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第8話「すれ違う過去〜UMA〜」

 右手には桶。左手には花。準備は万端、装備も万端。いざ出陣。なんて大それたものじゃないけど、俺は知り合いだった少女の墓参りに来ていた。

 今日で丁度六年目だ。

 六年前の今日に坂上桜さかがみさくらは交通事故で死んでしまった。原因は車の運転手の居眠りだった。

 それはあまりにも唐突な別れだった。俺は目の前で、自分の腕の中で死んでいく人間をあの日から今まで一度たりとも見たことは無い。いや、見ることが無くて当たり前なのだ。あんな経験そんなにしてたら。一体どんな暗い人生送ってるのだろうな。

 時々思う。こうして墓の前にいると何処からか桜が来てくれるんじゃないのだろうかと。桜は死んでなんかいないのではないだろうかと。実際、俺はすぐには現実を受け入れなかった。悪夢のような厳しい現実から逃げて笑っていればいい思い出だけを振り返っていた。

 勿論。今は懐かしく思い出を振り返るだけだが。ただ、少しだけ大人になったから少しだけ子供の頃とは違う疑問を抱くようにはなっていた。

 人は何故死に、何故生きるのだろうか。交通事故で死ぬ人と死なない人の差は一体何なのだろうか。ただの運なのか日ごろの行いなのか、それとも生まれた時から決まっている運命なのか。その答えはどれなんだろうか。

 桜の墓の前には既に線香が上げられ、花が供えられていた。俺よりも早く誰かが花を添えたのだろう。家族だろうか。

「随分と、懐かしい奴がいるものだな」

 声が聞こえ振り返ると、そこには赤野彰あかのあきらが立っていた。別々の中学校に進学して今に至るまで会った事はなかったから五年ぶりの再会となる。

 五年間も会っていなければ普通誰だがわからないと思うかもしれないが、やはりそれぞれに面影があるのだろう。久しぶりに会っても、成長して変わっていても誰だがわかるようだ。

「お前こそ随分懐かしいぞ」

「そりゃそうだな」

「五年ぶりか?」

「そうだな。にしても近くに来たついでだから寄ってみたらお前に会えるなんてな、桜さんの家族の人に会うのが嫌で時期はずれの墓参りか?」

 彰の言葉に何処か引っかかりを感じる。時期はずれ?

「時期はずれ?」

 と俺は疑問を口にする。それを聞いた彰は俺の正気を疑うような表情を一瞬だけだが、した。そして彰は肩をすくめて言う。

「お前の事だから、桜さんの命日に合わせて墓参りをしているんだと思ってたんだがな。いくら命日にまで時間があっても時期はずれなんて表現の仕方はおかしかったかな」

「命日にまで時間があるだと?」

 今度こそ彰ははっきりと怪訝そうな表情を浮かべる。だが、今の俺は自分の正気を疑われることなどどうでもよかった。俺は桜の命日にあわせて毎年墓参りをしている。

「桜は、六年前の今日に事故にあっただろう?」

「お前・・・大丈夫か?」

 人を思いっきり哀れむような目で見つめていた。正気の次は頭でも疑われているのだろうか。

「何を記憶違いしてるのかわからないが、桜さんは六年前の十二月二十三日に亡くなったんだぞ、それも死因不明でな」

 十二月二十三日? 死因不明? 何言ってるんだこいつ。

「あの冬は今でも忘れられない。桜さんの死にお前の失踪事件。お前が犯人だと疑われた時もあった、なんせ桜さんが死んだ日からお前が行方不明になったんだからな、いかに小学五年生といえども容疑者にならざるを得なかった状況だったな。お前何処行ってたんだ? 今更だが気にもなるしな」

 分からない。分からない。分からない。桜が死んだのが十二月二十三日の冬で俺がその日から失踪した? 俺が失踪した? 何処へ行っていた? ドコヘイッテイタ? シッソウシテオレハドコニ。

「おい、どうした? 大丈夫か!?」

 遠くで誰かが何かを言っている。その声はだんだん遠ざかり、俺は地面に倒れる音を聞いて意識を失った。それすなわち卒倒とも言う。




 目を覚ました俺は、自分の部屋のベットの上に寝ていた。窓の向こう側の外は暗く、時計は夜の一時を指していた。

 ベットから起き出し一階へと降りていくと、夜の一時だと言うのに妹がリビングでテレビを見ていた。

「目覚ましたんだ」

「あぁ。寝ないのか? もう一時だぞ」

「どうせ夏休み中じゃない、堅いこと言わないでよ」

 そっかそりゃそうだ。

「あんた今度赤野さんて人にお礼言っといてよ」

「なして?」

「呆れた。あんた何も覚えてないの? 赤野さんって人が倒れたあんたをここまで担いで来てくれたんだから。病院に連れて行かなくてもいいのかって聞いたら、軽い卒倒だから大丈夫だろうってさ」

 本当に我が妹は呆れたように言った。

 そういえば、彰と話をしていて俺は倒れたんだっけ。それもこれもあのアホがおかしな事ばかり言うせいだ、そのせいで俺の繊細な脳に多大な負荷を・・・。

「あんたの脳に負荷がかかるだけの性能ないでしょうに」

「うっさいな、それに出来の悪いものほど少しのことで負荷がかかりやすいものだぞ」

「あ、なるほどね」

 納得するなよそこで! 僕の繊細なマインドは傷つくだろう。

 それにしてもと、テレビを見ながら思う。なんて中途半端な時間に起きてしまったんだろうと。夜中の一時だし、今から寝るにしても全然眠くないし、テレビはつまんなのしかやってないし。暇を持て余した俺は、運動すれば眠くもなるだろうと思いランニングに出かける事にした。

 ここからなら高校まで行って帰ってくるくらいで丁度いい距離だしいい運動になると考え、目的地を高校に決め暗い夜の中を駆け出した。

 夜中の高校とは俺が予想していた以上に不気味な光景だった。時折窓の合間から見える非常灯の赤い光がより一層恐怖を醸し出している。

「・・・・あれ?」

 高校の校舎の周りをぐるりと一周していると、窓の向こう側。校舎の中に人影が見えたような気がした。おいおいおい、勘弁してくれよそりゃ確かに夏だけどさ。幽霊とか心霊現象とか俺はそういうのマジで駄目なんだよ。

 そんなタイミングを狙ったのかどうかはしらないが、アホなセミが一フレームだけ鳴き、俺は死ぬほど驚いたのは秘密だ。

 俺が落ち着きを取り戻す前に、校舎の窓ガラスが割れる音が木霊した。暴走族!? 暴走族か!? それとも不良集団か!? だが、辺りにはそれらしい集団はいない。どうして窓ガラスがいきなり割れたのだろうか。今、俺の選択肢は二つある。一つは速攻逃げる事。二つ目は学校の敷地内に入って原因を探る。さてどうしようか。

 逃げるか。突撃するかだ。俺はふっと笑う。

「生徒会会長として、取るべき行動は一つしかないだろうな」

 そう。俺のとるべき道は、三十六計逃げるにしかずだ! 卑怯者とか腰抜けとか呼びたければ勝手に呼ぶがいい! そうさ! 俺は腰抜けだ!!

 走り出そうとしたが右側で何かが動いたのを確認し、思わず右側を向いてしまう。

「へっ?」

 その瞬間俺の身体は空中に浮かんでいた。何が起こったのかも理解できないうちに背中を壁に強打して、床に叩きつけられる。もし胃に何か食べ物を入れていたら逆流してそうだ。幸いにも夕食も食べていないから逆流はしなかったが。その代わりに胃酸は出たがね。

「何が・・・」

 現在の状況を理解できていない俺の目の前にそれは現れた。

 それはおおよそ生物と呼べるのかどうかよく分からない姿形をしていた。少なくとも俺は今まで目の前にいる理解不能生物を雑誌やテレビ。新聞では見たことがなかった。

 人間の様に二本足で立っているが顔が無く、身体の至る所から無数に腕が生えている。そして青白く透明な肌(?)をしている。何この生き物。

「待て待て待て! これは何だあれか!? ドッキリテレビか!? カメラ何処だ!?」

 勿論返答は無いし。明らかに敵意向けてくるし。

「待て待て待て! きっとあれだ話し合えば世界は平和に向かうさ!! だから話し合いを」

 人間のような身体から生えている無数の腕が伸びてくるのをリンボーダンスよろしく上半身を反らせて回避し、右側に飛び間合いを少し離すと理解不能生物はぎろりとこっちを見る。もっとも見たのが顔ならばだけど。

「何君? 誰君? どっかで会ったっけ? あぁ確か遠い昔の物語に出てきた田中一号?」

 どう考えても田中とは関係が無いと思うが、まぁいいか。それよりもここからどうやって逃げ出すかだ。後ろは行き止まり。前には理解不能生物。右は柵がありこれまた結構な高さだ。左には、窓がある。その下には割れたガラスが散乱していた。

 理解不能生物は俺に考える時間というものを与えたくないようで、身体から生えている腕がまたもや伸びてくる。

 あんなので首絞められたら間違いなく死ぬし。俺は窓に手を掛け、校舎に飛ぶように入る。ガラスの破片で少しだけ手を切ってしまったが、そんなに深くはないし今は気にならない。暗闇の学校の廊下を全力で駆ける。四階へと上がり、また一階へと駆け下りる。最後の三段を飛んで降りると目の前には理解不能生物。どうやら先回りされているようだ。

「っち、どうやって先回り・・・ん?」

 よく見ると理解不能生物の腕の一つが人体模型を握っている。

「不気味だ。まさかそれ武器か? 攻撃力いくつよ」

 俺の質問に答える事も無く問答無用で、人体模型をぶんぶん振り回し腕をびゅんびゅん飛ばしてくる。

「ああああ!! 人体模型がぁ!!!」

 無残にもばらばらになっていく人体模型。

「おいこら! 人体模型を粗末に扱う奴は人体模型に呪い殺されるぞ! 田中一号!」

 カタカタカタ。

 後ろから妙な物音が聞こえてくるが、今は目の前の理解不能生物。長いなUMAでいいか。UMAから目を離すわけには行かないし。

「って、うぉ!?」

 何かが右足を掴み、体制を崩す。後ろを振り返ると人体模型の腕が俺の足を掴んでいた。

「おぃぃぃぃぃ!! お前を粗末に扱ったのは、向こうだろう!? なんで俺を呪い殺そうとするんだよ!?」

 急いで前を向くと、目の前には腕が迫っていた。避けることも出来ずにランニング用のジャージを掴み、恐ろしい勢いで引っ張られる。

「くそっ。秘技! 人間脱皮!」

 引っ張る力を利用してスポッと上着を脱ぎ捨て、人体模型の腕を足で踏み粉々にして、踵を返して走り出す。三階へと駆け上がり、まっすぐな廊下を全力で駆け抜け直角曲がり角をなるべく速度を落とさずに抜ける。

「予想外です」

 抜けた先の廊下に居た先客は本当に予想外だった。そのせいでなんだかカタコトみたいになってしまったじゃないか。先客はあのUMAのお仲間と思われるUMAにそれと戦っている舞衣だった。舞衣の手には日本刀みたいな刀が握られている。

 後ろから追っ手のUMAが出現し、ぼんやりとしている暇は一秒たりとも無いようだ。

「舞衣! 刀寄こせ!」

 実は廊下の右側に刀が一本落ちているのを見つけてはいたが、俺にも作戦というものがあった。刀が落ちている場所は舞衣のすぐ後ろの地点だ。教室のドアの所に落ちていた。

 舞衣は俺の方を向いて、つまりは敵に背を向けて刀を投げる。あまりにも無造作に投げたので刃の方を握ったらどうしようと少しだけ思った。

 敵のUMAにしてみれば背中を向けた舞衣を殺す絶好の機会だろう。だが、敵の腕が舞衣の身体に触れるよりも速く、刀で胴体を横から真っ二つにする。手応えは、まるで空を切っているかのようだった。

 後ろを向くと、舞衣は左手で刀を掴み迫り来るUMAに斜め下から刃を振り上げ、斬る。同時にUMAの姿もどこぞへと消えていた。

「死んだ・・・のか?」

「・・・どうしてここに?」

 帰ってきた返答は俺が聞いた質問とは違うものだったが、舞衣がこうして口を開くという事は、敵は死んだのだろう。死んでないにしても危険は無いという事だ。

 俺はここに至るまでの経緯を俺なりに分かりやすく簡潔に話した。それを黙って聞いていた舞衣だが、俺の話が終わると俺と初めて会った日の瞳で大変分かりやすく言ってくれた。

「ここであった事は忘れて。全てを忘れる事があなたにとって唯一の選択肢」

「せめて二択にしようぜ。あんなん見たら気になって忘れられんわ。あれ何? 田中一号?」

「・・・・・」

「お前、いつもここであんなんと戦ってるのか?」

「・・・今日はたまたまここになっただけ」

 ふーん。違う所に出る時もあるのか。

「で、あれ何?」

 舞は少しだけ考えて、

「田中一号」

 とだけ言った。

 二人で校舎を出ると、校門の外には数台のワゴン車と数十人の大人が待機していた。その中の若い男に見覚えがあった。

「やぁ、久しぶりだね」

「橘さん。もう出演する機会が無いのかと思ってましたけど」

「あはは。なんだいそれは」

 周りの集団は何か怖いが、この人は何処か安心できる人だと俺は思った。

「舞衣もいつもご苦労様。今日はもう戻って休むといいよ」

「そうする」

「じゃ、俺はここで失礼するよ、さようなら」

 早々に立ち去ろうとする俺を橘さんは呼び止める。

「何か用ですか?」

「あれの正体を知りたくは無いのかい?」

 そりゃ知りたい。だけど。

「舞衣は忘れろと言って、貴方は知りたいと言う。どういう事ですか?」

「そっか、舞衣は忘れろと言ったのか。珍しいな他人に忠告するなんて」

「あれの事何か知ってるんですか? あなたも舞衣も」

「知りたいのかい?」

 当然だ。普通あれが何なのか知りたいと思うのが人間の好奇心だろう。だから俺はこう答えた「勿論です」と。

え〜。どうも作者の相沢であります。お読み下さった方。ありがとうございます。二話越しでまた後書きを書かせてもらいます。え〜今回の話はコメディ&シリアスが同居しているような変な話ですが、どうかこれから先も読んで下さい。なるべく早く更新するようにします。では。

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