勉強会編3
〜前回までのあらすじ〜
勉強を始めよう〜不穏な人間関係を添えて〜
「あの……レオン様?」
「なんだ」
「こちらにはノア様がいらっしゃいます。あまり実力が偏るような割り振りにはしたくありませんの。お手数ですが別のテーブルに……」
主催者に気を使わせるという、ダメ案件が発生。なんと、あのあとレオン様も同じ席に着いてしまったのだ。レオン様ってもしかして不思議ちゃん入ってるのか?
レオン様のそっけない態度にもめげずリディアは軽く眉を上げ、静かに告げる。
「レオン様とノア様は、あまりにも実力が強すぎて同じグループにはできませんわ。別テーブルでお願いいたします」
レオン様は少し眉をひそめて、駄々を捏ねる――いや、本人は駄々を捏ねているつもりはないらしい。
「駄々を捏ねているわけではない」
「えっ」
思わず心臓が跳ねる。なんで読まれるの……!?
「顔に出ている。そもそも君が婚約者以外の男と一緒にいるのがよくない。君も、ちょっかいを出されていると自覚を――」
しかしレオン様が言い終わらないうちに、ノア様が軽く私の肩に腕を置き、ふわりと引き寄せる。
後ろからの距離、香りの存在感、指先の微かな重み――すべてが心臓を締め付けて、自然にドキドキが増幅する。
「俺は普通にセレナ嬢と仲良くしたいだけだぞ?それに、これは交流を深める場だ。婚約者と一緒にいれば、かえって偏るだろう?お前は今までに十分セレナ嬢と交流しているだろうが俺とセレナはまだまだ、お互いを知る時間が必要だと思う」
謎めいた笑みを浮かべて、ノア様は静かにレオン様を挑発する。あとさりげなくセレナって呼んだな。
その横顔を見ているだけで、息が止まりそうになる――冷や汗が背中を伝い、視界が一瞬揺れる。
私は肩越しにチラリとレオン様を見る。険しい表情。なんだか気になるけど、理由は自分でもわからない。
その瞬間、教室の空気が妙に張り詰めて、室内のざわめきの中で、私だけが不思議な緊張感に包まれていた。
結局レオン様が渋々隣のテーブルに移ったのだがその先にリアム様がいて結局一波乱来るような気がしてならない。
とは言えせっかくの勉強会の機会なのでトラブル続きでもはや帰りたさMAXの中めげずに魔法の練習を始める。
「こうやって、手を返すんだ」
ノア様がそっと手を添えてくれる。指先の温かさ、近くで聞こえる低い声――思わず息を止める。ドキドキしたらダメ……!
ここの世界では本格的に魔法を使うため少し気を抜くとすぐに怪我になりかねないため細心の注意が必要だ。
そしてなんとか席を隣に移したレオン様がさっきからこっちをチラチラと見ているが等身大の顔のいいフィギュアだと思って心を無にして練習することにした。
「なかなかよくなってきたんじゃないか?」
「本当ですか!?」
パァッと顔を綻ばせ思わずノア様の方を見る。練習をしているうちにだんだんとノア様のアドバイスなしでも基礎魔法を安定させることが出来ているらしい。ふと額に少し汗が浮かんでることに気づいた。
午前中から集まってるけどそろそろお昼休憩挟めたりするかな。どれくらい時間が経っているのか気になって時計を探そうと顔を上げたその時、隣のテーブルから一瞬、火花が飛び散った。視界にはレオン様が映り魔法が暴発した人を落ち着かせようと手を伸ばそうとしているのが見えたが――……
「危ないっ!」
隣のテーブルから鋭い声が聞こえてきたと思った時には魔法によって激しく火花を散らしてる様子が見えた。そしてその火花はリアム様の方に向かって行くところまで確認し、気づくと咄嗟に体が反応してリアム様を庇い魔法を逸らすように力を入れていた。
「セレナちゃん!」
その瞬間、指先に鋭い痛みを感じ、血がにじむ。
「……っ!」
思わず声を押し殺す。必死で止めてしまったが魔法が手にかすってしまったようだ。
顔を上げると、リアム様の視線がこちらに向いていた。今まで見てきた軽薄そうな印象とは正反対に険しい表情の奥に、少し驚きと困惑が混じっているように見える。
「セレナちゃん……?」
戸惑いが分かる声色でようやく怪我をしているんだと気づく。見た目はそうでもないがもしかしたら服の中は血が想像より出ているかもしれない。正直自分の体温、指先の痛み、呼吸の速さがすべて意識に浮かび、息を整えるのがやっとだ。
「少し当たったかもしれないです。外に出ますね」
なんとか平静を装って廊下へ出た。
静かな廊下に出ると、少し冷たい空気が頬を撫でる。腕を軽くなでると思ったよりも血の感触を感じた。これは思ったよりも怪我が深いかも……。多分大丈夫……よね?さらに不安を煽るように血が出る。
「……腕、どうした?」
「!?」
振り返ると、レオン様が歩み寄っていた。平静を装っていたはずなのについてきたの……!?驚きで思わず固まった私の前までレオン様がきた。止まってもどこか体が安定しない。
「痛むんだな?」
「え、いや別に……」
顔を上げると思わずハッとする。レオン様の顔が思ったよりも苦痛に滲んでいたからだ。まるで私の怪我の痛みを感じているかのように顔が歪んでいる。そんな顔をしてほしくなくて思わず怪我していない方の手でレオン様の頬に手を添える。
「すまない。俺が席を離れていなければ……」
「気にしないでください。思わず体が動いてしまっただけな、え!?」
さっきまでのシリアスな雰囲気とうってかわって急に視界が反転する。もしかしなくてもお姫様抱っこをされている。私にやらずにヒロインにやってあげて欲しい……じゃなくてすごく恥ずかしいんだけども!?
「ちょ!?」
さすがにこの姿を誰かに見られるのが恥ずかしすぎて足をバタつかせるが器用に動きを封じられてしまう。
「医務室があることを聞いた。すぐに向かおう。腕はあまり当たらないようにしてくれ。痛いだろ」
先ほどの儚げイケメンの面影を残すことなくいつも通り俺様ムーブで医務室に向かっていく。
医務室の中に入り怪我をしている腕を出すと自身に治癒魔法をかける。光が指先を包み、ほんの一瞬で傷が消えた。ここまで酷い怪我をしたことがなくて不安だったが意外とこれぐらいの怪我でもいけるらしい。ほんと悪役令嬢向きの魔法ではない。
「……連れてきてくださってありがとうございます」
声が小さくなる。頬を赤くしながらも、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じる。
レオン様は黙って見つめ、ほんの少しだけ表情が緩む。無言のまま、しかし確かに――私を意識しているのがわかる。
医務室に響く静かな余韻の中、私は手を握り直し、心臓の高鳴りを抑えながら部屋を戻ろうとすると
「セレナちゃん」
更新がすごく遅れました。もうSNSとかやって緊張感ないと更新が遅れてしまうのではと悩んでいるこの頃です。




