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男が少ない世界のようだが、監禁されているので意味がないという話。 追伸:誰か助けて?

作者: 柳


目が覚めるとそこは真っ暗な部屋であった。

明かりが消えており、時計の針が進む音だけが聞こえてくる。誰の足音も聞こえない。


「これさえ無ければなぁ」


さて、俺がどうしてこんなにも落ちつているのかと言うと先程散々騒いだからに他ならない。

俺は尾神 洋介という。普通に大学生をしており、楽しい人生の夏休みを過ごしていたのだが、いつの間にか知らない部屋の中に居た。昨日は先輩との飲み会で酒を飲み、へべれけになるまで酔っ払ってしまった。

まさか記憶が無くなるほどまで飲んでいたとは思わなかった。


ここまでは、騒ぐこともない。まぁ、友人の誰かが部屋を貸してくれたのだと普通は思うだろう。

俺は自分の手首に目を向ける。そこには、銀色の輪っかが俺と机の脚とをしっかりと繋ぎ止めていた。

引っ張ってもびくともしないのでどうやら完全に固定されているようだ。


目を覚ました時はどうして俺は手錠に捕まっている?それについて考え、もしかして不味いことでもしたのだろうかと考えた時には血の気が引くような思いだったな。


「というか、不思議なんだよな。酒を大量に飲んで記憶を無くしたわりには…気持ち悪くない」


いつもなら二日酔いで頭が割れるくらいに痛むはずなんだがそれがない。

変な気分を感じながら片手で服のポケットを弄る。スマホや財布なんかは無くなっていた。

しかし、上着の内ポケットから薄いカードケースが出てくる。


『荒木 賢 【Aクラス】』


顔写真付きで名前とその横にランクが書かれていた。

ゲームのアバター写真なのだろうか?それにしても良くできた顔写真だな…まるで本物の人間の写真のようだ。ぱっと見せられたら本物と遜色ないくらいには見分けがつかない。


「ふむぅ…というかこんなカードを入れた覚えは無いんだけど…それに賢って友人もいないような」


俺は身に覚えがない名前を見て少しだけ背筋に寒気を感じる。

というか、俺が今着てる服は俺が着ていた服じゃないよな?…着替えさせられたのか?

賢って…写真を見るに男だよな。こんな友人はいないと思うんだけどなぁ。本人に聞いてみればいいか。

というか、なんで手錠を嵌めたのかも聞かないと…。


俺は暇なので部屋の中をキョロキョロ見回す。


「どう見ても男が住んでいる部屋だとは思えないんだよなぁ」


ベッドには熊の可愛いぬいぐるみ。

いかにも女の子が着ているような服がベッドの上に散乱している。体を少しだけ起こして机の上にある物を見る。タブレット端末に化粧品が置かれていた。

うん、どう見ても男の部屋じゃない。


「タブレットがあるじゃん。電話はできないだろうけど…この場所を調べることぐらいは出来るか?」


タブレットの液晶画面に触れると画面が明るく光る。

それが眩しく感じ、目を細めながら指をスライドさせる。するとパスワードを聞かれること無くログインすることができてしまった。


「いや無防備過ぎやしないか?パスワードくらいはかけたほうがいいだろ」


俺は地図アプリを起動し、現在位置を確かめる。


「…は?」


地図が示していた場所は俺の実家のある部屋だった。

何度もその住所を確認するが同じ場所であることに違いはない。俺にはある奇天烈な考えが浮かんだ。

それは本来あるはずのない夢のような話である。しかし、それであれば納得がいくのだ。


「俺が生きていた世界とは違うのか?」


先程みたカードが脳裏によぎる。

まさか、あれは俺なのか?だとしたら余計にわからないことがある。

どうしてこの世界の俺は手錠で繋がれているんだ?


俺はタブレットでSNSにアクセスし、この世界と俺がいた世界との違いについて調べる。

国の名前、国土、言語などなど…多くを調べる必要はなかった。

あるトレンドに書かれていた言葉が気になった。


『男の出生率が過去最低に、これからどうなるのか?』


俺はそれが気になって人口の内訳について調べる。

すると違いは明らかであった。圧倒的に男子が少ない。女性の人口と男性の人口の差は年々に大きくなっていき、今では10以上に大きなっている。

片っ端から俺は関連したサイトを見ていく。すると元の世界とは違い、男性が特別視されていることが理解できた。


なるほど…つまり、そんな世界に俺はなぜか知らないがやってきてしまったと。

いや、本当になんでだろうな?というか、そんな世界にやってきたのに俺は手錠に繋げられているのか。


俺がタブレットで調べているとドアの向こう側から音が聞こえてきた。

どうやら俺を手錠に繋げた人が帰ってきたらしい。ドタドタと足音が聞こえ、勢いよく扉が開かれる。


「ただいま!」


にこやかに微笑みながら俺にそう言っているのは、優しい栗毛色の女性だった。

電気をつけ、俺の顔を見ながら微笑んでいる。


「お、おかえり?」

「……えっ!?」

「どうしたんですか?」

「だって賢君が私に声をかけてくれるなんて…始めてだからびっくりした。えへへ、嬉しいなぁ」


いや、普通に可愛らしい女性なんですけど?

というか当たり前なのだが、俺はこの人を知らないんだよなぁ。


「あの、聞きたいことがあるんですけど」

「うん?なにかな」

「俺って、あなたと何処かで会ったことがありますか?」

「え?無いと思うけど…もしかして私のこと知ってたの?」

「いや、そういうことではないんですが…じゃあ、どうして俺を手錠で繋げて」

「え?だって、私が賢君のことを連れてきちゃったから」


連れてきちゃった?

顔なじみでもないのに連れてきた。……それ誘拐じゃね?


「それって誘拐」

「違うよ?私は保護したの。賢君に穢らわしい視線を向けていたあいつらから守ってあげたんだよ?」

「う、うん?」

「ねぇ、どうして?どうしてそんな酷いことを言うの?私、悪いことしてるかな?」


彼女の目は真剣でまるで聞き分けの悪い子供に優しく問いかけるような感じだった。

本当に犯罪をしているという意識はないのかもしれない。俺がしらないだけで、男性を保護するルールでもあるのかもしれないし…ここはなんとも言えない。

それよりも今は手錠を外したい。


「し、してないです」

「うん!そうだよね?賢君ならわかってくれると思ってたんだ」

「あの、手錠を外してくれないですか?」

「……勝手に外に出ない?」

「出ないですよ。危ないんですよね?」

「うん、危険が一杯で危ないんだよ?本当に駄目だよ?わかってる?」


何度も何度も忠告を繰り返す。やはり、子供に言い聞かすような感じだと思った。

まぁ、多少圧がすごいけどな。


「わかっています」

「…わかった。じゃあ、鍵を持ってくるから待っててね」


彼女はどこか嬉しそうにドアの向こう側に行ってしまった。

実際に自分の顔がどんな感じなのかは分からないが、俺はその後ろ姿を奇妙な目で見ていただろう。


「まさか、監禁されることになるとはな。というか、どういう経緯で誘拐されたんだよ」


彼女は直ぐに手錠の鍵を持ってきてくれた。手錠は、カチャッと軽い音で手錠は外れて床に落ちた。

手首を触りながら怪我が無いか見ていると心配そうな声で彼女は俺に言う。


「大丈夫?ごめんね、本当は手錠なんかしたくなかったの。でも、賢君が外に出たら危ないし…怪我はない?痛いところとかもないかな?」


その様子は本気で俺のことを心配しているような顔であり、声色であった。もしこれが演技だとしたら最優秀賞を受賞できるだろう。


「大丈夫ですよ。ほら」

「うん、大丈夫そうだね。でも、急に痛くなったりしたら直ぐに言うんだよ?」

「はい、わかりました」


俺がそう返すと彼女は少しだけ嫌そうな顔をする。

何か変なことを言っただろうか?俺はそう考えるが、思い当たる節はなかった。


「……ねぇ、どうして女である私に敬語なんか使うの?」

「え?」

「賢君、どうしたの?怒ってる?急にこんな私みたいなブスが調子に乗っているから?」


今度は泣きそうな顔をして俺に詰め寄る。

先程の優しい表情とは違った悲しみに染まった表情であった。俺は落ち着かせるようにしながら言葉を返す。


「い、いや怒ってないですよ。ただ、名前も知らない方と話すことに慣れていないだけです」

「あ、私の名前、言っていなかったね。えへへ、昔から悪い癖なんだ。私の名前はね、竹林 鈴って言うの。鈴って呼んでくれると嬉しいな」


鈴さんは恥ずかしそうに自己紹介をしてくれた。

これが大学のサークルとかだったら良かったんだけど…よりにもよって誘拐犯だからなぁ。

そう思うが顔には出さない。彼女の機嫌を損ねれば手錠にまた繋げられるかもしれない。最悪、体の自由は欲しいのでそんなことにはならないように気をつける。


「鈴さんって呼びますね」

「……敬語」

「鈴さんって呼ぶな」

「…今はそれでいいかな」

「ふぅ、あと鈴さんは自分のことをブスって言ったけど流石に冗談だよな?鈴さんは普通に可愛いし」


あまり女性の容姿についてどうこう言うつまりはないが、自分の事を卑下するのはあまり良くないと俺は思う。だから、そんな事を言う人には必ず俺は逆の事を言うことにしている。

まぁ、本音だし。別に誰も嫌な気持ちにならないからな。


「え?」

「え?」


なぜか鈴さんは驚いた表情を見せる。

この人、本当に感情豊かだよなぁ。誘拐犯だけど。

それに可愛いんだよなぁ。…誘拐犯だけど。


「か、可愛い?私が?」

「う、うん」

「本当!?本当にそう思ってる?嘘は駄目だよ!?嘘ついたら泥棒になっちゃうんだからね?」

「嘘じゃないよ」


俺は目を見て伝える。

少しだけ恥ずかしいが、こういうのは羞恥心に負けたら駄目なんだ。嘘を言っているわけじゃないから堂々と言うことが大切だ。


鈴さんの顔はどんどん赤く染まっていく。

そして、顔を手で隠しながらベッドに倒れ込み、バタバタと足を動かす。

いや、その仕草は犯罪でしょ。というか俺の前でやらないで?パンツ見えてますよ。………白なのか。


「駄目だよ。やっぱり賢君は外に出たら危ないよぉ…うぅ~」

「………」


この人、本当に誘拐犯なんだよな?

読んでくださりありがとうございます。

この話が面白い、続きが読みたいなどと感じてくだされば評価をしてくださると嬉しい限りです。評価は下の☆をいくつか塗りつぶしてくだされば問題ありません。

また、感想なども受け付けております。

別の作品を読みたいという方は、明日にも別のお話をあげるので私の名前を覚えておいてください。O_0

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