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SAMURAI―侍ー  作者: megu
3/11

2年前の冬に…

アヤメ「秋山、ちょっと頼まれて貰っていい?」


秋山「何だよ」


突然アヤメに頼み事をされ、秋山は少し不機嫌そうに返事をする。どうやら、近くのコンビニへ買い出しに行ってほしいという事らしい。


秋山は「自分で行けよなそれくらい…」と、文句を言いながらも出発した。


シュラギ「結局行くのかよ」


アヤメ「うん。結構素直だね」


実際、秋山のそういう所をアヤメは嫌いではない。


シュラギ「にしてもあいつは何なんだろうな」


アヤメ「どういう事?」


シュラギの問いにアヤメは怪訝な顔をする。


シュラギ「秋山って自分の話を一切しようとしないしよ、それでいて強さも群を抜いてるっていうか…」


アヤメ「まあね…」


シュラギ「アヤメが見つけてきたんだろ?どんな奴だったんだ?」


アヤメ「そうね…あれは2年くらい前…」


――――――――――――――――――――――――――――

―2年前―


あれは、雪の降る日に…私が何気なく公園に立ち寄った時の事だったわ。公園に入って、ふと植木の根元に目をやると…その時私が高3だったかしら…それと同い年くらいの男の子がいたの。


植木に寄りかかるようにして座り込んでいて、顔は見えなかったけど、綺麗な白い髪がやけに印象的だった。


…ただその子、血だらけだったの。怪我をしたんじゃなくて、返り血だって事がすぐに分かったわ。


そして、鍔のないやたら長い刀を持ってた。何かあったことは明らかだったけど、とりあえず声をかけてみることにした。


アヤメ「君大丈夫?どうかしたの?」


少年「…」


その子は黙ったまま、答えなかったわ。そっとしといた方が良いかと思ったけど、なんか出来なかったのよね…。


アヤメ「ねえ…救急車呼ぶ?どっか痛いの?」


少年「うるせえ…」


まあ…客観的に見たらちょっと私、鬱陶しかったかもしれないわね。けどその時は腹が立って…


アヤメ「何よもう!!こっちは心配してやってるのに!!」


少年「余計なお世話だ」


アヤメ「なっ…」


あんまり腹が立ったから、そのまま公園を出ちゃったわ。それからしばらく、その公園には行かなかった。


2ヶ月くらいして、またその公園に行ってみた。そしたらその子、あの時と全く同じ状態でそこにいたわ。


少年「何だよ…また来たのか…」


アヤメ「あんたこそまだここにいたの?」


少年「…どこにも行くところなんてねえよ…」


その子は何て言うか…生気を失ったような感じだった。でも不思議だったの。そんな夢も希望も失ったような彼が、何でここに留まり続けるのかって…何か未練でもあるのかって…そう思ったわ。


更に2ヶ月経って、私はまたその公園を訪れた。そしたらやっぱりそこにいたわ。その子。私は、思い切ってこんな事を言ってみた。


アヤメ「ねえ」


少年「…何だよまたお前か。うるせえって…」


アヤメ「あんた、私の仲間にならない?」


少年「はあ!?」


その子もさすがにビックリしてたわ。「こいつ何言ってんだ?」みたいな感じで。


アヤメ「私ね、今事務所立ち上げて仕事してるんだ。『サムライの事務所』って言うんだけど」


少年「…」


アヤメ「その刀からして、あんた"普通の人間"じゃないでしょ?だからさあ…」


少年「どんな仕事なんだよ?」


話に食いついて来た時は「ヨッシャー!!」て思ったわ。


アヤメ「ほら…あんたも知ってるでしょ?今世界がどうなっているか。だからね、私達がいっちょ変えてやろう…みたいな?」


少年「…世直しってやつか…」


アヤメ「まあ、簡単に言えばそうだね」


少年「興味ねえな…」


…そりゃまあ、ある程度予想してたリアクションだったけど、一瞬でも興味を持ったかと思ったら残念だったわね。


更にその子はこう言ったわ。


少年「俺は…もう折れちまってるんだよ…とても、何かを背負って戦えやしねえ」


アヤメ「…」


少年「もうほっといてくれ」


…その時初めて、その子の目を見たわ。何か大事な物を失ったかのような…悲しい目をしていた…


更に月日は流れて、その子を最初に見かけてから1年が経っていたわ。私はもう一度その場所に行ってみた。


そしたら、その子はもう…そこにはいなかった…。


私は、残念というか、悔しいというか…何とも言えない気分になったわ。


そしたら、何か怪しい集団が私に近寄ってきたわ。


アヤメ「誰?あんたたち」


男「西村アヤメとお見受けする」


アヤメ「そうだけど、私に何か…」


何か用?って聞こうとしたの。そしたらそいつら、私に襲いかかってきたの。しかも全員刀やらバットやらを持ってたからビックリしたわ。


今思えば仕事柄そんなのは当たり前だけどね。まあ、大した相手じゃなかったけどなにぶん数が多すぎてね、さすがに疲弊してきたわ。


アヤメ「はぁ…はぁ…参ったわね…」


すると、連中と私の間に割って入る奴がいたのよ。例のあの子だったわ。


アヤメ「あんた…」


少年「何やってんだよお前!!この辺はおかしな奴が多いから、何度も「来るな」って言ってたのに…」


アヤメ「ええ!?そうだったの?」


少年「ったく…」


その子は、連中を一瞥してから、こう言ったわ。


少年「加勢するぜ」


アヤメ「いいけど、それなら私の仲間になってよ?」


少年「はあ!?何でだよ!前に断ったろ?」


アヤメ「あれ?前は確か、「俺はもう戦えない」って言ってたよね?なのに私に加勢するの?」


少年「っ…」


さすがに言い返せないって感じだったわ。


アヤメ「じゃあ、私は自分の目の前の敵を集中して斬るから、あんたもそうして。」


少年「ああ…いいぜ」


刀を抜いたその子は、もう以前の悲しげな目はしてなかったわ。まるで獲物を狩る狼のような、鋭い眼差しだった…


アヤメ「あんた名前は?」


少年「秋山秀春」


アヤメ「私は西村アヤメ。よろしくね!!」


私達は、互いに背中を任せて、眼前の敵を斬り伏せていったわ。シュラギと牙以外で、共闘なんて初めてだったわ。


しばらくして、足下には連中が倒れてて、立っているのは、私と秋山だけだった。


アヤメ「へえ…強いじゃん」


秋山「お前も…女とは思えねえな…」


アヤメ「あら失敬ね、日本の女性は強いもんよ」


アヤメ「…ねえ秋山、あんたの過去を詮索する気はないけど、これだけは聞かせて?あんたの目的はなに?」


秋山「目的?」


アヤメ「うん。一緒に仕事する上で、あまりにも志しが違うと困っちゃうからね」


秋山「…お前の言う通り今この世界はメチャクチャだ。そして俺は、この世界が憎い。だからこんな世界を作ったバカをぶった斬って、それで人斬りも廃業だ。まあ、こんなとこかな」


アヤメ「うん。上等」


私は、事務所の住所と連絡先を渡しておいたわ。


アヤメ「気が向いたらこの場所に来てね」


秋山「ああ」


アヤメ「…よろしくね秋山」

―――――――――――――――――――――――――――――

アヤメ「まあ、こんな感じ。私も秋山の事は詳しく知らないんだよね」


シュラギ「なるほどな…って言うか、秋山が事務所に入ってもう1年になるのか…」


シュラギはそう言うと急に何かを考え込んだように黙ってしまった。


アヤメ「どうかしたの?」


アヤメが聞くと、シュラギはやけに神妙な表情で答えた。


シュラギ「なあ…2年前の冬に秋山を見つけたんだよな?」


アヤメ「そうだけど?」


シュラギ「それってちょうど、例の『冬の大虐殺』が起こった時じゃねえか?」


『冬の大虐殺』とは、2年前の冬に、身元不明の斬殺死体が大量に発見された事件だ。それ自体は、このご時世ではそんなに珍しくないのだけども、アヤメが秋山を見つけたのは、ちょうど事件の直後だったのだ。


アヤメ「…まあ、私もそれは思ったけど…あんまり考えても仕方なくない?私達もこんな仕事している身だし…それに…」


アヤメ「ここにいる人って…みんな訳ありでしょ?」


シュラギ「…まあな」


そう…この事務所にいる人間は、みんな何かしら痛みを抱えている。


もちろん私も含めて…

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