の父親を殺した奴が、先日マヤの家族を殺した」
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一方、事務所では…
アヤメ「それで路頭に迷って…牙のいるこの事務所にやって来た…」
マヤ「はい…」
さんざん泣きはらして、ようやく落ち着いたマヤが答えた。
マヤ「4年前の夏、仇討ちに出ている牙さんと出会って、お父さんがお亡くなりになった経緯を聞きました」
マヤの言葉に、アヤメとシュラギは険しい顔になった。
アヤメ「4年前の夏…牙は1ヶ月ほど姿を消した事があった…」
レオ「そうなのか?」
レオの問いかけにアヤメはコクッと頷いた。それにシュラギが付け足すかのように言う。
シュラギ「そして1ヶ月後…ボロボロになって帰って来た…」
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レイ「って訳だ。要は仇の首を仕損じたって訳だな」
レイの言葉に牙は沈黙する。
レイ「もっと言えば、お前さんがちゃんと仇を討っていれば、マヤの家族は死ななかっただろうね」
牙「黙れ!!」
牙の怒号に、レイは一瞬閉口する。だか、ニヤリと笑い、再び喋りだした。
レイ「しかしお前さんらの事務所には、何か抱え込んだ人間が多いね」
レイは秋山の方を向いて話す。
レイ「秋山さん、あんたもまた然りだ」
牙「!?」
秋山「…」
レイは更に何かを話そうとしたが、秋山に遮られた。
秋山「最後の質問に答えろよ」
レイ「…そうだったね…。殺し屋の名は"リョウキ"。今は港から西へ八キロ程度の小島を陣取ってるぜ」
その話を聞いた牙は、静かに口を開いた。
牙「奴の居場所を教えてくれた事には感謝する。だが、貴様に気を許した訳ではないぞ」
レイ「ほお…そうかい」
レイは何やら紳士的に帽子の日除け部分をつかみ、軽くお辞儀すると、そのまま去っていった。
秋山「…読めない奴だ…味方なのか?」
牙「分からん。だが、この際そんな事はどうでもいい」
そう言うと、牙は秋山のもとを離れていった。
秋山「ちょっと待てよ!」
牙「…」
冷たい風が辺りを吹き抜けた。牙の心情を表したかのように…




