全員揃ったパーティー6
「いたいたノーちゃん。もー勝手に離れないでよね〜」
「のーちゃん……?」
「リアム」
足音がする方に目を向けるとそれはまあレオン様とノア様に負けず劣らず腰に剣を差した長髪ポニーテルのイケメンがいた。
ぐっ……!今日1日だけでどんだけ私の目を潰す気だ!眩しすぎて目をしぱしぱさせていると長髪イケメンのリアムとやらがノア様に気さくに話しかける。
「女性に声をかけられたと思って見てたらどっか行っちゃうんだもん。焦ったわ〜」
へらへらと実際にはそんな焦ってないですよねあなた、と言わんばかりに気安く話しかけている。見た感じ騎士……かな?じっと長髪イケメンを見てしまったものだから目が合ってしまう。
「ついて行ったご令嬢とは違くない?誰?この子」
「俺の婚約者」
「え、あのストーカー狂い?」
「やめろ。今は和解したんだ」
ストーカー狂いて……。どこまでも私はストーカー扱いらしい。
「ごきげんよう麗しいお嬢さん。レオンの婚約者ってことはセレナ嬢かな?」
パチンっとウインクしながら手を差し伸べながら挨拶をする彼はよほど女性慣れしてそうだ。
「はい、レオン様の婚姻関係を結んでいるセレナ・ヴィクトリアです。」
「ふーん、聞いてた話より全然おとなしくて好みだけどな?」
「……っ!」
さりげなく手のひらを彼の唇の元まで運ばれてキスをされる。そのまま上目遣いでそんなことを言われてドキドキが止まらない。
「やめろ」
素早くそのまま私の手を強奪することに成功したレオン様はキスしたところを重点的に布で拭いている。あの、さすがに失礼だと思うんですけど……
「美しいご令嬢がいたら挨拶するのが礼儀だろ?なぁセレナちゃん」
「そ、そうですね?」
あまりにも下心のない軽やかな笑顔でいうものだからつい頷いてしまいそうになる。
「もう十分だろう。俺とセレナはここで失礼する」
「えー?お前ここにきたばかりだろ?」
「……なんで知ってる?」
「さっき馬車から降りてるのを見た」
「知っているならいちいち言うな」
さっき来たばかりなのにもう帰るって相変わらずレオン様は忙しいんだなぁとしみじみと思う。
飄々と堅物なレオン様と言葉を打ち交わしては掴みどころのない会話を繰り広げているリアム様。一体何者……?というのが伝わったのがリアム様がこちらを見る。
「俺ら3人は幼馴染なんだ。」
「なるほど。どおりで……!」
すっと違和感なく私の目の前に現れノア様が私の手を取る。
「俺の方がレオンより優しいぞ?きっとな」
その手をレオン様がすかさず手を払う。さっきから容赦ないな……。
「彼女は私の婚約者だが?」
「友人になるのにお前の許可が必要なのか?」
「ねえ俺も混ぜて?」
どうりで3人が集まると砕けた雰囲気になると思った。仲が良過ぎると思ったがそういうことだったのか……だから身分に差があってもこんなにも親しげなわけだ。
それにしても、のーちゃん?って聞いたことあるな。なんだっけ。ピュアラブでのーちゃん。のーちゃん。のーちゃ……!!!!
「ああああ!!!」
急に叫ぶという奇行に走ったが許してほしい。目の前にいるこのノアという男……。そう、そうだ。王子だ!!!
レオン以外は飛ばし気味でプレイしてたからよく覚えてないけどリアムという騎士がノアと幼馴染で、のーちゃんと呼んでいたのを思い出した。
この3人が幼馴染というのは本編ではあまり強調されていなかったが、確かリアム様とノア様の方が出会いは先だったはず。だからこんな砕けた呼び方も許されてるんだよね……
しかも入学一年目はノアは男爵令息として過ごす。学園において自分が貴族の中でも低い身分でも分け隔てなく接してくる人を見極め将来自分の部下となる候補を見つける、とかいう理由だった気がする。
やっぱり目の前にいる銀髪の彼は攻略キャラだったのだ。しかも王子の幼馴染も攻略対象で王子と騎士のライバルイベントもあったはずだから必然的にリアムも攻略対象だ!!!
「なんだ」
「いえ……その…なんでもないです。家の用事を思い出して……」
あなたが王子って思い出しましたとは言えるわけなかろう。そしてお隣の彼も攻略対象ですなんて言えない。頭おかしいと思われる。いやもう思われてるか。
なにせ王子は学院入学一年後に正体を明かす予定なのだから私が今見破るわけには行けない。そんなことをしたら全身黒タイツに消されてしまう。コ○ンくんに出てくる被害者のように。
それはそうだ、いくら幼馴染とは言え公爵相手に男爵の令息がこんなに馴れ馴れしくしていいはずがない。レオン様もノア様が王子様ということを知っているんだろう。やばい、ここにきて他の攻略対象のパートをすっ飛ばしてたのを後悔するなんて思わなかった……。
記憶が微妙すぎて今後が怖くなってきたぞ……
どうしよう。公爵家嫡男レオン様、王子のノア様、騎士のリアム様……まずい。これ今日で攻略対象の何人と出会っちゃったの!?
レオン様以外とは接触しないように気をつけてたのに〜!!!地団駄を踏みたくなる気持ちを抑える。
不思議な顔で見てくる美形3人組をよそに絶望でしているであろう顔を晒している自覚はあるがこればかりはしょうがない。気をつけてた攻略対象に不可抗力で会ってしまったのだから。
変に関わったら断罪ルート来るんじゃないのこれ。もういっそのことみんなで頑張って努力してハッピーエンドを目指そうよ。ハッピーエンドのその先を目指そうよ。謎の学級目標を掲げ心の中で3人に訴えかける。
「こいつ貰っていいか?」
「おい、婚約者がいると言うことを忘れるなよ?」
「え〜じゃあ俺も興味持っちゃお。噂とはかなり違うみたいだし」
三者三様にバラバラなこと言ってますけど全員私に関わることを言っていて落ち着かない。
「あの、皆さんが思ってるほど私面白い女じゃないので!」
とりあえずここまできたら避けるしかない。一生懸命3人から離れながら手を突き立てる。ジリジリと3人から離れる。
「女が言い寄られてる男を助けるなんて面白い女以外にないと思うが?」
「なにそれ?見たかったんだけど」
「お願いだから暴れるな……」
その後レオン様には洗いざらいことの経緯を言わされ、ノア様には興味を持たれレオン様との婚約関係について根掘り葉掘り聞かれ、リアム様には好きなものから嫌いなものまで個人情報を持っていかれた。
「まじでやらかした」
帰りの馬車に乗ってるときにはダルケルの肩に寄りかかりながら美形3人から質問コーナーをされまくっている夢を見てうなされるのだった。
◻︎ ︎◻︎ ◻︎
バルコニーから見える影。男は長身をバルコニー手すりに預け、足の長さを持て余すように緩く足を組み、とあるご令嬢が乗っている馬車を見つめている。
「あれが噂のセレナ嬢かぁ。随分と噂と様子が違うみたいだけど……ふうん。思ったよりも可愛い子っぽいね」
――攻略対象が別にもいたが確実にロックオンされていたことにこの頃の私は気づいていない。
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