全員揃ったパーティー4
「マジでなんなんだよお前!」
「……もしかして私?」
とんでも言いがかりをつけられ思わず自分に指を向ける。
「そもそも勝手にこっちの話に入ってきて言いがかりをつけてきたのはそっちのに!気持ち悪いポエムぶつけるなよ!」
目の前に自分が口説こうとしてた人が仮にもいる状況なのにとんでもなく口が悪いんだがそれほど理性を失ってしまっているんだろうか。
ぼんやりと考えてると怒り狂ってるご令嬢様が私の目の前にやってきて腕を大きく振り上げる。
え!?叩かれる!?もはや逆ギレじゃないの!?まずい!
目を瞑って衝撃に備える――が、一向に叩かれる気配がなくそろりと目を開ける。
「……!」
「いい加減にしろと言ったのが聞こえなかったか?」
目の前にはそれはもう怒りに震えてる可愛らしいご令嬢と、マイナス何度ですかと言いたくなるような目元を漂わせている男爵令息が目に映る。
ただご令嬢は腕を上げてそれはもう私に加害をしようとしているが、それを止めているのは男爵令息のノア様だ。
「……もういい。今日のことは大事にはしないでやるからもう行け。相手にする気にもならない」
「……なっ!あんたっ!覚えてなさいよ!」
ほんとに私のせいだと思ってる!?と思いつつも彼女はキッとこちらを睨みつけながら足早にこの場を去っていく。遠くなる背中を見つめるがあまりにもこの短時間で起きた出来事が怒涛すぎた。
……もうここにはいられないな。騒ぎになって少し人が来ちゃったし、休んだからパーティー会場に戻って挨拶しつつダルケルを探そう。
また来た道を戻ろうとすると腕を引っ張られた。
「え……!?」
「君には去れとは言っていないが?」
「わ、私はその用がない……のですが」
「俺はある」
な、何この人!?文句の一つでも言ってやろうと後ろを振り向くと、
……………………!!!!!!!!
スチルだあああああああ!!!こ、この美貌は!!!スチルだあああああああ!!!!
なんと言う美しさ。銀髪に赤い目、それはよくある容貌だがあまりにも洗練されすぎている。レオン様も美しいがこの人はなんだ、人外の美しさと言うのか。見てて目が痛くなるくらい美しい。
「……急に黙ってどうした?」
「い、いえ。眩しくて…(あなたの美貌が)」
「……。名前は?」
「セレナ・ヴィクトリアです……」
「……もしかしてレオンの婚約者か?」
なんともないふうに言ってるがやはりレオン様レベルだと社交界でも婚約者は噂になってしまうのだろうか。なんとかヒロインとくっつけるために婚約破棄は穏便に済ませないと……。それとなく婚約したくないって言い始めた方がいいのかな…
「セレナ?」
っておい!急に名前呼び!?妙に近いしこの人なんなの!?腕を思いっきり掴まれているし何気に肩を寄せられている。なんなのこの人……さっきのあの嫌悪感むき出しの野獣みたいな警戒心はどこに行った!?
「レオンの婚約者だな?」
「ま、まあ……でもその、若気の至りと言いますか……」
「ふっ、前に聞いたぞ。レオンに鬼気迫る勢いで婚約を迫る令嬢がいたと」
「ちょっとした事情があってですね…」
「へえ?聞いてた話とかなり違うみたいだな?君自身も」
たまたま仲裁に入った先が婚約者の友人?だったってどんな確率?
私のことも知ってるっぽいし手遅れだったー。この美貌を前に取り繕っても引き立て役にしかならないので思わず白目を剥く。やばい、ここからなんとか穏便に友達ルートに乗らねば……
脱力して少しノア様とやらに寄りかかることになるが致し方ない。……少し近づいたらわかるがこの人めちゃくちゃいい匂いする……。なんとなくだが本当に男爵の息子なんだろうか?もっと家柄が上な気品を持ち合わせている気がするけど。
「なんだ?」
「いえいえいえ!何も!お邪魔してすみませんでした!失礼しま――」
「誰が下がっていいと言った?」
ぐっと腕を引き寄せられお互いの体の隙間がゼロになる。
「……!」
「照れてるのか?噂と違って随分慣れてないんだな」
ふふ、とイタズラに笑うその表情ですら胸をときめかせてしまう。これはさっきのご令嬢でなくてもドキドキしてしまう。レオンと同じでクール……ではあるけどどこか人懐っこい掴めないところがある。
やばいこれが攻略キャラだった私この人のルートに……。待てよ?
実はこの世界に来て分かったことがある。基本的に美形が多いのである。モブですら。でも攻略対象やメインキャラはさらに美化される……
目の前にいるとんでもない美形を見上げる。
……もしかしてYou、攻略対象……?どっと冷や汗が全身を駆け巡る。え?なんとなく、というか私の乙女ゲーム経験則が警鐘を鳴らしている。なんでか私は攻略対象に遭遇しやすい気がする。なぜなら悪役令嬢も比較的メイン寄りのキャラだから。
メインキャラ同士は接触しやすい……?と、なると。目の前のこのとんでもない美形も攻略キャラなのでは……?めちゃくちゃ好みすぎる。私が攻略したい。レオン様をヒロインにお譲りするのでこの人は私に寄越せ下さいませ。
なんかもう馴れ馴れしいけどこの美丈夫ならもうしょうがない身を委ねよう好きしてください――と落ちようとしていたところ、別の靴音が私たちの前で止まる。
「セレナ嬢?」
今日の遭遇率の高さは何?もう帰りたいです自分。心の白目を剥いたのは言うまでもない。




