妬み
少し考えればわかることだった。
「穴場」だとしても、絶対に見つからないということはありえない、と。
しかも、一緒にいるのは、この高校で人気の1,2を争う瀧山徹。
人の目が常に彼を追っていることなど、少し頭を働かせればわかることだった。
学校中に響き渡る鐘の音。
千花は、昼休みの終了を告げるその音を校舎裏で聞いていた。
目の前に立つ数人は、髪を栗色や金に染めた顔立ちの綺麗な人ばかり。
思い出せば、いつも徹の近くにいた人々だ。智絵が「瀧山親衛隊」と呼んでいたような気がする。
「ねぇ、あんた何様なの?」
背中を校舎の壁に預け、四方を囲まれている。鋭い視線が真っ直ぐ向けられた。
苛立ちを隠す様子もなく足が忙しなく動いている。
いつも隣から聞こえてくる声とは違う低い声に、思わず肩が上がる。
「…えっと…」
「昨日、放課後」
「え?」
「どこで、誰と一緒にいた?」
「…」
「一昨日は?」
「…」
「答えろって!!」
「…」
荒げる声。肩を掴まれ、壁に押し付けられる。
「こんな不細工でよく徹の傍にいられるね?」
「いたっ」
髪を強引に掴まれた。視線が合う。背中に嫌な汗が流れた。
「何を勘違いしたのかわかんないけど、あんなのただの遊びだからね?…何?本気にしちゃったの?だから、もてないブスって怖いよね」
バカにした笑い。
「そんなことない」そう言いたいのに、千花の口からは何の言葉も出てこなかった。
唇を噛み、痛みをこらえる。どうしても涙を見せたくなかった。
「なんか言えよ!!」
髪を掴む手に再び力が加えられた。
「…」
「……私の徹に近づくな」
「あれ?おかしいな?」
場違いに緩い声。千花を含めた全員の視線が動く。
「…敦くん」
ゆっくり近づいてくる人物の名を呼んだ。
その声に敦は優しく微笑んだ。
千花の髪を掴む彼女の腕を強く握る。痛みで手を離した。
そっと、彼女たちから千花をかばうように間に入る。
「ねぇ、教えてくれる?」
優しい声。なのに、千花は怖いと感じた。
「…」
「俺さ、徹と仲いいと思ってるんだよね。たぶん、一番仲いいんじゃないかな?」
「…」
「でさ、たぶんだけど、彼女とかできたら教えてくれると思うんだ」
「…」
「でもさ、俺、聞いたことないんだよね。徹があんたの、だなんてさ」
「えっと…敦…。これはね…」
「名前で呼ばないでくれる?」
「…」
「徹を私の呼ばわりできるのは、徹が好きな千花ちゃんだけだ」
「…で、でも、なんでこんな子が!!」
「そ、そうだよ。なんでこんな不細工で地味な子に徹を取られなきゃなんないの!」
女の子たちの張り上げた声に敦は静かに笑って首を傾げた。
「なんでだろうね?でもね、人の外面と自分の外面しか見ることができないお前らよりよっぽど魅力的だけど?」
そして、千花の肩を掴み、彼女たちに背を向ける。
ふと思い出したように振り返った。
「あ、そうだ。今度千花ちゃんに手出してみ?その顔面ボコボコにするから。女だって容赦しねぇよ?」
「…」
「さ、行こう。千花ちゃん」
そう言って千花に向ける笑顔に先ほどの冷たさはなかった。
千花は声に出さず頷き、足を動かす。
背中に彼女たちの鋭い視線を感じたが、振り返ることはしなかった。
もう少し、もう少しと言いながらなかなか更新できなくてすみません。
これからもがんばりますので
あと少しお付き合いください。




