59 女子の応援
早速、俺たちのチームが試合をする。対戦相手チームはゼッケンを付けている。
ピー
教師のホイッスルで試合開始。
爽やか君がキックオフで俺にボールを蹴って来る。
「すぐに僕にパスして」
俺は言われたとおり、ボールを蹴る。爽やか君はボールを受け取ってドリブルして敵陣に切り込んでいく。
俺も続いて前の方に行く。
「ゴール前にいてね。オフサイドには気をつけて」
爽やか君は周りを囲まれながらも俺がどうすればいいか教えてくれる。
オフサイドって、敵のディフェンダーがいる位置よりも奥でパスを受け取っちゃいけないっていう反則だよね。
それが許されたら、ゴール前にずっと立っててパスしてもらうのを待てばいい。後はキーパーしか敵がいないから、俺でもシュートがまぐれ当たりでゴールが決まってしまうかもしれない。
俺は軽く走って、敵陣一番深いところにいるディフェンダーのそばまでいく。
振り返ると、爽やか君はボールを奪われて、自陣にボールは蹴り返されている。味方のミッドフィルダーが激しくボールの争奪戦をする。
俺はのんびりボールが来るのを待っていれば良さそうだ。
「おーい、ゆきとー」
桃香の声。
「幸斗さん、がんばってー」
磨莉奈の声も。
びっくりして声の方を向くと、体操服姿の桃香と磨莉奈が立っている。桃香は胸が盛り上がっているし、ハーフパンツから出た日焼けしたフトモモが眩しい。
磨莉奈の体操服姿は初めて見るが、白い肌の手足がすらっと伸びている。陽にキラキラ照らされて、天使のように輝いている。
2人の左右には他の女子も10人くらいいる。
「六文銭くーん、がんばって」
「かっこいいわー」
俺はつっ立ってるだけなんだけど……
バスケの待ち時間なのか、女子が体育館を抜け出して応援に来てくれた。
女子に声援を送られるなんて初めての体験だ。しかもこんな大勢。
桃香と磨莉奈はお嫁様候補だからだけど、他の女子も俺の気を引こうと必死だ。
「ゆきとさーん」
ニーナちゃんの声が遠くから聞こえてくる。校舎3階を見上げると、教室の窓でニーナちゃんが手を振っている。
おお、ニーナちゃんまでグラウンドにいる俺に気づいて応援してくれるなんて。授業中に大声出したら、先生に怒られるのに。
俺は暇なので、ニーナちゃんに手を振り返す。ニーナちゃんは俺が手を振ったのがうれしいみたいで両手をますます振りまくる。
ニーナちゃんの右側で手を振る女子がいる。藍だ。1年生の2人は同じクラスだったんだ。いやはや、生意気な藍まで俺に手を振ってくれるなんて感激だね。
俺はせっかくだから桃香と磨莉奈、その他の女の子にも手を振る。
「きゃー 六文銭君が手を振ってくれたわ」
「違うわ、私に振ってくれたのよ」
女子が狂喜している。
応援してくれるのって心地いいな。
でもまあ女子のほとんどは、ついこの前まで俺のことを児童養護施設育ちと蔑んだり、無視していたんだ。ふてぶてしい奴らだと思う。
俺は女どもから受けてきた仕打ちを忘れはしない。今さら取り入ろうとしても、もう遅い。
男子どもを女に飢えさせるため、俺の方に関心を向けさせはする。それ以上に女どもを俺に近づけはしない。
俺が心を許すのは、貧乏だった時から俺に優しくしてくれた子だな。
児童養護施設で一緒の千紘姉さん、昼飯を分けてくれた桃香、バイト先で仲良くしてくれたニーナちゃん。彼女らはやはり特別である。
あと縁あって、俺を好きになろうとしてくれている磨莉奈と藍も許す。
結局、Sランク女子5人が取り巻いているから、凡百の女子は入り込む余地なし。
モブとしてせいぜい歓声を送ってろ。
試合の方は自陣で、揉み合いが続いていた。
敵がシュートを蹴り込むが、ゴールポストの横を抜けていく。
キーパーが思いっきりゴールキック。ボールはみるみる前線へ飛んで来る。
「よし、チャンスだ。幸斗君、パスするからね」
爽やか君が声を掛けてくる。
俺はよくわからんが、ゴール前で待機。
女子に応援してもらえなかった作者の怨念がこもってますね。
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