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親しき仲にも礼儀あり

〜前回までのあらすじ〜

推しにキレたら友達から始めることになった


親しき中にも礼儀あり、という言葉をご存知だろうか?

 私はあまり人に使ったこともないし思ったこともないのだが最近ぼんやりとこの言葉を思い出すことがある。


 なぜなのか。それは……


「レオン様……」

「……なんだ?」

「お忙しいとお聞きしておりましたが最近はどうなのでしょう……?」

「ああ、大丈夫だ。ちゃんと調整してある」


 嘘である。この美丈夫は飄々と嘘をついている。この目の前の堂々と嘘をついている男が忙しいのをちゃんと私は知っているのである。なぜならダルケルにレオン様の情報は全て流すように入れ替わる前からセレナが命じてたせいでラジオのように情報が流れてくるから。

 ストーカーみたいなことはやめようと思ったのだけど今後のストーリーに関わるかもしれないから情報は絶対に漏らさないようにしている。

 

 なんでそんなことを言ってしまうかと言うと、先月まではレオン様が月1でイヤイヤ来ていると聞いていたのになぜかあのお茶会から1週間に1回という習い事ペースでうちに通い始めてきたのだ。


 確かに友達から始めたいと申し出たのは私だけど……その……。あまり攻略対象に接触し過ぎるのも良くない気がして胃がキリキリしてしまう。ぜひ月1に戻したい。


「入学前のご準備や社交パーティーでお忙しいとお聞きしましたが……?」


 遠回しに今まで通りにして欲しいと伝えてみる。


「もちろん今まで通りにこなしている。積極的に時間を作るようにしただけだ。君との時間を作るように調整してるからむしろメリハリがついていい」


 目標になっちゃってた。私、目標になってたらしい。自分の表情がスンッ……となった気がする。

 

 なんならむしろ褒められている気がしなくもない。自意識過剰でなければレオン様の憩いの時間みたいな、ご褒美みたいな扱いになってるような気がしてならない。しっかりしなさいあなたはヒロインとくっつくのよ!!!


 ふとレオン様が目線を紅茶から庭の花に移す。視線を動かすだけでも絵になるってどゆこと。ドキドキしちゃうわ。というかこの人14歳なのにこの完成度なに?怖いんだけど。


 花を見ているふりをしてレオン様の横顔を盗み見ていると大人らしく振る舞っていても14歳らしいあどけなさが残っている。可愛い。この可愛さ大人の女性に変なことされないか心配になる。

 

「ずいぶん花が増えたな。もしかして君が?」

「あ!そうなんです。治癒魔法の応用で植物の促進もできるみたいで」


 レオン様の奇行と共に増えたのが庭の大量の花である。通常魔法学院入学前にそれぞれ家庭教師なり予備学校に行くのが習わし……らしいのだがセレナは一丁前にそれなりにできたタイプらしく独学でそこそこ使えるようになってた。治癒だけでなく生命に対してなにかしら働きかける能力も付随してるらしい。余計悪役になんてなるべきではない能力である。

 

 最初は慣れなかった感覚も今や人に治癒するのも出来るくらいには身についている。


 そしてピュアラブなんて単純なネーミングセンスのゲームの割に、魔法能力に関してクラス分けがありエリートとそうで無い人間の扱いがナチュラルにある。

 魔法の能力があれば平民でも入学ができるらしい。ゲームでは恋愛がメインだったためサラッと流されてたが今後のことを考えると優秀であったほうが良いに違いない。


 ちなみにヒロインは当然平民からの成り上がりコースである。みんなの大好物。確か攻略対象は全員当然のようにエリートコース街道真っ只中のキャラのため見分けるのは簡単かもしれない。うん、やっぱりこの一年でなるべく努力はしておくべきだな。ゲームのルートが終わった後のことを考えているあまりつい黙ってしまったレオン様が不思議そうな顔で見てくる。

 ……うっ、その顔も可愛い……。14歳のあどけなさが……


「……?」

「あっ、ごめんなさい。花を咲かせると使用人も嬉しそうにしてくれるのでついつい色々試したくなったんですよ」

「……そうか。君はなんの花が好きなんだ?」

「ひまわりですかね」

「……ふふ」


 その時、本当に時間が止まったかと思った。……なんて美しい顔で笑う人なんだろう。目の前の笑っているレオン様は言葉で言い表せない美しさを体現していた。


 ……この笑顔、守ってあげたいなぁ。思わず顔が緩む。

 どう考えてもレオン様の方が強いであろうにそんなことを思ってしまった。きっとこの胸の高鳴りはいつも気を張っているであろうレオン様が少し素を見せてくれたからつい微笑ましいときめきだろう。

 

 じわじわと顔が熱くなるのを感じる。レオン様の笑顔を見ただけなのに。この人の笑顔が可愛いって思っただけなのに。


 そんなピュアな女の子の気持ちに入り浸っていると笑いながらなんとか声を出そうとしてるレオン様。聞き逃したくなくて少し前のめりになると――……


「つい最近まで色恋狂いのストーカーと呼ばれてた君がひまわりか……くくっ」

「なっ……!」


 …………やっぱ今のなし!!!!!


「好きな花を答えただけなのに失礼です!」


 思わず勢いあまって立ってしまったが目の前のイケメンにはなんの効果もないようだ。めっちゃ笑うじゃん。もう私女ではなくおもしろ枠で相手されてるのでは?


 いまだに笑い終わらないレオン様を横目に不貞腐れながら紅茶を飲み干す。


 やはり推しと推しがくっつくに限る!いまだに笑い負えないレオン様を見て私は一刻も早く入学式の出会いイベントが来ないか願うのだった。


 

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