とあるカフェにて
〜前回までのあらすじ〜
反省会しとけば何も解決しなくても何かが収まり良くなるもんだよね★
あの怒涛の1日が私の前世の人生で大変だったことを詰め合わせてもあの人のような目まぐるしいことにはならないだろう。
と、目の前にいるそれはそれは見目麗しい公爵子息を見ながら私は独りごちたのであった。
うーん。ティーカップを持つ所作だけでも本当に絵になる。ここにスマホがあったら絶対お金を払ってでも撮らせてもらってる。目の前にいるレオン様とやらはカフェ中の視線を欲しいがままにしている。そして本人は全く気にしていないのもモテ男らしさが出ている。
「……俺の顔に何かついてるか?」
「いいえ!その、レオン様の飲んでる紅茶美味しそうだなー……と」
「……」
あなたの今の姿がスチルになりそうでなんならお金も稼げそうなビジュアルだと思ってましたなんて口が裂けても言えない。必死にそれっぽい話題を引き出して誤魔化すが目の前の美丈夫は質問をしてきた割にはすぐに手元の紅茶を嗜んでいる。
先に質問してきたのそっちやろがい。
長い足を組んだまま外を見ている。そう、まるで私に興味がなさそうに。そう、興味がなさそうなのだ。けど聞いて?
今日のこのカフェ私が誘ったかのように見えるじゃん?レオン様から誘ってきたんだよーーー!!驚愕の新事実じゃない?
――3時間前。
本編が始まる前になるべく成績を良くして自分の立場を固めるべく治癒魔法の練習をしていた頃だった。庭で練習をしてたらなんと……目の前に不気味なカンペが……。
そこには「後ろ」としか書かれておらず、恐る恐る後ろを振り向くと……声をかけずにじっと私を見ているレオン様が背後にいらっしゃるじゃないですか……!
とまあ怖い話風に言ってしまったけどどうやらレオン様、誘うのが苦手すぎてどう声をかけるのかタイミングも見失っていたらしい。個人的にはホラーである。
あれか?今まで何もしなくても言い寄られてきたから声をかけるタイミングが分からなかったとか言うんじゃないだろうな?最高かよ。そんなお前も愛するよ。ヒロインとくっつけ。俺が幸せにしちゃる。
モテすぎて声をかけられるのが当たり前だからどう声をかければいいか分からないからじっと見つめられていたとか何事。もしかしてコミュ障?
公爵家の人間にそんなことを思うともはや無礼すぎて一周回って礼儀正しい気もするのだが(そんなことはない)私に声をかけずにじっと見てたとかこのイケメンでなければ通報案件だったのである。
練習もほどほどしたし、休憩でもするかと思ったら不器用に今街で人気のカフェがあるらしいぞと遠回しに誘われた。そういうのあまり興味なさそうなのに意外と調べてあるギャップに萌えたのはまた別の話。
ちなみに最初それが誘い文句だと思わずに世間話だと思ってしまった。一緒に行こうぜベイビーくらい言って欲しいものである。
「……この間は悪かったな」
「……?」
この間って……。もしかしてパーティーのこと?
何かされたかしら……。そもそもあなたとは帰りに送られただけの関係でそれよりもインパクト強い出来事があったから……だめだ。本気で何も思い浮かばない。
「君にドレスを贈らなかったし、パーティーでエスコートすらしなかったことだ」
「ああ!全然気にしないです!」
「……は?」
うわお。そのポカンとした顔可愛すぎる。なにそれどこまで私を沼らせれば気が済むわけ?
レオン様渾身のポカン顔を拝見しやはり推しは尊い物だと実感する。そうだいいぞもっとやれ。
「何か思うところはないのか?」
手に持ってる紅茶に追加で砂糖を入れながらクルクルとスプーンで回しながら聞いてくる。どことなく拗ねて見えるのは仕草のせいだろうか?
「別に」
どこかの芸能人みたいな受け答えになってしまったのは許してほしい。なぜならあのパーティーでは来年入学する新入生たちの顔だったり、元の自分の立ち位置を知れればそれで大収穫だったから正直レオン様がずっと最初からいたら邪魔だったまである。1人の方が実際動けたし。まあダルケルが抜けてとんでもないハプニングに巻き込まれたのは驚いたけど。
でもなるほどなるほど、何もしてないことが気がかりだったのね。
ふむふむと探偵気分で事態を把握する。
なんてことないように目の前にお菓子をつまみながら答える。正直ヒロインと一緒にいないレオン様にはときめかないのでもはや実家で煎餅を食べているような気持ちになってしまう。
もっと悪役令嬢しろ私。
「……そうか」
ふとレオン様を見ると少し笑ってはいるが複雑そうな顔をしていた。私とは友達だからもう少し歩み寄れってことかしら……?
自分の生存ルートのために頭を捻っているとレオン様が気まずそうに口を開いた。
「ところで、ノアとは……どうだったんだ?」
おかしいな、恋する乙女のように一瞬見えてしまった。老眼かな?




