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宝石の宴  作者: 奏主
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Prolog:前編

そこは……異能と呼ばれる、特殊な力を持つもの達が数多に存在する世界。その中でも和音と呼ばれる巨大貿易国家であり、国家間の人の出入りが最大とされる。通称『世界の駅』と呼ばれ、この国で物資調達をする場合が多い。そして、そんな国であるから……異能による犯罪発生率も、世界最大と言えるだろう。


「ーー魔界より来たれり…獣に非ず、然して魔獣と呼ばるる異質なる化物共よ、我の元に顕現し給えーー」


それは、この世界において最も一般的な人外や異能と呼ばれる異質な力を持つものたちに対抗する対策の1つ『術式』。それを簡易的に発動させる為の……詠唱である。

術式には発動条件が様々にあり、その中でもっとも簡単に行えるのがこの、詠唱だ。自身の血の中に流れる異能や術式等を発動させるための源流。『源力』を詠唱中に発生させる事で術式を起動する。


ーーそしてフード付きのパーカーを着こなしている緑髪紫眼の青年による詠唱、それによる術式の起動により辺り一面、そこから生まれるのは、水色の粘体。そして、疎らに赤黒い粘体や黄金色の粘体等が降り立つ。ドロドロ、プルプルと和音の中で人があまり寄り付かない山を駆け回り、巡回し始める。


「…………フィルテ様」


突如、そう低く、緑髪紫眼の青年はつぶやき、前をみあげる。そこには、青髪黒眼の男が立っており、ニット帽を被り、黒基調のジャケットに黄金色のバッジ、小さく『蒼』と刺繍され、その背部には『code』と書かれた黄金色の刺繍が煌めく。


一方その頃。

ーー午後一時五十分頃。突如として魔獣の出現が確認。異能。術式等を利用し、異能犯罪や魔獣の殲滅等を仕事とする、世界最大級の自警団組織『TRUMP』その中でもダイヤ隊支部と呼ばれる、近接戦闘が得意であるとされる支部の隊員1名派遣。更に総合戦闘が得意であるとされる支部、クラブ隊の最強クラス幹部2名派遣。この三人で山に出現した魔獣の討伐を任されたのだ。


まず、ダイヤ隊の隊員、タンザナイト・ジュエール。紫髪紫眼、切れ長の三白眼に眠そうな顔、隊服であるスーツを着用し面倒臭そうに伸びをしながらやってくる。


「なぁんだ…兄貴達かよ……」

なんて言葉をなげかけ、ひらひらと手を振る。彼が見すえる先には2人の人影。赤髪赤眼、片目が隠れているものの、その男からは外に溢れ出る『源力』、オーラと呼ばれるものが辺りに流れ出ている。そして、緑髪緑眼の気だるげにたるんだ眉に、欠伸がいつまで経っても終わりやしない男性。


赤髪の方はルビー。緑髪の方はエメラルド。双方共クラブ隊の幹部であり、幹部クラスは私服が許されるらしい、ルビーの方はスポーツ用ジャージを着用、エメラルドの方はとりあえず適当にしました感強めの黒ずくめの服。


「なんだ、ザナか……遊びじゃねえからな。働けよー〜」

面倒臭そうに言葉を口にしながら、然し端々には優しげな声音が見られる。彼等は本物の兄弟……である。そして彼等は人間では無い。人外なのだが……その特異性は、今のところ特筆すべきものは無い。

「ラル、ザナ……気合い入れろ……今から……入るぞ」

こうして、幹部2人、隊員1名の計3名による魔獣撃破の任務を任されることとなる。


其の内容は。

「『スライムが大量発生している、変異個体である赤黒い色をしたスライムや黄金色のスライム等も居る、全て消し去っておけ』……だとよ…俺一応幹部の中ではNo.A、つまり1番の強さなんだけど…」

と不満と面倒さを孕んだ文句をぶうたれながら山道を歩いていく。舗装されている道。

しかし見つかりにくい為。エメラルドが動く

「俺がさがすよ……【心眼】」

そう呟いたと同時に、心眼。それは微弱に流れる外の源力を知覚し、辺りを探る技術である……そして、彼は何かをキャッチしたように歩き去る。それに続いてルビー、タンザナイトも中へ。


すると現れたのは……赤黒い粘体

「変異種・緋か……緋は初めて見たな……」

変異種・緋、それは本来の魔獣の最低五~十倍は強さが増す、強めの変異個体である筈なのだが……

ルビーの手のひらが赤く光り、その赤黒い粘体が消えてなくなり、地面に黒い焦げ跡が付くのは数瞬の事だった。

ルビーの異能の一つ、【獄炎】の効果である

「やり過ぎじゃあ」

驚愕のあまりそんな言葉を口にするが、ルビーの方は何食わぬ顔だ。

「ま、大丈夫だろ……今回も楽に終わりそうだな……」

なんて楽観視する……幹部のエースなのだった…

その三人の魔獣殲滅は異常なほど長引いていた。というのも……異常なのだ。今回現れた魔獣は【スライム】。弱めであるのだから……もう既に終幕を迎えてもおかしくは無い。


「変異体の量が馬鹿みたいに多い…それも有るだろ……」

なんてエメラルドが言い放ちながら、白光を剣から放つ。源力が編み込まれた武装。【異能武具】を用いて殲滅していく。タンザナイトも何とか変異体に遅れを取らず撃破。

「変異体の出現頻度ってどんくらいだっけか……」

とタンザナイトが聞けば

「一万分の1ってレベルだったはずだな……」

そうルビーが返す。

「ほぼ変異体しかいねーのに……?」

愚痴をこぼす、明らかに消耗し始めてきたらしい……


ーーそこで、音が鳴る。黄金色の粘体が2体。


【変異体】には2種類。【緋】と【黄金】。強さ的には圧倒的に【黄金】の方が強く、最低でも【緋】の数倍はある。そんな魔獣が2体出現し……青髪と羽織が靡く。


背面のCodeの刺繍がギラギラと光り……同時に黄金色の粘体2体は一体ずつエメラルド、ルビーの方へ。更に大量の赤黒い粘体が襲う。


「……やっと読めてきた」

そうタンザナイトは呟く。

術式には様々なものが存在するが……手数、というアドバンテージを得ることが出来る術式は、2種類のみ。【召喚術式】と【式神操術】だ。そして今回出現したのは魔獣。

つまりは【召喚術式】、それの効能だろう。


「アンタが……【召喚術式】の発動主か?」

そう問い掛ける。然し青髪の男はその問い掛けには答えずーー……通常のスライム数体をけしかける。同時に源力を肉体に纏い始める。どうやら完全に戦闘態勢。


「答えちゃくんねぇか……頂上まで登るしかねぇな」

コチラも戦闘態勢を取り、スライムを一気に源力を発破、吹き飛ばす。相手が術式ならばこちらはーー【異能】だ


「行くぜーー……【宝石】」

今現在はーー自身の肉体を硬質化させるだけのバフ。異能の特徴は、発動がお手軽であるという事。ただ異能名を詠唱するだけでその異能の熟練度にもよるが十全の効果を発動出来るのだ。そしてもうひとつ、異能には2種類ある。【固有異能】と呼ばれる、その人物しか持ちえない異能。そして【遺伝異能】と呼ばれる、一族に巡り続ける異能。そのどちらも強力な力を発揮する。しかも……一般人のみが使えるのが【術式】という訳ではなく、異能を扱いづらいもの達用にも術式は便利であるとされるため……、殆どの人物がなんらかの術式を保有している。


例えばタンザナイト。彼ならばーー


「黒百合式結界術、【藤塗(ふじぬり)】」

結界、源力を使い、なんらかを媒介にして広範囲に届かせる異能や術式の総称。

藤色の膜が辺りを包みこみ、閉じ込める。


「【召喚術式】が使えるなら俺の負けだろうな……やってやんぜ」

この男ーータンザナイトは愉しそうに笑みを形作る。

【召喚術式】が使えるならば確定で死、【召喚術式】が使えないならば確定では無い。戦闘すれば勝つ可能性があるとそう見込んだのだろう。


「ちっ、めんどくせぇ、そんなに知りたかったか?持ってねぇよ」

飄々と笑いながらーー青髪が揺れ、疾風の如く駆ける。

紫色の瞳が蒼い線を捉えーー拳を撃ち合う。

閉鎖空間の中一対一での戦闘が幕を開ける……

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