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ウィリアムとヴァルターは、わずか1年でCランク冒険者に到達した。
これは驚異的な成長速度であり、多くの冒険者から嫉妬と羨望の目を向けられた。
この頃、彼らにとって転換点となる出来事が起きる。
それが、イリス、ミレーネ、ダリウスとの出会いだった。
2人はCランクに到達したが、同時に限界も感じていた。
2人だけのパーティーでは負担が大きく、連携の幅にも制約があったのだ。
彼らは魔領域への挑戦を目指していたが、このままでは早死にすることは目に見えていた。
魔領域とは、魔素が濃く、魔獣が跋扈するエリアを指す。
人間が暮らす通常エリアには主に魔物が存在するが、魔物と魔獣には発生や生態に明確な違いがある。
この世界には魔力が存在し、生物の体内にあるものを「魔力」、体外に存在するものを「魔素」と区別している。
どちらも同じエネルギーだが、魔素はあらゆる物質に宿る。
魔術師は体内の魔力を触媒にし、外部の魔素を操作して、炎や雷などの物理現象を生み出す。
Bランク以上の冒険者は、魔素との適合率が高いケースが多い。
一般人の魔素適合率は数パーセントだが、魔術師や才能ある冒険者は数十パーセントに達することがある。
魔素適合率が高いほど、少ない魔力で魔術を扱い、より強力な力を引き出せる。
剣士などの戦士タイプの冒険者も魔素の恩恵を受け、超人的な身体能力を発揮する者がいる。
魔素によって肉体に影響が現れ、一般人よりも強靭な肉体や長寿を得る者もおり、150年以上生き続ける魔術師もいる。
魔物は元々ただの動物だったが、魔素の影響で突然変異を遂げた存在だ。
繁殖し、群れを形成するという特徴があるが、魔獣に比べて単体の脅威度はC〜Eランクに留まる。
魔物の問題はその数の多さにある。
特定の条件で生態系が崩れ、特定の種が異常発生するスタンピードが発生することがある。
魔物のスタンピードはBランク以上の総合脅威度として分類されるが、魔領域に活動の拠点を置くBランク冒険者は地方都市に不在がちであり、スタンピードによって開拓村や地方都市が陥落することもある。
魔獣は群れを形成せず、単独で行動することが多い。
魔素の濃い魔領域を中心に生息し、その脅威度はすべてCランク以上に分類される。
そのため、魔領域に挑戦できる冒険者はCランク以上に限られる。
特に魔領域の中心部にはB・Aランクの魔獣が多く、人外や化け物と称される冒険者でも命を落とす。
過去には300年前、魔獣によるスタンピードが発生したという記録がある。
当時のレグナス大陸は魔獣によって70%が制圧された。
この事件を教訓に、冒険者ギルドが創設され、冒険者によるモンスター討伐が制度化された。
ギルドの調査により、魔物や魔獣の生態が少しずつ解明されてきたが、魔獣の存在は依然として人類にとっての脅威である。
ウィリアムとヴァルターは、魔領域への挑戦の第一歩として、ワイバーン討伐を目指していた。
ワイバーンは単体脅威度Cランク、群れで活動することを加味すると、その総合脅威度はBランクに分類される。しかし、2人だけでは不可能と判断し、新たなメンバーを探していたところ、イリス、ミレーネ、ダリウスと出会った。
イリスはCランクの女性魔術師で、魔素を精密に操作し、詠唱を短縮または破棄して魔術を発動する実戦型の魔術師だ。
通常、魔術には詠唱が必要だが、イリスはその時間を短縮することで戦闘での隙を減らしていた。
詠唱の破棄には高度な魔力操作と精神力が求められ、その技術を持つ彼女は非常に貴重な存在だった。
ミレーネはCランクの回復魔術師だ。
彼女は元々医師を志しており、人体に詳しいため、回復魔術の精度が非常に高い。
回復魔術には大量の魔力が必要だが、彼女はそれを正確に操り、負傷者を治療する。
ダリウスは2メートル近い巨漢で、大盾を使い、敵の攻撃を引きつけるタンク役のCランク冒険者だ。
彼の盾には魔術式が組み込まれ、物理攻撃や魔術攻撃を軽減することができる。
さらに盾の内側には剣が装着されており、隙を見て反撃も行うことができる。
この3人は元々同じパーティーに所属していたが、メンバーの引退により解散していた。
彼らもまた、魔領域への挑戦を目指しており、ウィリアムとヴァルターと目標が一致したことから、新たなパーティーを結成することになった。