表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

第5話「何事も計画的に〜海〜」

「では、何故その答えに行き着くのか。我が助手ワトソン君に説明してもらおうワトソン君!」

「え〜。何でその答えに行き着くのか。それは恐らくきっとそれが真実だからでありましょう。と言うかなんだこの始まり方はいきなり意味不明じゃねぇか」

 言うまでも無く「カット!!」と言う大声が響き渡る事になる。映画監督の山崎は台本を丸めてなにやら熱の入った指導を繰り広げている。

 つまり今は映画の撮影中なのだ。で、俺の役柄はワトソン君。と言う名の主人公なのさ。

 いや、主人公がワトソンて言うのじゃないんだよ。本当はね。でも和也のアホがワトソンとしか言わないんだ。で、今はどんなシーンを撮っているのかといえば、物語の中盤。学校内で起きた殺人事件の真相解明のシーンだ。てか物語の中盤で殺人事件って大丈夫なのかこのシナリオ。

 いや。まさか悠子さんが書いたシナリオを批判する訳では決して無いから。うん。

 と言う訳で、今回は映画の前半部分の話である。

「たのも〜」

「いらっしゃいませ」

 コンビニのレジを打っている少年は俺と同じ年くらいだった、と言う事でバイト少年。

「君達。映画撮影に来たんだって?」

「そうだ」

「僕もエキストラで出演させてもらうよ。どうせ暇だったし。それにしても随分色々買うんだね」

「どうせ、明日にはまた別な奴が来てるさ」

 レジを通して受け取った荷物を自転車の籠に入れて他は荷台にしっかりと括り付け、俺はバイクで走り出す。

「あ〜。あちぃよ〜」

 キコキコ。自転車を・・・いや、バイクのペダルを漕ぎ続ける。それにしても暑いなぁ。海沿いの町ってこう海からの爽やかな風で気分爽快なもんじゃなかったのか。

「てゆうかよ〜。今回は映画の前半部分の話だって言ったじゃん。なんで俺が買出ししてんだよ。あちぃよ〜」

 俺はひたすら自分の行為をのろっていた。チョキにパーで立ち向かおうとしたアホな俺を呪い殺したくなるほど呪っていた。あ〜あちぃ。

 撮影現場の石原高等学校は丘の上の高台に位置している。校門を通り校舎まで続く坂道を登りきり、右側にある駐輪場にバイクを止め。両手一杯に荷物を抱え、校舎の中に入っていく。

 石原高等学校は道路を挟んだ向こう側には海が広がっているという立地条件だった。どの学年の教室からも。海が見渡せるという授業の逃避には持って来いの場所じゃないか。

 生徒会室に戻ると、腹を空かせた男子連中が、俺の持っていた食べ物をすぐに奪い去る。後飲み物もね。

 俺達がここに来て撮影を始めてから三日が経った。実はこの三日の間に俺は十六年の人生にピリオドを打たれてしまうほどの事件に巻き込まれていた。

 始まりは、クラス一、いや俺の通う高校一スケベな男の何てこと無い欲望に満ちた言葉が始まりだった。

 その日は撮影初日だった。俺達が来て二日目の夜だった。それすなわち昨日の夜とも言う。

 大部屋に男子全員がぶち込まれ、タコ部屋状態と化しているが、それでもトランプをするもの、テレビを見る者。風呂に行った者。寝てる者とそれぞれが思い思いの夕食後の時間の時だった。

 クラス一、いや俺の通う高校一スケベな男。東一徳あずまかずのりが田園コンビと何やら話し込んでいた。

 そこで俺はそんなアホな奴らなんかほっといて、露天風呂に行けばよかったのだろうが、少しばかり気になってしまい、声を掛けた俺を誰が責められよう。

「なにしてんだ。田園コンビそれにいっとく」

 あぁちなみに、一徳。これでいっとくてみんな呼んでるので、かずのり。ではなくいっとくで呼んで頂けるとはなはだ幸いである。

「おぉ。創野かいい所に来た」

「お前も仲間に引き入れてやるよ」

 部屋の片隅に固まるアホ四人。そこで一徳は重大なアホ発言をする。

「女子風呂覗き行こうぜ」

「俺は行くぜ」

「俺も行く。創野お前はどうするんだ?」

 どうするんだと聞かれたらこの物語の進行上答えは一つしかないだろう。

「さぁて、男風呂にでも行くかぁ」

 と言って、エスケープする俺を田園コンビと一徳が捕まえる。

「おっと、この話しを聞いたからにはにがさねぇぜ」

「お前も共犯だ!」

「なにそれ、山賊ルール!?」

 と言う事で女子の露天風呂を覗きに行く事になってしまった。それにはまず旅館の外に出て、山の中を直進すると言うルートを取った。

 旅館の玄関の所でユキと出会い、田園コンビと一徳に拉致されてしまったのは気の毒な事だ。本人は水島さんに用があったらしいが。

「なんで、僕まで・・・」

「計画を聞いてしまったからさ」

「てゆうか君達が勝手に言っただけだろうが!!」

「静かにっ!」

 俺が静かにと言ったのは人に気づかれるからではなく。俺達以外の何者かの人間の気配を感じたからだ。まさか旅館の人の見回りだったら少し困るが。慎重に道を進んで行き、一徳の言う覗きポイントまで到着するが、そこには既に先客がいた。

「・・・なにやってんだお前」

 と俺。

「いや、その。覗きをする輩を成敗する為に・・・」

 あからさまに見苦しい言い訳をする倉田和也。

「嘘つけお前絶対除きしようとしてただろ! 抜け駆けは許さんぞ!!」

 と自分が怒れた立場じゃない一徳。

「このミステリーマニアめ! そんなことしてシャーロックは泣くぞ!!」

「そうそう。三国志の曹操!」

 騒ぐ和也と一徳それに田園コンビはほっといて、俺とユキは近くの岩に腰を下ろして休んでいた。と言うか田園コンビの片割れ、最近三国志の曹操ネタしか言って無くないか? てか影薄いし、台詞少ないし。

「面白い人たちだね」

「自分が犯罪に巻き込まれてるという緊張感を少しは持てユキ。ただでさえ君は田園コンビとかよりよっぽど重要な役柄なんだから」

 そんなのほほんとしていた時。柵で区切られた向こう側の扉がガラガラと開く音がして、それに次いで声が聞こえてくる。

「わ〜。広いし空いてるね」

 聞き覚えのある声が聞こえてくる。てかこの声もしかして・・・。

「この時間帯は比較的空くのよ。ここで暮らしてるものの知恵よ」

 この声も聞いた事がある。というかここで暮らしてるって時点で誰なのかすっかりモロバレじゃねぇか! 俺は隣にいるユキの顔を見る。

 すっかり硬直してしまい。声が届いているかさえも微妙だった。ユキ自身も水島さんが入ってくるなんてことを考えてもいなかったのだろう。

「舞衣〜早くきなよ。舞衣〜」

「・・・うん」

 やばい! 確定だ。柵の向こう側。すなわち露天風呂にいるのは舞衣と悠子さんと水島さんの三人だ。この三人だけはまずい、他の奴らならともかくこの三人だけはやばいと俺の本能が直感的に感知する。

「おい! 逃げるぞ! この三人はやばい!!」

 てゆうか舞衣がいる時点で絶対にもうばれてる! 俺達がここにいるのばれてるって!

「あぁ・・・確かにやばいな」

 分かってくれたか一徳!

「悠子さんに舞衣さん。それに佳織さんとは美少女揃いではないか。グフフたまらんがな」

 おぃぃ!! 全然分かってなかったよこの人!

「おい、和也。仮にも探偵目指すお前が・・・」

 和也は既に鼻血を出していた。いやてゆうかまだ見てもいないだろう。声だけで鼻血ってお前どんだけ妄想膨らませてるんだよ。

「この柵、隙間が全然ねぇな・・・」

「上から覗こうぜ」

 上から覗こうと、柵に足をかけ登る高野と沢田。いい加減にしろ田園コンビ。お前ら天国への階段二段飛びくらいで駆け上がってるのが分からないのか!!

 田園コンビがそうっと柵の上から顔を出した。どんな花園が広がっていたかは俺はしらんがかなり想像を絶するものだったらしい。田園コンビの反応だけでそれが分かった。

「貴様ら! 俺を差し置いて何をしている!!」

 鼻血ボーイの和也が勢いよく柵を登ろうとする。向こうの花園を自分達だけのものにしようと必死に和也が登るのを撃退する田園コンビ。

「おい、お前ら暴れると・・・」

 遅かった。もう全てにおいて遅かったのかもしれない。柵はめきっと音を立て倒れた。

「うわ」

「ぐわ」

「いて」

 という言葉が聞こえた気がしたが、んなこともうどうでもいい。俺は呆然自失のままそこに突っ立ていた。

 悠子さんと舞衣と水島さんの三人が、倒れた柵に驚きこっちを見ている。俺と目が合って、数秒の沈黙がその場にのしかかった。

 そして、その沈黙は打ち消される。

「きゃあああああああああああああ!!!! 変態!!!」

 舞衣はともかく、悠子さんと水島さんは定番通りの悲鳴を上げる。

「ち、違うんだ佳織! これは・・!!」

「残念だけど、もうだめだ!! 逃げるぞ!」

 言い訳をしようとするシャイボーイのユキを連れて、俺はその場から光速の勢いでエスケープする。というかユキぃ!! この状況でどんな言い訳を言ったら相手が納得すると思ってる。

 どんな言い訳ももはや通用しないんだぞ!

 主犯格の馬鹿三人はどうでもいいが、少なくとも無理矢理巻き込まれた俺とユキだけは逃げ延びる権利があるんだ。

 俺達はとにかく走った。少しでも速く少しでも遠くに逃げ延びるために、そして風になるために!!

「いや、風にはならなくてもいいよ」

「この状況でよくボケられるな。ってかここまで来ればもういいだろ」

 俺とユキは石原高等学校の前まで逃げてきていた。もうここまで来れば、さすがに・・・。

「ここまで来ればさすがに・・・なんですか?」

「てへっ」

 可愛く誤魔化そうとする俺だが、そんな事は通用しない。さながらターミネーターのBGMか必殺仕事人のBGMが流れる中、俺とユキは恐る恐る後ろを振り向いた。

 そこには明らかに怒っているのが分かる水島さんと、怒っているのか区別がそんなにつかないが恐らく怒っているだろう舞衣。それに満面の笑みの悠子さんが服を着て立っていた。

 舞衣は刀、悠子さんはロケットランチャーを持っている。

「あはは。残念です創野君。君達は死刑です」

 優しく悠子さんは幼い子供に接するように言う。言っている内容はどっかの裁判官みたいだが。

 道の向こう側から、馬鹿三人が凄まじい勢いで走って来ていた。どうやらあの状況を切り抜けて来たらしい。

「お、おぉ創野。お前らも逃げていたか。いやぁさすがにここまで来れば」

「ここまで来れば・・・?」

「あ・・・」

 馬鹿三人の声が見事に重なる。てゆうかもっと早く気づけよ馬鹿共。

「あはは。じゃあ皆さん。さようなら」

 笑顔でそう言って、悠子さんはロケットランチャーを構える。

「ち、違うんだ話を・・!!」

「おぃぃぃぃ!! 逃げるぞ!! あんなんシャレにもならんわ!!」

 ロケットランチャーが放たれ、上空から見ればチュドーンって感じな効果音が出ているような気がするが。あれの直撃を受けても、怪我一つなく、ただ少し黒くなっただけというのも、ギャグ漫画の成せる技であって。

 というかこれ漫画じゃねぇよ! 小説だよ!!

 暗い。

 夜だから当然だ。田舎道だし暗いのは当然だ。

 じゃあ、そんな夜道を俺は何故走っているのだろう。答えは簡単だ逃げているからだ。追っ手から。

 少しでも遠くへ、少しでも速く・・・。

 目の前を一人の人影が塞いだ。俺は走るのを止めてその人影と対峙する。

 その少女が長い髪をポニーテールにしてるのは、悠子さんにしてもらって以来、気に入っているからだ。

「よぅ舞衣。お前が俺の追っ手か」

「・・・・・」

 無言で俺に向かって剣を構える。

「お前はそういう奴だよな」

「・・・・・」

「当然か。今の俺はただの犯罪者だもんな」

 正直、本気でやっても舞衣に勝てる自信なんか何処にも無い。だが、少しでも時間を稼がなければならない。それが俺の役目だから。

 地面に落ちていた太い木の枝を掴み、それを舞衣に向け構える。

「・・・せめて。苦しまないように」

 それがせめてもの手向けのつもりなのだろうか。舞衣は少しも変わらない。

 もし、戻るのなら時間が戻って欲しい。もう一度、あの楽しかった頃に。笑っていられた時間に戻りたい。

「なんて、シリアスやってる場合じゃねぇんだよ!!」

「はぁっ!」

 舞衣の手にしている刀の前では、そこら辺に落ちている太い枝なんか、プリンよりも両断されるのが早い。例えが意味分からんけどね。

「ちょ、ちょっと待った!! あれだ! 主人公が死んだら終わるぞこれ。それでもいいのか!?」

「どうか安らかに」

 殺す気満々だよ! 殺す気満々だよこの人!! あれだ。きっとこんな状況になったら主人公の特殊能力が発動して。

「んな能力何もねぇよ!! なんだ能力ってあれか超能力か!!」

 舞衣の刀をなんとか避け続ける、俺だが、もうかなり限界です。せめて何か武器があれば。まぁあっても結果はそう変わらないだろうけどね。

「舞衣! どいて!!」

 舞衣が右側にステップを踏むように飛び退くと、目の前が開け。ロケットランチャーを構えた悠子さんがいた。

「あはは。創野君。死んでください!」

 そこで俺の意識は途絶えた。次に目を覚ましたのは旅館の部屋の布団の中だったので、あれはもしかしたら夢だったのかもしれない。馬鹿三人もこれと言った変わった雰囲気は無く。きっとあれは俺の夢だった。

 という終わり方でこの話が夢オチだったらよかったけど、そうは問屋が降ろさなかった。俺は朝風呂に入ろうと露店風呂に向かったが、今日は男子風呂と女子風呂が入れ替わっていた。

 露天風呂に入った俺がまず目にしたのは、倒れた柵とそれを補修している従業員(男)の人たちの姿だった。

「すみませんね。昨日なぜか柵が倒れてしまったみたいで」

「そうですか。不思議ですね。はは。あはははは」

 世の中には知らないでおいた方が良いという真実もある。あの馬鹿三人の身に昨日何が起こったのか、何てことは気にしてはならない事だ。

 それから一日が過ぎ。午前中の撮影を撮り終え、昼休み中俺は屋上から海を眺めていた。何処までも続く海は大きく青かった。

「舞衣か、どうした?」

「・・・別に」

「そっか」

 それから二人で海を眺めていた。

 実はあの話には余談がある。俺が馬鹿三人としてひとくくりにしていたのは、沢田。高野。和也の三人だ。一徳はいつからか姿が見えなくなっていた。

 気になった俺は、一徳の携帯に電話を掛けてみた所、本人はこう言った。

「俺は夏休み入ってから、ずっとこっちに居たけど。お前達に着いて行きたかったんだけど、部活があってな」

 だそうだ。

 世の中には知らない方が良いと言う事はあるものだ。昨日俺達と一緒に行動していた東一徳あずまかずのりと同じ名前の少年が何年か前にこの海で死んでしまった事件があったらしい。

 それはもう昔の話だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ