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怪異シリーズ

すみか

作者: 水縹

早めの梅雨が開け猛暑が続く今日この頃。


「「「あっつ」」」


部活動で汗ダクになり、水道水を被ったり、制汗スプレーや冷却スプレーをかけても僅かな足しにしかならない。


ジメジメとした暑さに、夕暮れに近いというのに元気な太陽に、制服のズボンの裾を捲り膝を出して着るのが学校で流行っている。


パシャパシャと水を蹴るような音がした。


「水泳部いいよな〜。体育館暑すぎる」


「だよな〜」


「・・・うち、水泳部あったっけ?」


はたと顔見合わせ、2メートル程のコンクリートに目隠しフェンスが2メートルのプールを見あげた。


「女子の補習とか?」


もわっと好奇心に駆られた彼らは、プール入り口の階段をそっと登った。


入口は南京錠で閉じられている。


網フェンス越しに、プールをのぞき込めば誰も居ない。


バシャバシャ。


また水音。


プールではない、プールと講堂の裏には池のある庭園がある。


その裏庭庭園の方から聞こえるようだ。


池で遊んでいるのかと、そちらに足を進めた。


蝉時雨の中、木々に覆われた木陰は僅かに涼しく、循環型の人工池から風も感じる。


びちゃり。


池の中ほどにある亀のような岩の上。


緑がかったような長い爪の手が見えた。


すうっとワカメのような光沢の頭が現れる。


次いで現れたとび出さんばかりの大きな金色の双眸。


「わぁあ!」


1人の叫びでパニックに陥った3人は全力でその場から逃げ出した。


―――――――――   ―――――――

「本当だよ!アレは絶対カッパだった!」


「・・・へー」


昨日のことを朝来てすぐに報告された、清野と神矢は顔を見合わせた。


困惑と呆れの混ざった顔で頷きあう。


「河童って妖怪ですよね」


「君たちが遭遇したんだから自分で対処しなよ」


まさかの素気なさ。


そんなぁ〜と、肩を落としフェードアウトしていくクラスメイトを尻目に、佐山はペットボトルのオマケでもらった団扇で扇ぎながら首を傾げた。


「学校の怪談じゃないの?七不思議的な」


「うちの学校に七不思議ありません」


きっぱり断言する清野。


「霊ならまだしも、妖怪は生き物なんだから困っちゃうよね。迷い河童?」


「河川工事も多いですから、ホームレスでしょうか」


真顔での会話に佐山はなんとも答えられずに聞いていた。


(生き物なんだ、ホームレス・・・)


その日、佐山は図書室に寄って、民俗学のコーナーで河童を調べ、裏庭庭園に向かった。


何も居ないが、そっと地図を置いておく。


佐山の家は山端にあり、少し和テイストで佐山の両親が結婚と同時に新築された家だ。


駐車場と生け垣を挟んだ隣は佐山の祖父母、曾祖父母の家がそれぞれある。 


敷地内別棟同居とでも言うのかもしれない。


それぞれが生活をしている家とはまた別に、築300くらいの土蔵門のある木造の古い母屋が最奥にあり、主に日本文化の稽古等に貸し出しをしていて誰も住んではいない。


奥の間の人形部屋から、夜中に子供の走る音がするのはただの家鳴だろう。


その母屋の奥、蔵と小さな滝と池のある庭は、借景に裏山を用いている。


池には石の橋がかかり、浮島には山神を祀るという小さな祠。


佐山は池の淵に庭で採れたキュウリを置いてみる。


数日様子を観察すると、3日目にキュウリが無くなった。




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