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ウィリアム英雄譚  作者: すしタマゴ
第1章 すべての始まり
8/23

8

「……すごい。」


思わず声が漏れた。

魔力探知網に人間らしい反応が引っかかったので、私は遠くから様子をうかがっていた。

数キロ先の距離から、望遠魔術を何重にも重ねがけし、こっそり彼を観察していたのだ。


彼はウィリアム。

黎明の剣の初期メンバーだ。

冒険者界隈は意外と狭い。

特にBランク以上の冒険者の名前は、同じギルドに所属していれば誰もが知っている。

Aランク冒険者ともなれば、その名は冒険者に限らず都市の人々にも広く知られている。


だが、彼は特に有名だ――悪い意味で。


彼には「金魚のフン」「腰巾着」「ラッキーボーイ」など、数えきれないほどのあだ名がつけられている。

付与術師としてAランクに到達するのは非常に稀なケースだが、彼が黎明の剣の幹部を務めていることが、多くの冒険者の嫉妬を集めていた。


「荷物運び要員」「パーティーのおこぼれに預かるだけ」「伯爵の裏工作でAランクに推薦された」など、噂は尽きない。

彼の実力はBランクどころか、Cランク程度だろうというのが大方の評価だった。


でも、今見てわかった。

彼は間違いなくAランクの冒険者だ。


私は彼の武器にフォーカスを合わせる。

見た目からして特に強力なものではなく、安価な量産品であることがわかる。

それにもかかわらず、彼はBランクの脅威度を持つレッサードラゴンを一撃で仕留めたのだ。


付与術師は単なる後方支援ではない?

彼の実力はまだ計り知れない。


ん? 彼が何かつぶやいている。

私は口元にフォーカスを合わせ、読唇術で母音を読み取る。「にしへ行こう……?」

彼はストームヘイブンを拠点にしているはず。

なぜ西へ?

彼の実力なら大陸西部へ向かうことは可能だろうが、それはクランを離れることを意味する。

クラン内部で何かあったのだろうか?


……まあ、いいか。

私も西の魔領域に用事がある。

網を張ってみる価値はありそうだ。

彼が西に向かうなら、クリムゾン・シンジケート商会の定期便に相乗りするだろう。

定期便は5日に1回、ストームヘイブンから西の前哨基地へ向けて出発する。


帰ったら、黎明の剣についての情報を集めよう。

彼が発つタイミングを見計らって接触するのも悪くない。

準備を急がなくては。


「よーし、忙しくなるぞ」

私は伸びをし、戦闘で疲れた体をほぐした。


---


背後にはワイバーンの死体の山が築かれていた。

丸焦げになったもの、全身に穴が空いたもの、原型を留めずぐちゃぐちゃに引き裂かれたもの――その数は50体ほどだ。

ワイバーンの単体脅威度はCランクだが、群れで活動することを考慮すれば総合脅威度はBランクに匹敵する。

この規模の事案に対応できるのは、Bランク以上の冒険者でなければならない。


彼女は魔術の試し撃ちのためにストームヘイブンの外に出ていた。

運悪く、ワイバーンの群れが彼女に遭遇してしまったのだ。

群れのリーダーを逃がすため、ワイバーンたちはその身を盾にして必死の足止めを図ったが、彼女には全く通用しなかった。

気づけば群れの長であるレッサードラゴンを仕留め損なっていたが、心配はない。

すでに長は死んでいるのだから。

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