勉強会編4
入口の方から声がして振り向くとリアム様がすぐそこに立っていた。心なしか顔色が悪く怪我をしていないリアム様の方が心配になってしまう。
なんでって……気づけば体が動いていたからだ。つい危ないと思ったらその先は考えるよりも先に体が動いていた。守りたいとか、そう言うのではなく体が先に動いていたのだ。
「自然と体が動いていました。後から考えたら他人に治癒魔法を変えるよりも自分にかけた方が治りが早いですし、こっちの方が……」
へらへらと気にしなくてもいいですよアピールをしようとしたら、
「何を言っているんだ!自分が怪我しても他人が無事なら大丈夫なんて良いわけないだろ!」
「!」
怒鳴るなんて行為と無縁そうなリアム様が大声をあげ、肩を掴みその反動で体が揺さぶられる。
目の前に必死な形相をしているリアム様を見るとただ単に怒っているのではなく心の底から心配してそう思ってるのだとわかる。
……建前じゃなくて本気で私のことを心配してくれているんだ……。
その肩に置かれた手を乱暴にレオン様によって取り払われる。険しいリアム様の顔も少し和らいだ。
「ごめん、ついカッとなっちゃった」
「女性にその態度はいただけないな。それにお前らしくない」
「リアム様の方が大丈夫ですか?」
さっきよりかは顔色が悪くなくなったとはいえ、まだ本調子ではなさそうだ。まだ出会って何日も経ってないけどいつもの飄々としたモテる男、というイメージとは離れているくらいには体調が悪そうだ。
「いや、ほんと……ごめんね。傷は残ってない?」
腕を取られて傷の確認をされる。レオン様とノア様のキャラの濃さで霞んでしまうけどこの人も十分美形だった。伏せられがちな目元のまつ毛はほんと儚げでドキドキしてしまう。
「大した傷でもなかったですしほら、もう大丈夫です!」
令嬢らしからぬ腕をガバッと出すと耐えきれないようにリアム様が笑う。
「ふっ……そんな腕出さなくていいから……!セレナちゃん面白いなぁ」
いつもの調子に戻ったのかいつのまにか髪先を指で掬われくるくると巻かれる。長髪イケメンは守備範囲ではなかったけどモテ男もいいな……。絵になる……これもはやスチルなのでは……?リアム様ルートも……と、この場にぐわないことを考えていると
「ほんと、男が女を守るのはわかるけど、女が男を守るなんてね」
ふっ、と自嘲気味に笑いせつなげな表情を見せる。
「……本当にそうでしょうか?」
「え?」
「私は守られるだけなんで嫌です。必要であれば大事な人を守れるような人でありたい。女だから守られて、男が傷ついていいっていうのは私は嬉しくないです。私も戦いたい」
真っ直ぐとリアム様の目を逸らさずに見る。本心からそう思う。仮に私が治癒魔法を持ってなくてもリアム様を守ろうとしただろう。
「くっ……あはは!」
耐えきれない様子で腰を折るほどリアム様はツボに入ったらしい。
「……笑すぎだろう」
むっとレオン様が静かに抗議する。さっきからさりげなく肩を抱かれているのが気になる。このちゃっかりさんめ。
「そっか……セレナちゃんは強いんだね」
笑いすぎて涙が出たのか指先で拭いながらなんとかこちらを見ている。先程のシリアスな雰囲気もなくなりリアム様が入り口の方に向かって先に扉を開けてくれた。
以前は軽薄な笑みを見ることが多かったが今は暖かさに溢れる笑みを浮かべている。もしかして少しは知り合いとして認められた……とか?
「どうもありがとうレディ、でもエスコートは男にさせてね?」
「俺がする」
教室に戻るまでレオン様とリアム様でエスコートを取りあっていたがこのままみんなと仲良くなってしまえば断罪を回避しつつレオン様とソフィの中が取り戻せそうだと私は密かに安堵した




