藤沢くんの隣は安心する
「はぁ~」
「ため息つくと、幸せ逃げちゃうよ、伊藤さん」
「…!藤沢くん」
声のする方向を見れば、藤沢が立っていた。
「どうしたの、こんな教室の隅っこで。…伊藤さん、朝から元気ないみたいだけど」
「…そんなことないよ?」
「そう?」
「うん」
心配そうな表情を浮かべる藤沢に千花は笑顔を向けた。
「…ならいいけど。あ、ってか、2人は?」
「…2人って、香織と智絵ちゃんのこと?」
「うん」
「トイレだよ」
「あれ?そういうのって女子って皆で行くんじゃないんだ」
「皆が皆そうじゃないよ。そういう子たちもいるだろうけどね」
「なんなんだろうね、あれ。トイレなんて行きたい時に行けばいいのに」
そう言って笑う藤沢に千花の頬も自然に上がった。
「…安心する」
「え?」
「ううん。なんでもない。そういえば、藤沢くん、最近調子はどう?」
「サッカー?」
「うん」
「いい調子だよ。体力もつけたし、大会ではいい結果が出せると思う」
満面の笑みを浮かべる。サッカーのことになると、藤沢の顔はいつも以上に輝いた。だから、藤沢のサッカーをしている姿が好きだった。
藤沢の隣は安心する。柔らかい声も、物言いも。ふと浮かべる笑顔も優しい。
いつだって心地よい空間をつくってくれるのだ。
「ありがとう」
「…?何が?」
「ん~?なんでもないよ。ただ、藤沢くんの話聞いたら、私も頑張らなきゃって思ってね」
「何を?」
「…ちゃんと向き合うこと、かな?」
「…何のこと?」
「ううん。ごめんね。なんでもないの」
「なんか、今日の伊藤さんいつもと違う感じだね」
「そうかな?…あ、香織と智絵ちゃんが来た」
「俺は次の授業の準備頼まれてたんだ。じゃあ、ちょっと行ってくるよ」
「うん。藤沢くん、ありがとうね」
「だから、お礼言われる意味がわかんないって」
笑いながら、手を振り教室を出て行った。
「ただいま~千花」
「おかえり」
「昼休みのトイレは混むから嫌」
「智絵ちゃん、待つの嫌いだもんね」
「…あれ?」
「どうしたの?」
「悩み、消えた?」
「え?」
「なんか、朝から千花が考え込んでるみたいで香織と心配してたんだよ」
「でも、今は大丈夫そう」
「…藤沢くんのおかげかな?」
「何それ」
「あのね…実は、昨日…」
千花は昨日の出来事を周りに聞こえない声で簡潔に2人に伝えた。
短くてすみません。これから終わりに向かっていきます!!




