全員揃ったパーティー2
馬車が止まり、扉を開けると――。
「……!?」
「どうしたんですか?お嬢様」
「まってまってまって、ここでやるの?パーティー?」
「むしろこの大きさでないと3カ国分の人数入りませんよ。ほら、早くいきましょ」
なんともないようにダルケルは私を馬車から引きずり出そうとしてるけど本当に少し待って欲しい。
「……デカすぎる」
白目剥きそう。
目の前にあるのはお城というにはあまりにも厳かで格式高い建物であることがわかる。前世が庶民だった私からするとここに入ることも入場料(しかも高額)が必要なのでは?という気持ちになる。
広すぎるしこれ迷子になったりしない……?今日は友達を作るというよりこの世界に慣れることで精一杯になりそう……。うん、そうしよう。水泳でいう顔に水をつけるみたいな、そうよなんでも段階を踏まなきゃ。今日の私にこの城は攻略できない。
そう思ってダルケルの腕をガッチリ掴んで離さない意思を決めたところでパーティー会場に入る。そして一方踏み入れた途端、
「あら、セレナ嬢じゃない。レオン様はどこにいらっしゃるの?」
バトルを仕掛けてくるトレーナーのごとく野生の悪役令嬢が勝負を仕掛けてきた!!!
頭の中で選択肢がよぎる。
・戦う
・逃げる◀︎
……前世でやってたゲームが丸わかりである。
「あらごめんなさい。あなたあの人に嫌われてるんだったわね」
身長はあまり変わらないのに顎を少し上げて私を見下すようなポーズをナチュラルに取るご令嬢に呆気に取られる。
……だめだ、逃げきれない!
「いつも二言目にはレオン様どこ?とおっしゃって会場をうろちょろしてたじゃない。それはそれで見かけたら鬱陶しそうにされてるのにも関わらず腕にしがみついてたあなたが1人でまさか執事と入場だなんて。……もしかして捨てられたのかしら?」
おほほと扇子を口元に優雅に寄せながらつらつらと辛辣な言葉を言ってのけるこの人は天性の悪役令嬢気質があるんだろうな。少し分けて欲しい。
こちとら悪役令嬢に上手くなりきれず推しにキレてひまわりといっただけで爆笑をかっさらえるおもしろ女枠に収まってしまったというのに。
「……言いたいことはそれだけ?」
「えっ……?」
「その話には興味ないです。失礼します」
呆気に取られている悪役令嬢(仮)をおいて今度こそ会場の中に溶け込む。
……正直、どう振る舞うのがいいか分からなかった。ダルケルとニーナに今までの交友関係を聞いてもいいかなって思った。それを元にそれっぽく振る舞おうかなとも思ってた。
けど先日のレオン様と話した時に思ったことがある。私にとってはゲームの話ではあるけどここにいる人たちは当たり前にこの世界に生まれて生きている。最初はゲームの世界だと思って線引きしてたけどここにいる人たちに真摯に向き合うべきだ。
だから今までのセレナではなく今の私で生きていこうと思う。変わったって言われてもいい。それよりもこの世界の人達に正面から向き合いたい。
ゲームのキャラではなく人間として。……とは言いつつレオン様とヒロインはくっつけるけども!
初っ端からかましてしまった。他にもああいう人がいるのかな……。もはや先が思いやられる。
「……お嬢様目立ちますね」
「え?」
周りを見ると特に男性がこちらを見ているような気もする。
「ほんとね?なんでかしら」
「あなたが綺麗だからですよ」
「えっ」
思わずダルケルを見てしまう。そう言われるのもドキドキするけど何よりダルケルがそんなことを言うなんて驚いた。見上げるとなんてことない顔をしている執事がいる。やりおるな。お主。
パーティーと言ってもそこそこ自由らしく立食している人もいれば、家族と参加してる人もいる。あまり見慣れない服装の人は隣国の人とかかな。
この人たちが来年は同級生になるんだ……。なんだかんだでドキドキしている自分がいる。友達もたくさん出来ればいいけど……。でもなぁセレナ節、どこにでも吹かせてるんだろうなぁ
男好きな令嬢ですら警戒してたくらいだもん。他にもやばいことをしてても不思議ではない。
そうこうしているうちに私の元取り巻きだった子達が現れて適当に挨拶をしてパーティーをなんだかんだ楽しんでいるうちにだんだん気疲れが強くなってきた。
「ダルケルー」
「どうされました?」
「少し休める場所ない……?人疲れしちゃった……」
「確かに記憶喪失になって慣れないパーティーだと疲れますよね。2階のバルコニーでもいきますか」
ダルケルは来たことがあるのか真っ直ぐ足取りを進めるとバルコニーまで連れて行ってくれた。意外とエスコートが上手で普段のカンペ役などやりたい放題やってる姿は想像できない。
「ああ……やっと落ち着けるわ」
休むことを想定しているのかベンチまで用意されている。ありがたい。
「なんだかんだ人脈作りに来てる人が多いのでここにはあまり人は来ないので少し休んでてください。俺は世話になった人を見かけたので挨拶してきます」
「わかった。ここにいるから迎えにきてくれる?」
「かしこまりました」
会場に戻るダルケルを見送るとベンチに座ってようやく一息をつく。
あんなに人が多いだなんて……。けど心配してるよりも人が多いことと、始めはやっかみを受けたがそれ以降は特に変に絡まれてない。あとは知り合い経由で顔見知りを増やしておけば安心……かな?攻略対象がいるだろうから見つけたかったけどこんなに人が多いとわからないし……。
と、入学前の今日にできそうなことを考えるとバルコニー付近で足音が聞こえた。どうしよう、休みに来た人かな。流石に知らない人同士で座るのは……
前世然りそこそこ空いてる電車ではいきなり隣に人がいるところではなく満遍なく空けて座ってしまうようややこちらの世界でもそんな感じの感覚でいて欲しい。
そんな願いも素通りされ、ベンチまで人が来ることはなさそうだった。
「……?」
そしてその気配はなぜかバルコニーに前で足音は止まり、会話が聞こえ始める。
「ここなら誰もいませんわ」
「……それで?話って?」
「もう、つれないんだから。私もっとノア様と仲良くなりたくて♡」
……あれ、これ、私ここにいていいやつ?逃げ場がない割に逃げようと腰を浮かすがいい案が思い浮かばない。もういっそのことバルコニーに来て私の存在を目に焼き付けて欲しい。私と言う人間がここにいます。
姿は見えないが会話は止まることなく繰り広げられる。
「ノア様を一目見た時、運命だって思ったんです」
「……随分と安っぽい運命だな」
「ひどーい!私本気なのに!」
「お前は俺が運命などと安っぽい言葉で誘う女を本気だと思える男だと思ってるのか?」
すごい、男性が女性に言い寄るのは見たことあるけど女性が言い寄るとこんな感じなんだ。そしてコメントが辛辣すぎないか?心の中でツッコミを入れるが理不尽な状況を強いられてるのでこれくらい許して欲しい。
そして男女の駆け引きを始める2人、謎の社会勉強を始める私の異次元空間が始まった。




