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【短編】学校一のクールな美少女・白雪さんが、放課後の図書室でだけ俺にデレデレなのは秘密らしい

作者: 夢見叶

放課後の図書室には、独特の静寂が満ちている。

 西日が長く伸び、舞う埃がキラキラと光るこの時間が、俺――日向湊ひなたみなとは好きだった。


 だが、最近はこの静寂が破られることが多い。


「……湊くん、見つけた」


 本棚の影からひょっこりと顔を出したのは、透き通るような銀髪に近いロングヘアの美少女。

 白雪玲奈しらゆきれな

 成績優秀、容姿端麗。けれどその愛想のなさから、クラスでは『氷の令嬢』なんて呼ばれている高嶺の花だ。男子生徒からの告白も、秒速で断ることで有名である。


 そんな彼女が、俺の方へトテトテと小走りで近づいてくる。

 そして、俺がカウンターで貸出処理の作業をしている横に回り込むと――。


「……ん」


 無言で、俺の制服の袖をちょいと引っ張った。

 上目遣い。頬はほんのりと赤い。

 教室で見せる絶対零度の表情はどこへやら、今の彼女は完全に餌を待つ小動物だ。


「……白雪さん、どうしたの?」

「白雪さん、禁止。……玲奈って呼んでくれないと、拗ねる」

「はいはい、玲奈。どうした?」


 俺が呼び直すと、彼女は満足そうに目を細め、とんでもないことを言い出した。


「充電切れ。……補充させて」

「充電?」

「湊くん成分が足りない。……ぎゅってして」


 これだ。

 クラスの連中が見たら泡を吹いて倒れるだろう。

 一ヶ月前の雨の日、傘を忘れて立ち尽くしていた彼女に俺がビニール傘を押し付けて以来、彼女は放課後になるとこうして図書室に現れるようになった。

 どうやら、その時の俺の行動がツボに入ったらしいのだが……それにしてもギャップが激しすぎる。


「今はまだ先生が奥にいるから、ハグは駄目だ」

「むぅ……ケチ」


 玲奈は不満げに頬を膨らませると、俺の隣にあるパイプ椅子を勝手に引き寄せて座り込んだ。

 そして、俺の肩に自分の頭を預けてくる。

 甘いバニラの香りが鼻をくすぐった。


「……じゃあ、こうする」

「作業しづらいんだけど」

「知らない。……湊くんが構ってくれないのが悪い」


 彼女は俺の腕に頬ずりをしながら、ぽつりと呟く。


「……教室だと、みんなが見てるから湊くんに話しかけられない」

「まぁ、俺みたいな地味な図書委員と『氷の令嬢』が仲良くしてたら、変な噂になるしな」

「違う。……湊くんのかっこいいところ、私以外に知られたくないだけ」


 さらっと爆弾発言を落とす。

 俺が思わず作業の手を止めると、玲奈は悪戯っぽく微笑んだ。


「顔、赤いよ?」

「……うるさい」

「ふふ。……ねえ、湊くん」

「なんだよ」


 彼女は俺の耳元に顔を寄せ、吐息が掛かるほどの距離で囁いた。


「今度の休み、映画見に行こうよ」

「映画?」

「うん。……カップルシート、予約しちゃった」


 それはもう、決定事項ということだろうか。

 拒否権など最初からなさそうだ。


「……わかったよ。行くよ」

「やった。……楽しみ」


 玲奈は嬉しそうに俺の腕をさらに強く抱きしめる。

 体温と、柔らかい感触が伝わってきて、俺の心臓は早鐘を打っていた。


「……大好き」


 消え入りそうな小さな声。けれど、確かに聞こえたその言葉に、俺は観念してため息をつく。

 西日が差し込む図書室。

 『氷の令嬢』が溶けるこの時間は、まだしばらく続きそうだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます!


「甘々で最高!」

「もっとイチャイチャが見たい!」

「尊い……」


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