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推し、来たる

「つまりそこそこ愛想良くしつつ今までの事をお詫びして無難に、無難に2人の仲をとりもてばいいのよね?」

「それが1番いい方法だと思います。いつもの話し方をしないだけで好感度上がると思うので」

「なにした私……」


 どうやら公爵様はもうすぐ来てしまうらしく今後の私の推し2人が結ばれるために友人ポジションをこの一年で全力で勝ち取らなければいけなくなった私は月に一度の顔合わせであるお茶会前の作戦会議に精を出していた。


「……ちなみにいつもの私はどんな感じ?」

「一言目に挨拶、二言目には求婚でしたね」

「ぎゃあああああ」


 令嬢あるまじき姿で叫んでしまうけど恥ずかしすぎる。そんな恥ずかしい人間の引き継ぎなんて私には荷が重すぎる。無理。


「今のお嬢様はまともすぎるのでそれを続けてさえいえば友人にはなれるのでは?今までの負債がデカすぎますけど」

「そんな気がするから余計言わないで……」


 いつのまにか負の感情の債権者にされてるしため息が止まらなさすぎて地球温暖化を促進してるけどもうそんなことは言ってられない。


 私がこの身体に入ってセレナ・ヴィクトリアになった限りもうセレナとして生きていくしかないんだから……

 

 膝に置いていた手を強く握りしめる。ゲームではあまり取り上げられなかったけど悪役令嬢である私の最後は悲惨だった。それを回避するためにはこの一年は無駄にはできない。


 ふう……と最後のため息をつく。もう腹を括るしかない。

どんなに恥ずかしくてもこの1年間はドキドキ♡友情キューピット作戦〜愛は唐突に〜を遂行してみせるんだから……!

 最高にイカしてる作戦名もつけたことだしあとはレオン様を待つだけ……!


「セレナ様、レオン様がお付きになりました」


 ついに来た……!!!心臓の鼓動をこんなにも感じたことはあるだろうか。かなり緊張している。

 意を決して立ち上がる。さあこいレオン公爵!(また爵位は継いでないから正確にはレオン様!)

 私があなたに愛を教えて差し上げるわ!!!(私を介してソフィアと!)

 

 気合いが入りすぎて立ち上がる時に椅子が倒れかけそうになるけどそんなこと気にしてられない。私にとってはこれがレオン様とのファーストコンタクト、絶対にここのセットは落とせない!!!


 門と庭が繋がってる道の方から足音が聞こえる。

 

「ごきげんようレオンさ………は?」


 ……目に入ってきたのは圧倒的な美の暴力。

 男の人に美しいって言う表現はあまり使わないけどそれでも美しいとしか言えない。艶のある黒髪に目が離せなくなるほどの切長な目、男の人ではあるけど人間離れした肌の綺麗さ。

 

これで公爵?だだの国1番のイケメンじゃないか。神様パーツこの人に全振りしすぎよ。顔面強すぎ。

 てか身長いくつ?たっか。股下に一軒家建てそうなレベルなんですけど。スタイル良すぎ。なにこれまじでゲームよりもビジュがいい。

 腰にさしてる剣がエロいですね。え、セクハラ?すみません。


 ――――そしてその黒手袋!!!なんとレオン様は女嫌いで女に直接触りたくないという理由で手袋を常にしているのだ!そしてヒロインに惹かれてはじめて直接触れたいという気持ちで手袋を外す時のあのスチル――。

 

 もう一生忘れることができない美の集大成。あれはカッコ良すぎて何度も繰り返しプレイしてガン見してたな……。あそこはほんと何度も見てもいい。こっちの世界でもあわよくば直接見たい。

 

 おっと、生レオン様を見てテンションが上がってしまった。

もう頭の中でこの美しさの処理が追いつかないままレオン様はこちらに近づいてくる。


 でもほんとこの美しさ……


「神…………」

「……は」

「あっ」


 やば!!!!やばやば!無難に挨拶して好感度をマイナスからゼロにするはずだったのに!

 でもその間の抜けてる顔は大変大好物です!ご馳走様です!


「あああ間違えましたわ!ご、ごきげんよう!レオン様!」


 なんとなく見よう見まねでご令嬢らしい挨拶をしてみる。ただ身体に染み付いているのか自然と体が動いた。それはありがとう。セレナ、転生して初めてあなたに感謝するわ


 レオン様は相変わらずなんだこの生物は、と婚約者に向けるべきではない視線をこちらに寄越していたがしょうがないじゃない。あなたみたいなイケメンはある美の暴力なんだから少しくらいは驚かせて欲しい。


「……」

「あ、失礼しました!どうぞお座りください!ニーナ!お茶を入れて差し上げて!」

「……」


 気まずっ!!!!さっきから公爵何も言わないんですけど!?なんでぎこちないわけ……?

 なんとなくレオン様はクールなイメージが強いから少しどこか戸惑ってるのが見て取れる。


 ……いや何してんのよ。


 ふと視線を横にずらすとダルケルがこちらをみている。しかも手元にはご丁寧にカンペのようなものを持っている。庭の花壇で花が咲き乱れてる中うまく体を捩じ込ませて擬態しているつもりらしい。コ○ン君でももっとうまく隠れるわ。あの人は隠れる気あるの?

 じとっとした視線に気付いたのか頭の上にカンペをこちらに見やすく掲げる。


『お嬢様はまずレオン様に抱きついて基本的に離れません』


 ……まじか!!!!初手から詰んでた!?抱きついてなくてももう少し好意を持ってる振りして徐々に友情に持ち込むべきなのに急に私ブリザード対応をしてしまったということね!?


 私の目の前には相変わらず言葉を発さない見目麗しい公爵様。しかも紅茶に手をつけるなさそうだし、私を冷ややかな目で見てるし、


……このお茶会前途多難過ぎる!!!


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