71 桃香の秘密
◆◇◆
数日後の朝。
女の子たちが登校前の支度をしているところに、グレーのスーツ姿の氷室さんがやって来る。
「今日は相続の手続きのため、幸斗様をお借りします。幸斗様は学校には行きませんので、皆様だけで登校してください」
「えー きょうはアニ研あるですのに。ゆきとさんは来ないのですか……」
「そうなんですか、急ですね」
「幸斗と手を繋ぎたかったなぁ」
「……」
みんな残念そう。毒舌家の藍まで、口をつぐんでがっかりした様子に見えなくもない。
「行ってきますです」
千紘姉さん、麿莉奈、ニーナちゃん、藍の4人はタワマンから出かけていく。
桃香はまだ寝ているみたいで部屋から出て来ない。桃香が朝から登校するのは、引っ越してきた当初の数日間だけだった。
すぐに本来の、学校に行ったり行かなかったりの自堕落な生活に戻ってしまっている。
俺、5人の女の子、氷室さんはこのタワマンのカードキーを持っている。自由に出入りできるから、全員で行動しなくてもいい。俺が桃香を起こしてやっても、起きようとしないこともある。
かといって桃香がタワマンにいないと思ったら、帰ってくるのが深夜だったりする。どこに行ってたのか聞いても、「ちょっとねー」とごまかすだけ。怪しい。
麿莉奈は「桃香さんはだらしなさすぎるわー 幸斗さんのお嫁様にはふさわしくないと思いますー」と俺と二人っきりになった時に訴えている。
桃香にやる気がなければ、麿莉奈にとっては好都合のはず。ほっとけばいいと思うのだが、生真面目な麿莉奈は桃香とも競い合いたいらしい。
俺は学生服姿。氷室さんとリビングのソファーに向き合って座る。テーブルにコーヒーカップが置かれて、氷室さんはすすりながら話す。
「本当に実行するおつもりですか?」
「ええ、気になるんで」
俺と氷室さんが相続の手続きに行くというのは嘘だ。今日は学校をサボって、桃香の行動を付け回してやろうと思っている。
「止めておいた方がいいと思いますが……」
「やっぱり桃香はパパ活をやっているんですか?」
「……どうしても知りたいとおっしゃるなら、ご自身の目でお確かめになったらよろしいでしょう。お供はしますよ」
氷室さんは答えを教えてくれないが、尾行の協力はしてくれるという。
俺は答えを知るのが怖い。
本当にパパ活をしていたら、さすにアウト。即脱落してもらわないといけないところだ。
だが心やさしい俺は、二度とパパ活をやらないことを桃香が誓うなら許してしまうかもしれない。空腹の俺にクリームパンを恵んでくれた恩は大きい。
氷室さんは桃香が何をしているか知っているだろう。パパ活する女をお嫁様候補に充てるとは考えにくい。だが氷室さんの企みは底が知れない部分がある。
桃香にパパ活という大減点要素を上回る魅力があると思っているかもしれない。でもそんな超絶加点要素ってありえるんだろうか。
9時過ぎ、コーヒーを飲み切った。
「ふぁあああああ」
あくびが聞こえてきた。
見れば、下着姿の桃香が廊下に現れた。
ピンクのブラに、ショーツだけの姿で背伸びをしている。
Gカップの巨乳が立体的にくっきり。あいかわらずフトモが艶かしい。
「お、おい、なんてかっこしてるんだよ!?」
俺は両目を左手の平で覆いながら叫ぶ。指の隙間から覗いているけど。
「ん、ゆきとはまだいたんだ」
桃香はこともなげ。
「用事があってな。早く服着ろ」
「へへ、あたしのおっぱい見せてやろっか。他の子はいないんだろ。チャンスじゃん」
桃香は抜け駆けするなら今とばかりに胸を両手で抱えて寄って来る。
「いいから、服着てくれ」
俺は右手を振って、桃香を追い払う。
「うりうり、恥ずかしがんなよ。今、ホック外すぞ」
桃香は背中に手をやる。
「絶対やめろ。あっち行ってくれ」
「ちぇっ わかったよー」
不満げな感じで桃香が部屋に戻って行く。
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