63 藍のパンティー
◆◇◆
トレーニングを終えてお風呂に行くことにした。自分の部屋でバスタオル、パジャマ、下着を抱える。
リビングの壁には、お風呂ローテーション表が貼られている。タワマン最上階にはお風呂が3つある。みんな、毎日違うお風呂に入れるようローテーションを決めているのだ。
檜風呂→ジャグジー→寝そべり湯→檜風呂とループするので順番は覚えている。
俺の入る風呂は、その日俺しか入れないことになっている。俺が時間を気にせず、好きな時にお風呂に入って、いくらでもつかっていられるようにするためだ。
王様だけは特別待遇。女の子たちは交代で入っている。
「今日は檜風呂だな」
念のため俺は毎日入る風呂を確認することにしている。風呂に行ってみたら裸の女の子と出くわして「きゃああああ」っていう事故を避けるために。
間違えても女の子は怒らないだろうし、むしろ裸を見られたがってそう。
だとしても俺はその子の裸を見たかったエロ男子という誤解を招きたくない。
バトルロワイヤルで、俺はあくまで公平な評価者。誰かに気があるような行動は慎まないといけない。
檜風呂の脱衣所の扉をゆっくり引く。女の子が間違って、いや、わざと入っているっていう事態がありえなくもない。
女の子の裸が見えたら、扉をさっと閉めるのだ。
あれっ? 灯りがついている……
脱衣所にも、浴室にも電気が灯っているじゃないか。脱衣所に女の子の姿はないけど……棚にバスタオルと着替えが置かれている。
ガララッ
浴室の扉がスライドする。
ひっ――!?
とっさに脱衣所の扉をピシャッと閉めた。
「誰だよ、間違えて入ってるのは?」
扉越しに声をかける。
「もしかして先輩ですか?」
藍の声。
檜風呂に間違って入っているのはさっきトレーニングしてた藍だ。
「今日は俺が入ることになってるんだ。間違えて入ったわけじゃないぞ」
「えっ!? すいません、自分が間違えたんですね。今、出ますので」
「慌てて出て来なくていいから、ちゃんと服着てね」
「わかりました。お風呂は入れ直しましょうか?」
「え? いいよ」
「自分が入ったお風呂なんて嫌じゃないんですか?」
「は?」
「女の子の汗が溶け込んだお風呂なんて気持ち悪くないのかなって思うんですけど」
「……意味がわからないんだけど。俺は潔癖症じゃないから気にしないよ。檜風呂はでかいからな。お湯を入れ直すのに30分くらいかかりそうだしな」
「自分はトレーニングでいっぱい汗かいたのに、シャワーを浴びずに入っちゃいました。自分が最後にお風呂に入るんだしって勘違いしちゃって」
「いきなり飛び込んだのかよ……子供みたいだな」
てことは藍はあそこもシャワーで洗わずに風呂に入ったってことだ。汗どころじゃなくて、藍の色んな体液が混ざってそうだ。ちょっと変態な俺はモヤモヤしてしまう。
「汚いですよね。ほんとにいいんですか、入れ直さなくて」
「あーいいよいいよ。気にする方がおかしいって」
俺は何とも思っていないように装う。
「じゃあ今出ます」
「ちゃんと服着たんだろうな?」
俺は扉に背を向ける。
藍が裸とか下着姿で出てくることを警戒。
ガララ
脱衣所の扉が引かれる。
恐る恐る首を回して後ろを見ると、湯上りの藍が出てきた。青いパジャマを着て、タオルを頭に巻いている。ホカホカ湯気が出てそうな感じ。肌がつやっとしている。
「すみませんでした。もう間違えないよう気をつけます」
藍は本当に申し訳なさそうに頭を下げる……
「いやまあ、そんなに気にしなくても」
俺はすれ違って脱衣所に入る。
扉を閉めた。
ん……
棚に白い物が落ちている。
何だろうと思って、視線を向けると……
パンティーである。藍のだ。藍が慌てて忘れていきやがった。
俺は振り返って、藍が駆け戻ってこないか確認する。
外で足音はしないから、藍が来る気配はない。
どうしようこれ……?
きっと使用前じゃなくて、使用済みだぜ。
藍が一日履いていたやつだ。
クンクンしたら、匂うんじゃないか……?
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