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「異世界転生 悪党よ大義を抱け」  作者: 風井屋長右衛門
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【第2話】

「赤い彗星!」


頭領の姿を見た俺は思わず、思わず声に出してしまった。

赤い上下のスーツに白の半仮面をつけているのだから、声に出てしまうだろう、これは。

でも完璧なコスプレではなく、ところどころ微妙に違う。

(どういうことだよ、ガ〇ダムの世界に異世界転生? ガ〇ダムは近未来の話、

ここの雰囲気はどう見ても中世ヨーロッパだ。全く訳が分からん。シャ〇か、お前は? 厨二病かよ!)


俺の驚く様子と叫んだ言葉を聞いて顎髭のおっさん、白髪の老人が身を乗り出そうとする。

すぐ様、頭領がそれを片手で制止した。


「ほう、「二つ名」を・・・」

頭領はそうつぶやくと、顎髭のおっさんと白髪の老人に

「外で待機せよ」と命じた。


「しかし、頭領!」

顎髭のおっさんは明らかに不服だったが、白髪の老人は素直にドアに手を掛けた。


「何かありましたら、必ずお呼びくださいよ。」

白髪の老人は、頭領に諭すよう静かな声で伝えると、顎髭のおっさんを連れてドアの外に出た。


二人きりになった頭領は、顎髭のおっさんが座っていた椅子に腰を掛けると、

俺の顔を興味深そうに覗き込んだ。


(見定めようとしているな。ここは勝負所だろ。どうする?

異世界転生者とかバレたら、奴隷のように使われるに決まっている。

もう一度ユニークスキル「隠ぺい」で隠すか。いや、その前にコイツのステータスを見てやる。

そのうえで全てごまかしてやる。)


意を決した俺は心の中で、「ユニークスキル鑑定」とつぶやいた。


シャ〇そっくりの頭領のステータスが俺の前に浮かぶ。

しかし、全てが????の羅列だった。


ステータスが浮かぶや否や、頭領の表情が変わった。

面白がるように顔を近づけてくる。


「お前、見ているな!」


(「鑑定」を使ったことがバレている。マジかよ。)


「ふん、興味深い。良いだろう、苦しむ前に先に教えておいてやる。

自分の胸元を見てみろ」


頭領は俺のみぞおちあたりを指さした。

俺はすぐさま肌着を開くと、みぞおちに何か紋章らしきものが刻印されていることに気が付いた。


「それはな、隷属の刻印だ。この刻印は俺が施したものだ。俺に素直に従っていれば何も影響はない。

ただ、俺に害をなそうとしたり、嘘をつけば、お前に苦痛が与えられる。逆らわないことが賢明ということだ。」


(くそ、先手を打たれている)


頭領はくぎを刺すように俺をにらんだ後、ゆっくりとスキルの説明を始めた。


「お前が使った「鑑定」はユニークスキルだ。「鑑定」を人間相手に使えば、相手のステータスやスキルを見ることが出来る。ただし自分よりレベルの高い「鑑定」持ち相手に、このスキルを使うと、覗き見していることがバレるという訳だ。

この時点で敵対していると見なされても仕方ない。使いどころ、使う相手を間違わないことだ。」


諭すように説明する頭領の顔は穏やかで、それを物語るかのように、隷属の刻印は何の反応もしなかった。

害をなした、怒らせた訳でないと分かり俺は少しホッとした。

その表情を目ざとく見抜いた頭領は続けてこう言った。


「『鑑定』は通常のスキルと違って、ユニークスキルと言われ、数千人に一人、モノによっては数万人に一人しか能わらん。隠し玉として使え。無闇に使えば生命に関わるぞ。」


俺は思わず、にっこりとほほ笑んだ。

(こいつ、案外悪い奴じゃない。犯罪者ギルドの頭領という割りには、お節介なやつだな)


「ふん、ここで笑うか。血は争えんな。

ところで、『鑑定』を使って、俺のステータスは見えたか?」


俺は胸の刻印に思わず手をやりながら、嘘はマズいと思いながら、ある程度分かった事実を織り交ぜて答えることにした。


「全てが????だった。分かったのは、犯罪者ギルド、グレーシーズンズの頭領ということだけだ。」


「俺自身のステータスは全て『隠ぺい』している。お前の持っている『隠ぺい』と同じユニークスキルだ。まあレベルは違うだろうがな。隠ぺいは身の安全のために使うことが多い。」


頭領は少し首をかしげながら、質問を続けた。


「お前、全てが????の羅列と言ったよな? ではなぜ、犯罪者ギルド、グレーシーズンズの名称と、俺がその頭領であることがわかった? 俺は全て『隠ぺい』しているんだぞ」


(よし、引っかかったぞ。これを待っていた)

俺の思い通りの質問が出たが、その喜びは顔に出さないよう、どちらかと少しおびえた雰囲気を出して隷属の刻印をさすりながら、俺はゆっくりと答えた。


「それは簡単なことだよ。自分自身のステータスを見たら、犯罪者ギルド、グレーシーズンズ所属となっていたし、顎髭のおっさんも白髪の老人も「頭領、頭領」って何度も言っていただろ」


「顎髭のおっさんに白髪の老人か。二人が聞いたら怒るだろうな。はっはっは。まあ、良いだろう信じてやる。状況的にはお前の言う通りだ。

良いだろう、この調子であと二つ質問にに応えろ。今のように素直にな。」


ひとまずの壁を越えた俺は、安堵の表情がでないよう努めつつ、頭領の言葉を一つ残さず聞き洩らさないよう集中した。

頭領は、俺が今日9歳の誕生日を迎えたことを説明したうえで、この9年間の自分の記憶があるのか、そして自分の名前を憶えているか、この二つを確認してきた。


(25歳としての神山清人の記憶はある。しかし、これは聞かれていない。名前は「セイ」。セイとしての9年間の記憶はない。答えても大丈夫だろう。)


「この9年間の記憶はない。名前はセイだ。ステータスで確認した。」


頭領は、俺のみぞおちあたり、つまり隷属の刻印を注視していた。


「ふん、嘘ではないようだな。では、なぜ俺の二つ名、『赤い彗星』を知っている?」


これまでの雰囲気と違う。応えようによっては、殺されかねないほどのピリピリとした空気が漂った。


(「二つ名」を知っている。それは恐らく本人の情報に近づく可能性があるということで警戒しているのだろう。

『赤い彗星』、普通に考えればコイツも異世界転生者か何かだろう。でももし違った場合は?

こいつはイチかバチかだな。俺は腹を括ることにした。


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