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ウィリアム英雄譚  作者: すしタマゴ
第1章 すべての始まり
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ヴァルターは剣士として天賦の才能を持っていた。


モンスターとの間合いを正確に見極め、ほんの一瞬の隙も逃さず距離を詰め、一撃で急所を突く。

多対一の戦闘では、地形を巧みに利用して常に一対一の状況を作り出し、多数の敵に有利を与えない。

後衛に攻撃が届かないよう、モンスターと後衛の間に立ち続け、必要なときには後衛が攻撃するタイミングを見計らい、一瞬だけ離脱。

そして後衛の攻撃が命中し、モンスターが怯んだその瞬間に追撃を仕掛ける。


まるで後ろにも目がついているかのように、ヴァルターの戦闘における連携や状況判断は抜群だった。

優れた身体能力と鋭い判断力を持つ彼は、そのすべてを戦闘で発揮した。


ウィリアムもまた、ヴァルターに劣らぬ才能を持っていた。

彼は付与術師の可能性を早くから理解していた。


例えば道端に落ちているただの石ころ。

石といっても、成分や構造はさまざまである。

物質を深く理解し的確な強化を施せば、ただの石ころが鋼鉄のように硬くなる。

それを強化された身体と感覚で投げつけると、単なる投石がゴブリンの頭を粉々に砕いてしまうのだ。


また、シンプルで安価なナイフを手に入れ、正確にモンスターの眼を狙って投げれば、いくら強靭な肉体を持つモンスターでも眼球までは強化できない。

ナイフはそのままモンスターの脳を貫き、一撃で倒すことができる。


付与魔術の鍵は、物質が持つ特性を最大限に引き出すことにある。

そのためには、成分や構造について深い理解が必要だ。

トライアンドエラーを重ね、どのような強化が最適かを感覚でつかむ。

やがて頭で考える必要がなくなり、掴んだイメージと感覚によって的確な強化を施せるようになる。

付与術師は大器晩成型の職業だが、多くの者はその域に達する前に冒険者としての人生を終える。


二人だけのパーティー。

当初はすぐに潰れると嘲笑されていたが、二人は互いの実力を発揮し、瞬く間にCランクの冒険者に成長した。


冒険者のランクはA〜Eの5段階に分かれている。


Eランクは駆け出しの新人(ルーキー)

安価な量産装備に身を包み、右も左もわからないまま戦場に放り込まれる。

冒険者として最も厳しいのはこの時期だ。

資金は少なく装備も貧弱だが、食費や宿代、装備のメンテナンス費や消耗品の補充費などが重くのしかかる。

Eランクの冒険者が生き延びるためには、報酬の低い恒常討伐依頼を数多くこなす必要がある。


恒常討伐依頼とは、決まった依頼主が存在せず、常にギルドに張り出されている討伐依頼のことだ。

ゴブリンの右耳などモンスターの一部を持ち帰り、討伐証明としてギルドに納品することで、倒した数に応じた報酬を得られる。


しかし、恒常討伐依頼の報酬は非常に低い。

これはわざと報酬を低く抑えることで、冒険者が多くのモンスターを討伐せざるを得ない状況にし、少ないコストで治安維持を行うためである。

この負担を最も強く受けるのが新人冒険者だ。彼らは稼ぎが少なく、活動資金が徐々に減少して十分な準備ができず、その結果、戦闘で行方不明(死亡)となる者も多い。

これが「新人(ルーキー)の壁」と呼ばれる最初の試練だ。


Dランク冒険者は、この壁を乗り越え数年の実戦経験を積んだ者たちである。

Dランクになれば、冒険者として一人前と見なされ、軍の一般兵と同等の実力を持つ。


Cランク冒険者は、10年以上の冒険者生活を生き抜いたベテランだ。

負傷や離脱をすることなく、知識と実力を兼ね備えた猛者である。

Cランクになると、ギルドから優先的に討伐依頼を受けたり、貴族や商会から護衛として雇われたりする。

また、軍の治安維持部隊からスカウトされることもあり、軍では精鋭として分隊長や小隊長に匹敵する。

Cランクの冒険者は、ギルド職員として勧誘されることもある。


だが、Cランクより上に行くには大きな壁が存在する。

これが「人間の壁」とも呼ばれている。


Bランク冒険者は「人外」と揶揄されることもある。

生まれつきの特殊な能力や才能が、Bランク以上に到達するための鍵となる。

Bランクの冒険者は、討伐依頼を直接指名されることもあり、多くの組織から好待遇でスカウトされる。

軍では中隊や大隊の隊長クラスだ。

彼らは、魔獣が跋扈する「魔領域」を中心に活動する。


Aランク冒険者は、嫉妬と畏怖を込めて「化け物」と呼ばれる。

その力は規格外であり、人間かモンスターかの区別がつかないほどだ。

過去には心に深いトラウマを負った元Aランク冒険者が錯乱、暴走し、都市を半壊させ、多くの死傷者を出した凄惨な事件もあった。

Aランクの冒険者は大貴族に召し抱えられたり、国家からの招聘を受けることもある。

軍では連隊長や旅団長クラスの地位に就くことができる。

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