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SAMURAI―侍ー  作者: megu
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一之瀬マヤ

サムライの事務所は、突然の来客に沸きだっていた。一同は、牙と、彼を訪ねて来た一之瀬マヤを囲むようにして並んでいた。


牙「…皆、少し見すぎではないか?」


秋山「いやいやいや、この状況を無視しろって言う方が無理あるだろ」


秋山の言う通り、普段真面目な牙に、高校生とは言え女性が訪ねて来ればこんな空気になるだろう。


いや、寧ろ相手が高校生だからこそざわつくと言えよう。


アヤメ「牙…あんたまさか普段の異常な硬派の反動でJKに手出ししたんじゃないでしょうね?」


マヤ「違いますよ!」


本人が否定するよりも早く、マヤが叫んだ。


マヤ「4年前の事でした。私が殺し屋に追い詰められていた所を、牙さんに助けて頂いたんです」


秋山「そうなのか牙?」


秋山の問いに、牙は「ああ」と言いながら頷く。すると、シュラギが口を開いた。


シュラギ「4年前っていったら、俺らがちょうどマヤくらいの歳の時だな。にしてもお前、そんな事一言も言ってなかったじゃねえか」


牙「すまん…」


牙は少しシュンとしたように謝った。すると、シュラギもどこか拍子抜けしたような口調で言う。


シュラギ「いや…別に謝らなくていいが…」


そして少し考えてから…


シュラギ「まあ、あの頃お前大変だったしな」


アヤメも、少し表情を曇らせて「そうだね」と言った。


秋山、レオ「?」


秋山とレオは、2人の様子に一瞬違和感を覚えたが、取り立てて言うほどでもなかろうと、とりあえず流した。


レオ「って事は、その子は牙と一度しか会ってないって事か…」


シュラギ「まあ、命の恩人だからなあ。かなり印象に残るだろう」


盛り上がる周囲と反比例して、牙本人は冷めきった様子。そして、マヤの腰の刀に目をやると…


牙「マヤ、まだサムライをやっているのか?」


マヤ「えっ…あ、はい…」


牙の問い詰めにマヤは戸惑いながら答える。


牙「足を洗えと言った筈だぞ」


牙は柔らかい口調で、しかし少し厳しい表情で言った。


マヤ「…すみません…」


牙「拙者は少し出てくる」


マヤ「あっ…牙さん…」


マヤは牙に何やら伝えようとしていたようだが、牙はそのまま出ていってしまった。


レオ「おい牙…」


アヤメ「どうしたのかしら…」


秋山「俺、ちょっと見てくるわ」


秋山はそう言って事務所を飛び出した。


アヤメ「お願いね秋山!!…さてと」


アヤメはマヤの方を向き直り、優しく問いかけた。


アヤメ「マヤちゃん」


マヤ「は…はい」


アヤメ「何か訳ありみたいね?良かったら話聞くけど?」


アヤメはそう言いながらマヤの頭を優しくなでる。


アヤメ「私は西村アヤメ。牙とは知り合いだから、少しは力になれると思うよ」


マヤ「はい…ありがとうございます」


マヤの表情が、少しだけ柔らかくなった。


レオ「なあ、シュラギ」


シュラギ「どうした?」


レオ「さっき、牙はあの頃どうしたとか言ってただろ?」


シュラギ「ああ…あれはな…」


シュラギは、レオだけに聞こえるようこっそりと話した。別段うしろめたい話ではないが、何となくそうした。


シュラギ「5年前…俺達が中3の時かな、あいつの親父さんが亡くなったんだよ。それも殺しでな」


レオ「はあ…」


シュラギ「その親父さんの後を継いで、あいつは一族の長になったんだけどそう言う家柄関係の話も含めて、高1くらいまではかなりゴタゴタしてたんだよ」


レオ「そうだったのか…知らなかったな」


シュラギが話終えた途端、マヤの話を聞いていたアヤメが慌て出した。


アヤメ「ど、どうしたの!?」


シュラギ「ん?何だ?」


見るとそこには、まるでずっと張り詰めていたものが切れたかのように泣きじゃくるマヤがいた。


マヤ「ひっぐ…ぐす……」


アヤメ[やっぱり何か訳ありみたいね…]


アヤメはそう確信した。


一方、牙は街を歩いていた。


すると、聞き慣れた声が背後から彼を呼んだ。その声の主は…


レイ「やあ、また会ったね」


牙「レイ…!!」


レイ「おや、覚えてたのかい。まあ、いいや。さっき、あんたの事務所にマヤって子が来ただろ?」


牙「!!」[こいつはどこまでお見通しなのだ?]


いささか驚いた牙は、努めて冷静な態度をとり、レイに話す。


牙「それがどうした?」


牙の問いに、レイはニヤリとしながら答える。


レイ「彼女の家族が殺されたよ。お前さんの父親を殺した奴にね」


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