はじまる
〜前回までのあらすじ〜
起きたら悪役令嬢になってた。
「ってことは今は魔法学院入学前ってことね?」
「ええ、15の時に入学が許可されるのであと1年でご入学になりますね」
ヒロインと公爵の出会いはもちろん入学式…私がヒロインが歩いて登校して貧乏くさくて品がないって詰められてるところをレオン様が宥めるんだよね。泣きそうになってるヒロインに声をかけようと目があった時に恋が始まってしまう…
おお、想像するだけでご飯5杯いける….!!!!
出会い!!!出会いをS席で!!!早く観たいんだが!
早送り機能とかってこの世界ないの??
「…お嬢様?」
鼻息荒くガッツポーズをして妄想に勤しんでいる悪役令嬢らしからぬことをしていたらダルケルが引き気味に正気か確認されてしまった。正気ではない。
「あ、ごめんなさいご飯のこと考えてたわ」
「急に食いしん坊になりましたね。前はレオン様の前ではスタイルを良くしたいからと言ってあまり食事は取っていなかったんですよ」
護衛のダルケルは気にしてないように言うけどそれはこの体を見るとわかる。ただただ細い。胸はあるけどなんで言うんだろう腕と脚がやや病気っぽく見える細さ。
無理やりこれ絶食みたいなことしたんだろうな…。腕と脚を見ると確かに細いけど健康的でないやり方でスタイルを維持しようとしていたのがわかる。
顔もめちゃくちゃかわいいんだからそんなに心配することないのに…。
「私そんなにレオン様が好きだったの?」
ダルケルはもう開けられませんとばかりに目を見開いた。
「あ、あんなに頭おかしくなるくらい好きで狂ってたのに忘れちゃったんですか!?そりゃもうまわりの生命力を吸って求愛してるレベルですごかったですよ。いやでも記憶喪失って便利ですね。こっちの方がまともそうだから助かります」
おい、本人の前で悪口を言うな。傷つくぞ一応他人のことだけど。あとなにが助かるんだ。
「あと…レオン様は私のことそんなに好きじゃないのよね?」
「まあストーカー狂いのヒステリックな人を好きになる男がいればお嬢様はどストライクですよ。俺は見てて面白いので好きですけど」
それあくまで自分が関わらずに見る分には面白いって言うある意味観劇状態じゃない?そんな気持ちで主人に仕えてたの?なにこの人怖いんだけど。サイコパス?
やっぱ悪役令嬢の護衛、ただものじゃない…と謎に感慨深くなると同時にゲーム同様、やはりストーリーが始まる前から好感度はマイナスっぽさそうだ。
でも逆にこれがヒロインとの愛を深める要因になるならめちゃくちゃこの状況ですら美味しいな……おっと、よだれが。
また妄想してしまった。頭を切り替えて今後どうすればいいか考え始める
「やっぱそうよね…」
いくらここが好きな乙女ゲームの世界とはいえ実際に私に取ってはリアルな人間の話。推しと推しが付き合うのが1番の幸せとは言え、自分が嫌われてると言う事実だけで気分が落ちる。
私の身の振り方を考えるとヒロインをあまり傷つけないで公爵とくっつけて、自分どこかでハッピーエンド!がよさそう。
なんか別の作品でもそんな感じの方向性のやつ見たことあるし多分間違いじゃないはず!
この国じゃないところに行くのもいいわ……
考えに耽っているとダルケルが顔を近づけてくる。
「で、どうします?明日レオン様きますけど、会います?」
「……明日!?」
待って、もう!?