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荷物ですか。

「あら?レイシア、あんたまた髪切ったの?せっかく伸び始めてきたところだったじゃない」


レイシアと同じ、皿洗い場を担当している40代過ぎの少し小皺が目立ってきたが、目元が優し気なグリエが短くなったレイシアの髪に追及した。


「邪魔だと思い始めてたので切ったんです」


ニコッと笑んでいる髪が半年前と同じくらいショートとなってしまったレイシアに、グリエは溜息をつき手を動かす。


「あんた、せっかく女の子らしくなってきたのに、また男の子と間違われても知らないよ」


レイシアは髪が短いというだけで様々な人に男だと間違えられていた。

女の子なのに男に間違えられるなんて…とグリエは思っているのだろうが、レイシアは女だとも分からない方がかってがいいのだ。


「そうだ、今日仕事が終わったらアタシの部屋へおいでよ。煮物とか作り過ぎて余っちゃったんだよね」

「グリエさん、気持ちはとても嬉しいのですが今晩から外せない用事があって早引けするんです」


グリエがレイシアを夕飯に誘って見たが断られた。そう、レイシアは今日夜会に陛下と出なくてはならないのだ。

レイシアは夜会に出る豪華な食事よりもグリエが作った煮物の方が食べたかったのだが如何せん、この後、陛下に強制連行されるのでグリエのところには行けない。

しょんぼりと肩を落としたレイシアにグリエは大袈裟にレイシアの肩を叩いた。


「また来てくれりゃあいいのさ!」

「…ありがとう、グリエさん」


グリエとの和やかな時間はすぐに終わり、早引けする時間となってしまった。


「それでは、今日は申し訳御座いません」


一礼して早足にレイシアの部屋へと急ぐ。

戸の前まで来た時に、ピタッとレイシアは止まった。

もう、来てる気がする。とレイシアの勘が働いたのだ。レイシアが戸を開ける前に戸は勝手に開いた。


「レイシア、待っていたぞ。」

「陛下、約束の時間より1時間早いです」

「早く行動するのはいいことだろう?」


レイシアの狭い部屋のベッドに片足をあげて座っている陛下の目は少し細められ、呆れた顔をしたレイシアを見つめる。

レイシアは重い溜息を吐いて、陛下を廊下に追いやした。


「女性の着替えでも覗きたいほど性欲は溜まってませんでしょう?」


そういったレイシアは力強く戸を閉め、箱の中身を出し、一つ一つ着替えて行った。

全て着替え終え、そっと戸を開けたレイシアに陛下は粗末にレイシアをシーツに(くる)み走ってどこかへ行く。


「ちょ、陛下!なにして」

「お前の存在自体が秘密なんだよ、とりあえず俺の執務室に連れて行く」

「何もこんなやり方で運ばなくても」

「俺も一応変装はしてる、荷物運び人がいるな、と思うだけだ」


レイシアはシーツ越しから陛下を覗き見る。

陛下は確かに簡単な顔を隠しているだけの変装だが、服装もそれなりに城下で売っているような服を着ているので、よく見ないと陛下だと気付かれないかもしれない。が…


「私は荷物ですか」


溜息が出るのは仕方がないだろう。

少し経ち執務室に着いたのか、レイシアは雑にソファーに投げられた。


「扱いが少々酷くはありませんか?」


シーツから顔を出してむくりと起き上がるレイシアに陛下は驚いた顔を見せる。


「よく似合ってるではないか」


レイシアは()の服がよく似合い、本当に貴族のような美少年になっていた。


「俺の側から離れないようにしてろ」

「かしこまりました、陛下。」

「レイシア、お前はレオンだ。俺のことは陛下ではなくそーだな、何と呼びたい?」


陛下は少し考えたフリをして、レオンとなったレイシアを横目で見る。


「陛下ですね」


考える()もあるのかと疑ってしまうほどに返答が早いレオンに、陛下は溜息をこぼす。


「一応親戚という設定にしているのだから、もっと愛称で呼ばぬか」

「そんな急に言われても困ります。陛下の愛称はなんですか?」

「愛称などない」

「…なら、リト陛下と呼ばせていただきます」

「あぁ、それならまだマシだな」


呼び名もお互い決まったところで、そろそろ出る時間となった。

執務室にはジョルジュが入ってきて、レオンとなったレイシアを凝視する。


「………………っ!レイシアさんですか!?」


突然ハッと気付いたように、目を見開いて驚いたジョルジュにレオンとなったレイシアは微笑をもらす。それを見たジョルジュは少し顔が赤くなり、失礼しました。と一歩下がった。


「驚きました…随分と変わられますね。」

「今はレオンっていう名前になってます。」

「聞いてます。そうだ、レオン様これを」


そう言ったジョルジュがレオンとなったレイシアに渡したものは、顔が隠せる緋色の帽子だった。

ジョルジュがレオンとなったレイシアのことを様付けにしても驚きはせずに帽子を被る。

むしろ、あまり気にしていない様子だ。


「では、レオン行くぞ」

「専用の馬車がありますので、それに乗って下さいね」

「分かっている」


こうして、男装をしたレイシアの外せない用事が始まろうとしていた。





次回からレオンとなったレイシア→レオンとなります。

御了承下さい。

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