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ダブルデート編6

食事を終え、カフェを後にする。

カフェが植物園のちょうど真ん中にあるから、道のりは残り半分らしい。すごく楽しみにしてた場所なのに、なんだかんだノア様とそのご家族との時間が楽しすぎて、もう名残惜しさを感じてしまっている。


心なしか、足取りがゆっくりになっているのは、気のせいじゃないと思う。


「リム、あっち、見たくないか?」


「面白そうね! セレナちゃんもこっちに——」


手を引かれそうになった、その瞬間。

横から伸びてきた腕に、スッと遮られた。


「紹介はしたんだ。そろそろ分かれてもいいだろ」


「もー!ノアったら、2人きりになりたいってこと!? そうよね、2人じゃないと思う存分イチャイチャできないもんね?」


「……うるさい。行くぞ、セレナ」

「えっ!?いいんですか!?」


ノア様の手に引かれながら、2人の視線を背中に浴びる。ニヤニヤと頬を染める彼らの視線がくすぐったい。繋がれた手が、じんわりと熱を帯びている気がした。


——もはや植物園どころじゃない。

私は推しカプの2人を支えるために動かなきゃいけないはずなのに……なんで他攻略キャラとデートしてキャッキャウフフしてるんだ川田はるか!!しっかりしなさい!


でも、声をかけようとしたその時。


「……ここだ」


「?」


考えごとに夢中になって、周囲の景色が目に入っていなかったことに気づく。

顔を上げた瞬間、思わず息を呑んだ。


空間いっぱいに咲き誇る花々。

空中をゆっくりと舞う色とりどりの花弁——魔法によって浮かんでいるらしいその景色は、まるで夢の中に迷い込んだように幻想的で、言葉が出てこなかった。


「綺麗……」


声にならない感動が、ぽろりとこぼれる。


「こういうの、好きだろうと思った。パーティーでガーデニングに力を入れてるって言ってたしな」


ふと笑いながらこちらを見てくるノア様は、まさに少女漫画の王子様みたいで——心臓がギュッとなった。

こ、これスチルじゃない!?やばい……語彙力、働け!


「そもそも、2人で出かけたかったのに、邪魔されたからな」

「私は、4人でも楽しかったですよ?」

「……少しは2人きりでいさせて欲しい」


え。

まるで当然のことのように告げられ、思わず視線を落とす。

付き合ってるわけでもないし、友達と呼ぶにもどこか曖昧な関係なのに——

ノア様、甘すぎる……! 馬車の中でもそうだったけど、恋愛耐性ゼロの私には心臓に悪い!!

キュン死、現実にもあるかもしれない。


もはや心臓発作のように胸を押さえて悶えていると、彼は空を見上げながら小さく呟いた。


「……本当は、こういう場所が好きなんだ」

「私もです! 一緒ですね!」

「!」


驚いたようにこちらを見てきた。でもそんなに意外だったかな?と、私は首をかしげる。


「男がこんな“女々しい”ものを好むと聞いて、何も思わないのか……?」

「なんでですか?」

「俺の周りには、男がこういうのを好きなのは“らしくない”って意見が多くてな」


 そこには少し薄暗い過去が見えた気がしたけど、ノア様にはそんな顔をしてほしくない。


「うーん……でも、ただ好きなだけで誰かに迷惑をかけるわけじゃないんですよね?だったら、好きでいいじゃないですか。誰にも遠慮せず、自分の“好き”をちゃんと大事にしていいと思いますよ」


語りながら、思わず頬が緩む。

ノア様が自分の“好き”を教えてくれるのが、嬉しくてたまらなかった。


「あなたが好きなものを否定する権利なんて、誰にもないです。聞き流しちゃいましょうよ」


 ノア様はふっと笑い、少し照れたように花の浮かぶ空を見上げる。


「ほんとに……不思議なやつだな」

「褒め言葉、じゃない……ですね?」

ジトリと視線を移すと、私とは正反対に機嫌の良さそうなノア様の視線が一瞬だけ柔らかく揺れて、少しだけ目を細めた。

そして、そっと私の手を包むように手を握る。


「なあ、もう少しだけ、こうしててもいいか?」


花の舞う中で、ゆっくりと近づく彼の声は、こちらに判断を委ねているような聞き方だが断らせる気が全くないこと伝わるほど優しく強く手を握りしめ、その声は少しだけ低くて、あまりにも甘かった。

 

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